第21話:決心
三学期になって席替えがあり、川岡さんとの席も再び遠くなってしまった。たまに川岡さんの席まで行って話をすることはしたが、そんなに頻繁に行くわけにもいかず、会話をする機会は格段に減ってしまった。遠くから川岡さんの方を見てみると、周りの男子生徒と楽しく話をしている。なぜ、あの場に自分がいないのだろうと思うと、なんとも言えないもどかしさというか、嫉妬、焦り、無力感が湧き上がってきてとてもきつい。なんとかしたいのだが、どうすればいいのかわからない。40歳までの人生経験があっても、こんなものなのか?
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二年生になって大川とは別のクラスになっていたが、冬の間の日曜日の自主練をまた一緒にやろうということになった。
「さすがにもう大川にスピードにはついていけないな」
「そりゃ、もうすぐ三年生だからな。ここで水泳部がついてこれるスピードだったら俺がやばいよ」
三年生の一学期には全中の市内大会がある。その後は中学時代の部活動も終了となり、本格的な高校への受験勉強の時期がやってくる。次の市内大会は俺達の集大成とも言える場だ。大川の気合もかなり入っていた。
「近藤さんもがんばっているみたいだな」
「あぁ、毎週日曜日に自主練しているよ」
高跳びの練習スペースでは近藤さんが練習をしていた。一年前よりもかなり高いバーを越えている。
「なぁ向井」
「どうした」
「俺、近藤さんに告白しようと思う」
「あれ?一年生のときには小谷さんが好きじゃなかったっけ?」
「そういえば、そうだったな。でも同じ陸上部で一緒に練習して、がんばっている近藤さんを見ていると、自分もがんばれるんだよ」
「そっか」
「これも向井が自主練や勉強会に誘ってくれたおかげだよ」
「まだOKもらっていないだろ」
「そうだな。でもお前が誘ってくれたおかげで近藤さんの良さに気づけた」
「そっか」
「だからお前もがんばれよ」
「俺も?」
「そうお前も」
何を言っているんだ?と思いながら大川を見てみると、大川は俺の方を見ながら言った。
「噂が流れてきたんだよ。向井と川岡さんって子が仲がいいっていう」
さすが中学校。ちょっと仲がいいだけで他のクラスまで噂が流れるのか。
「でも告白したという噂は来てないんだよ。まだ告白していないんだろ」
「確かに仲は良かったと思うけど、単に席が隣だっただけという気もするんだよな」
好きだったらもっと緊張して、あんなイタズラとかはできないんじゃないだろうか?恋愛を意識していないところに告白しても混乱させるだけなのではないだろうか?
「お前、思ったことは言葉にするって言ってるくせに、告白となると躊躇するんだな」
「そりゃそうだろう。告白なんて一大イベントだし」
「ちょっと仲がいいぐらいで噂になるかよ。噂されるぐらいにアドバンテージがあるのに、日和るなよ。」
意識していなかったが、いつの間にかネガティブな思考になっていたみたいだ。
「確かにそうだな」
「どっちが勝つか勝負だな」
「どっちも勝つといいな」
「違いねぇ」
心の中の声が言い争いをしている状態は続いていたが、どの声が最も素直に自分の心を代弁しているのかわかってきた気がした。大川ありがとう。お前のおかげで決心がつきそうだよ。
その後、三学期の終わり頃に大川と近藤さんが付き合っているらしいという噂が流れてきた。冷やかしにまけるんじゃないぞと心の中で応援しておいた。
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