第4話:中間テスト
一学期が始まって一ヶ月と少し経った5月中旬には中間テストが始まる。入学したと思ったら、すぐにテストがあるんだから中学生もなかなか大変だ。
「テスト勉強進んでる?」
「ほとんど進んでないよ。そっちはどう?」
「私も」
クラスメイトの間で似たようなやりとりが何度も聞こえてくる。一年生一学期の中間テストは、中学に入って最初の大きなテストだから、他のクラスメイトがどのように対処しているのか気になるのだろう。俺も前回はどのくらいの点になるのか、どのくらいの順位になるのか凄く不安だった覚えがある。
「向井はどうだ?勉強進んでいるか?」
大川が前の席から振り返って聞いてきた。
「ああ順調だな。ここまでかなり勉強してきたし、けっこういいところまで行くんじゃないか」
「凄いな、その自信」
「別に自信があるわけじゃないよ。単純に勉強しているだけ」
「いやそれでも自信を持てるのは凄いよ」
前回の俺もちゃんと勉強していたが、今回の俺はそれ以上に勉強していた。学生時代には、こんな勉強やって何になるんだ?なんて思ったこともあったが、社会人になればわかる。絶対何かの役に立つ。特に国語の授業なんてそんな文章の意味を考えて何になるんだと思っていたが、社会人になってからその重要性を痛感した。仕事の資料を読んでそこに書いてあることを理解したり、皆がわかりやすい文章を書くには必須のスキルなのだ。それに将来、小説を書くかもしれないし。
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中間テストが終わってしばらくした頃に、廊下に上位50名のリストが張り出された。令和の時代では少なくなってきていると思うが、この当時のこの中学校では中間や期末テストの学年ごとの成績順位上位50名は廊下に張り出されるようになっていた。学年で9クラスあったので、クラス内で5位ぐらいまでの成績だとリストに載る計算になる。
「小谷さん、クラスで1位なんて凄いねー」
「よくそんな高得点とれるなー」
つまりこのクラスで誰が一番だったのかわかるのだが、その一番は小谷 智子さんだった。小谷さんは背が低めで髪は長めのメガネっ娘という感じのかわいい女の子だ。前回の記憶だと、かわいくてクラス1位の成績ということもあって、クラスでも人気があったはずだ。
「なんとか運よく向井に勝てたよ」
「運じゃなく実力だろ。さすがだな大川」
クラスの2位は、前の席に座っている俺のライバルの大川で、俺は3位だった。おそらく中学生二回目の俺が前回以上に勉強して、そのまま全力でテストを受ければ1位になるはずなのだが、あまり前回と違うことをすると世界線が変化して、二年生になったときのクラスが前回とは変わってしまうかもしれない。なので試験結果は前回と同じくらいになるように調整していた。
「ねぇ、向井君。クラスで3位って凄いね」
隣の席の近藤さんから話しかけられた。
「ありがとう。まぁ小谷さんと大川には負けたけどな」
「それでも凄いよ。いいなぁ頭良くて」
「頭が良くて成績がいいんじゃなくて、単に勉強をたくさんしているだけだよ」
「そうなの?小谷さんや大川君とかあんまり勉強できていないようなことを言っていたけど」
「そんなわけないよ。陸上だって練習していなかったらいいタイムでないでしょ」
「そうか、そうだよね」
このやり取りがあってからは、近藤さんから授業でわからないところを良く聞かれるようになった。
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