第13話:一年生の終わり
ある日の勉強会で、小谷さんからある指摘が入った。
「ねぇ、向井君って教えるのが凄くうまいよね」
「そうそう、最初に教えてもらったときにも、わかりやすくてびっくりしたよ」
「私も向井君から教えてもらってから、一気に成績があがったし」
近藤さんと坂上さんからも教え方がうまいというお褒めの言葉をいただく。俺も中学生のときには、それがどういう意味を持つかとかを考える余裕もなくとにかく頭の中に詰め込んでいたと思う。でも高校、大学と進むにつれて、やっとそれぞれが持つ意味が解ってきた。それらを踏まえて説明しているからわかりやすいのかもしれない。もしくは動画投稿サイトの解説動画を見ていたからか?英語や数学などありとあらゆる解説動画がある令和の時代は凄いと思う。
「向井君の説明を聞いていると、明らかに私よりも理解していると思うのよね。」
「いや、そんなことはないんじゃないか?」
「だって、あれだけわかりやすく説明できるって、完璧に理解していないと無理なんじゃないかな?」
さすが小谷さん、よく気がつく。
「ひょっとしてわざと1位を取らないようにしているの?」
「そんなわけないだろ。俺は基礎はわかっているけど応用が苦手なんだよ」
それにしても小谷さんのツッコミが鋭い。きっと何回タイムリープしても小谷さんにはかなわないような気がした。
□▲□
期末テストも終わり3月中旬頃になって校内プールが再び使えるようになった。といってもまだまだ寒い季節であり、温水でもない屋外プールで泳ぐというのは修行さながらである。学校にプールがあるだけでも凄いことだとは思うが、関東だと屋内温水プールがある中学校があったりするので、やはり地方との違いを感じてしまう。こんな冷たい水ではまともに泳げたものではないので、プールは使えるが部活動としては自主練扱いで、全体としての練習は4月になってからとなっていた。実際にこの時期に練習している部員はほとんどいなかった。ただ俺はこの冷たい水の中でも練習を開始することにした。できれば公共の温水プールに行きたいところだが、さすがに冬の間に通ってお小遣いの残りもほとんどなくなっていたからだ。公共のプールの利用料が安価といっても中学生にはかなりきつい。社会人になってから中学生に戻ると、できることはかなり限られるというのを感じてしまう。
期末テストも終わって、一年生もあとわずかとなったある日の放課後、一人で練習していると声をかけられた。
「向井君、こんな冷たい水の中で練習しているの?」
声をかけてきたのは吉沢さんだ。制服のままなので泳ぐわけではないらしい。
「やっとプールが使えるようになったからね」
「冷たくない?」
「できれば二度とやりたくないぐらいには冷たいな」
「それでも練習するって凄いね」
「全体練習開始前には、みんなに追いついておきたいしね」
「そうなんだ。風邪をひかないようにね」
「ありがとう」
こんなこと40歳でやったら絶対に風邪をひくだろうな。そう考えると中学生の体力って凄いな。その後も冷たい水の中、練習を続け一年生が終わった。
第13話までお読みいただきありがとうございます。よろしければ評価、感想などを頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。




