第17話:隣の席
二学期になって席替えが行われた。前回と同じく川岡さんの隣の席になることができた。ここからが本番だ。前回同様に仲良くなって、あのクラスメイトからの冷やかしに耐えるぞ!と心の中で誓う。
「向井、きのうの日スマ面白かったよね」
といきなり川岡さんから話しかけられた。最初から呼び捨てというのが、さすが中学生。社会人とかだと最初は敬語で、タメ口や呼び捨てになるまでには相当な時間がかかるのに。といっても学生時代なんて短いんだから、敬語で話なんてしていたらいつまでたっても仲良くなれないが。
しかし、ここでタイムリープしてからテレビをほとんど見ていないことに気づいた。もちろん前回のときにはドラマにアニメやバラエティ番組などいろいろと見ていたから、この手の話題にもすぐに反応できたのだが、タイムリープしてからはテレビをほとんど見ていなかったのだ。最初の会話がこういう話題だったことをすっかり忘れていた。
「川岡、今日のおすすめの番組教えてくれない?」
「えっ、何?おすすめって?」
「いやー。俺あんまりテレビ見てないんだよ。何見たらいいかなって」
「テレビ見てないって、家で何してるのよ」
「部活やって、家で勉強するとほとんど時間がなくるんだよな」
「そういえば向井は成績良かったよね。わかったわ、今日なら子供のつかいじゃないがお勧めね」
「ありがとう。明日も面白かったよねって聞いてくれ」
「わけわからないんだけど」
話題についていけないところだったが、なんとか話をつなぐことができた。よな?
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こうして休み時間には隣の川岡さんとテレビの話題やなにやらで雑談をしたり、授業でわからなかったところを教えたりして日々が過ぎていった。前回の記憶どおり、川岡さんとはとにかく話が合った。気兼ねなく話せる相手というのは、そう出会えるものではないと思う。社会人になってからの婚活でも、それなりの女性とは会って話をしたが、なかなか素のままで話せるような関係になる人はいなかった。まさか中学で、そんな相手と出会うなんて、そしてその大切さに中学の頃の俺が気づくはずもないのだ。
そして前回も確かに仲良く話ができていたが、実際には自分からは話しかけられていなかったと思う。でも今回は一年生のときから挨拶するように心がけていたこともあり、川岡さんにこちらからも普通に話しかけることができるようになっていた。たぶん今回の方がより仲良くなれているのではないだろうか?
そんなある日、美術の授業でポスターの絵を描くことになった。
「川岡って、絵がうまいんだな」
「そう?」
「どうやったら、そんなうまい絵が書けるんだ?」
「そういう向井はどうなの?」
隠せるものでもないので、自分の書いたポスターを見せると、絶句していた。二回目の中学生でも絵を描くスキルは全く改善しないらしい。
「下手」
「しょうがないだろ。俺の体は親指ででてきるんだよ」
「絵の上手い下手と、器用不器用は別じゃないの?」
「俺、どっちもダメだから」
「勉強できるくせに意外だね」
「いや、それこそ別だから」
それをいうなら、女の子にしては大柄な川岡さんが、実は絵が上手いとかそっちの方が意外なんですが?というのは失礼なので言わないでおいた。実は川岡さんは絵がうまいというのは前回でも知っていることだった。前回の俺は、あまり感情を言葉にしなかったと思うが、この川岡さんの絵についてだけはちゃんと上手いねと伝えたのを覚えている。
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