第16章:練習の成果
中間テストが始まる少し前ぐらいから本格的に水泳部の練習が始まった。水泳はいかに速く泳ぐかを競う競技なので、だいたい一週間に一度ぐらいの間隔で定期的なタイム計測の日があった。その最初のタイム計測で、冬の間もずっと泳いでいただけあって俺のタイムは昨年より相当に縮まっていた。
「うそだろ、向井のタイムすごい短くなっているじゃないか?」
「先輩よりもちょっといいぐらいか?」
なにしろ入部当初は一番遅いタイムだったのだ。日曜日に自主練をしていたこともあり、二学期ぐらいになるころには中間ぐらいのタイムにはなっていたが、それがいきなり部で一番速いタイムになったのだ。部員の全員がとても驚いていた。特に同じ種目の先輩は俺にタイムを抜かれたということもあって、相当に焦っていたようだ。
「向井君、すごい速くなっているね。春先にも練習してたと思うけど、ひょっとして冬の間も練習していたの?」
タイム計測のあとの短い休憩で吉沢さんから話しかけられた。
「中心街近くに市営の公共温水プールがあるんだよ。冬の間はそこに通っていたんだ」
「へー知らなかった。でもここからだと遠くない?よく通えたね」
俺達の中学は市の一番北にあったので、中心近くにある市営の公共プールまではけっこう遠かった。といっても、そもそもそんな大きな市でもないので自転車で通える距離なのだが。
「自転車ならそこまでかからないよ。冬だから寒いのがきつかったけど」
「そうなんだ。そこまで練習するなんて凄いね」
「入部したときには一番遅いぐらいだったしね。なんとか追いつきたくて」
「これからも公共プールに通うの?」
「いや、これからは部活のみで、公共プールには通わないよ」
「それじゃ、一緒に練習がんばろうね」
「おう」
いざ可愛い子に話しかけられると、やっぱり嬉しいと感じてしまう。竹下が大久保さん推しになるわけだ。
それからは、部活でちょくちょく吉沢さんから話しかけられるようになった。前回のときは吉沢さんと話をする機会はほとんどなかったことを考えると、やはり部活の中でも成績の良し悪しで扱いというのは変わるものらしい。
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中間テストが終わって、廊下に成績上位50位までが張り出された。俺はクラスでは2位の成績だった。
「えっ、向井って頭良かったのか」
「実はガリ勉だったのか?」
内田と竹下が聞いていないぞ言わんばかりに話しかけてきた。
「かなり勉強したからな」
「なんだよ、仲間かと思っていたのに」
「いやいや、勉強したら仲間じゃなくなるとかおかしいだろ」
一年生のときには、テスト後に勉強を教えてという話になったのだが、内田と竹下は俺に勉強を教えてほしいとお願いをしてくることはなかった。まぁ内田も竹下もできれば大久保さんに教えてほしかったのだろう。青春学園小説でも勉強を教えてくれるのはかわいい子というのが定番だからね。でもそれはイケメン主人公に限るんだよ、と内田と竹下にアドバイスしたかったがやめておいた。
廊下に張り出された上位50位のリストには、大川や近藤さん、坂上さんが引き続き入っていて、ちゃんと頑張っているんだなと思うと、俺もがんばらないとなと思えるのだった。
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夏になり暑い日々がやってくると、学校の体育の授業に水泳というのが入るようになる。同級生の女の子の水着姿に男子生徒はドギマギしてしまうというのが青春学園小説の定番なのだが、残念ながら地方都市の田舎中学校だったためなのか、俺の中学では全員がスクール水着着用だった。ただ水泳部だけは、なぜか競泳用の水着を使って良いことになっていた。
「なあ向井、川岡って水泳ではかっこよかったんだな」
竹下が、川岡さんの泳ぐ様子を見ながら話しかけてきた。どの競技でも、部活をやっているのと、やっていないのではかなりの差がつくものだと思うが、水泳も圧倒的な差がつく競技の一つだと思う。飛び込みの姿勢が断然キレイだし、クロールでひとかきしただけで他の生徒とは全然違うぐらいの距離を進んでいる。
「だろ。水泳の川岡は本当にかっこいいんだよ」
俺は竹下に自慢するように言った。
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その後も勉強と部活に励む日々が続き、期末テストと夏休みを経て、いよいよ運命の二年生二学期を迎えるのであった。
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