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第20話:落書き

一度はクラスメイトの冷やかしを乗り越えた俺だったが、クラスメイトはそんなに甘くなかったらしい。ある日、朝のホームルームがもう少しで始まるというタイミングで、前の方に座っていた高山という奴が黒板になにかをチョークで書き始めた。あー。これは相合傘だ。小学生や中学生の冷やかしの定番というやつだな。相合傘には向井と川岡と書かれている。高山が名前を書き終えるのと同時に一斉に冷やかしが始まった。


「ヒューヒュー」

「もう付き合っているよねー」

「まだならもう付き合っちゃえよ」

「もう婚約までしているのー」


凄いな。一年生のときの小谷さんと長谷川への冷やかしのときと同じか、それ以上に盛り上がっているんじゃないかな?この冷やかしに屈しないのはいいとしてもどうやって対処したらいいんだろうか?ムキになって否定すると逆に火に油を注ぐようなものだろうし。


ガラッ


「こんな騒いでどうしたー」


いつの間にかホームルームの時間になっていたようで担任の先生が入ってきた。


「なんだこの落書きは。向井と川岡の相合傘か。お前ら子供みたいな落書きをしてんなよ。誰だこれを書いたのは」


誰からともなく高山が書いたという声があがった。


「じゃぁ、高山消してくれ」

「はいわかりました」


申し訳なさそうに高山が黒板まで歩いていって落書きを消しだした。


「それから高山は、二人に謝っておけよ」


ここで謝罪させてもきっと冷やかしは収まらないのではないだろうか?中学生というのは抑圧されると反発するものだろうし。冷やかしても無駄だと思わせるにはどうするのがいいのか?


「先生、高山には謝ってもらわなくてもいいです」

「えっ?何言っているんだ向井。落書きされたんだから、きちんと謝罪してもらわないとダメだろう」

「もちろん落書きはダメですが、お似合いと言われたことについては逆に嬉しかったので」


奴らは困ったところをみたいから冷やかしているわけだから、逆に嬉しいと言えばやめるのではないだろうか?


「そうなのか?」

「僕が川岡さんとお似合いということは、川岡さんにふさわしい男として皆から認められたということですよね。それって凄いことじゃないですか?例えば、高山にはお似合いの女の子はだれかいますか?」


クラスがシーンとなるが


「私は嫌だな」

「あなた立候補しなさいよ」

「なんで私があんなのと」


なかなか厳しい声がチラホラと聞こえてくる。


「ということは高山は誰にも認められていないけど、僕は認められているということになると思うんです。僕にとってはこれ以上に嬉しいことはないです。」

「よく分からないが、まぁ向井がいいなら謝罪はいいか。川岡もいいか?」

「はい私もいいです」


なんとなくクラスメート全員がドン引きしているようにも感じたが、こうしてこの話は終わりとなった。どうやらこの逆の対応が功を奏したようで、その後は冷やかしもほとんど無くなった。


□▲□


クラスメイトの二度の冷やかしを乗り越えて、ここから更に川岡さんと仲良くなっていけると思っていた俺であったが、残念ながらそうはならなかった。というのも川岡さんが俺にいたずらしてくることがほとんど無くなってしまったからだ。もちろん雑談をしたり勉強を教えたりと、隣の席ならではの仲の良さというのは冷やかしされる前とかわらず続いていたのだが、逆に言うと席が近いからこその仲の良さに留まってしまっていた。あの相合傘への俺の対応は間違っていたのだろうか?落書きされて嬉しいと言ったことによってヤバい奴と思われてしまったのか?川岡さんのことをもっと考慮した上で発言すべきだったのか。

今、俺はどうするべきなのか、答えを見つけられずにいた。自分の中には、まだ隣の席で楽しく話はできているのだから、それでいいじゃないかという声と、このままでいいのか?一歩踏み出してデートに誘ったりと積極的に行ったほうがいいんじゃないか?という声と、モタモタしていていいのか?いっそのこと告白までしないとダメなんじゃないのか?という声と、そんな事をしてダメになったらすべてを失うからやめろという声と、いろいろな心の中の声が言い争いをしていていた。しかし時間は待ってくれない。自分の中で答えを見つけられずにいる間に、時間はどんどん進んでいき、そして二学期も終わってしまった。

第20話までお読みいただきありがとうございます。よろしければ評価、感想などを頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

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