オレンジ3
「姉さん。何か嬉しそうだね。何かあったの?」
「うん。それはねえ」
「何?」
ふと辺りを見渡すと広い草原で空は雲一つない青空が広がっていた。透き通った風が私と姉さんを優しく包み込んでいる。
「亜希子が元気になってくれたこと」
と笑顔を見せてくれた。その笑顔はサユリさんと同じようなものだ。
「あれ?」
と気がつけば私は布団の中だった。つまり私はいつもの姉さんの夢を見てしまったのだ。
私は思った。姉さんが出てくることはと言うときっと姉さんの死がまだ心残りなのかそれとも私の中で姉さんは生きているのか?考えてもわからないことだ。
でも一つだけわかるがある。それは時がたっていつかわかる日が来ることだけだ。
「亜希子。朝御飯できたわよ」
と台所から母さんの声が私の部屋にまで聞こえる。だから私は、
「うん。今行く」
と言った。
居間に行くと、もうすでに食事の用意ができていた。
「ほら座りなさい」
と言って座布団を差し出し母さん。
「ありがと」
と言って座布団を引いて座った。
「じゃあ、いただきます」
と言って、トーストにバターをぬって租借して飲み込んだ。
ふと窓の外を見ると空から雪が地上に舞い降りてきている。
私の好きな雪が振っていることを思うと大好きなメロディーを聞いているかのごとく私は幸せになってしまう。
食事を食べ終え私はフリースクールホットイップクに向かった。
ドアの前で私は、
「ゴメンください」
と大声で言った。
「あらあら、亜希子ちゃんいらっしゃい」
「おはようございます」
と一礼をして、満面な笑顔で言った。
「体の方は大丈夫?」
「はい。だから今日はスクールカウンセリングにつれていってくださいね」
「ええ、喜んで」
と笑顔で言った。サユリさんって天から地上に舞い降りた女神様のような笑顔だ。私の心はすごくいやされる。
昼食を私とサユリさんで作ることにしたメニューはカレーライスだ。
「タマネギ、ニンジン、ジャガイモをほどよい大きさに切って」
とサユリさんに頼まれたのだけれども、
「ごめんなさい。私は包丁なんて使ったことがないので無理です」
と私はできないことに少し恥ずかしかったし、不安にもなったりしていた。
「大丈夫だよ」
とサユリさんはいつもの女神さまスマイルで私の肩に添えた。
それを見ている私はサユリさんにいやされていた。
私はサユリさんに包丁の使い方を優しく丁寧に教わった。
最初はぎこちない切り方だったが少しずつ慣れていき包丁が使えるようになり、タマネギ、ニンジン、ジャガイモをサクサクっと切っていった。
こんな経験をして身に付くと私が常に抱いていた暗闇の世界に少しずつ幸福の光が射し込んでくるような気持ちになる。
お昼を食べ終わって。
「亜希子ちゃん。スクールカウンセリングに行くよ」
「はーい」
と言って助手席に座ったとたん車は走り出した。
「雪すごいですねえ」
「そうね」
「私雪が好きなんですよ」
「私もよ」
私はサユリさんに誘われるスクールカウンセリングが楽しみだ。今度はどんなことが起こるんだろうとワクワクしていた。まるで私は大航海時代に船で新大陸まで宝を探しに行ったフロンティアみたいな感じがしている。
「着いたわよ」
とサユリさんが車のエンジンを切って私とサユリさんは車から降りた。
宮里中学って校門に入って一階にあるカウンセラー室に入った。
中を見渡すと、ベットが二台おいてあり、机にパイプ椅子がある。とてもきれいな部屋なんだけれども消毒剤のにおいがした。ここはかつて保健室だというのがわかる。
「じゃあ、亜希子ちゃん。この椅子に座って」
言われるままに座った。
この部屋の中は静かで私とサユリさんの声しか響かない。
サユリさんは机に向かって、何か書類のようなものを書いている。私が横からのぞこうとすると、
「見てみる?」
と言って私に書類を手渡してくれた。
「何が書いてあるんですか?」
と言いながらページをめくるとサユリさんには数え切れないほどの相談者がいるんだと今気づいた。
例を言うと、いじめ、引きこもり、親の虐待などだ。
ペラペラとページを見つめているとサユリさんが、
「不安や悲しみや怒りはねえ、誰にでもあることなんだよ」
いつもの笑顔ではなく真剣な眼差しで言うサユリさん。私はしばらく何を言えばいいのかわからず、厳しい現実を知り思わず俯いてしまった。
私は俗に言う世間知らずの井の川津である。
その後サユリさんは机の上で書類を書き終え、パソコンの電源を入れた。
カチャカチャとキーボードをうっているサユリさんが気になり、
「何をしているんですか?」
「これはねえ、この学校でいじめがあって桜ちゃんという子なんだけどその子がねえ八年も外に出られなくなっちゃたの」
「エー」
と私は驚いた。私は姉さんが死んだことに一年引きこもっていた。それを上回る人がいるとは思ってもいなかった。
「で、その子の妹がねえ盟ちゃんって言う女の子が(姉さんをどうにかしてください)ってことで私が請け負っているの」
「そうなんですか」
私はサユリさんが多忙な日々を送っているのがわかる。
「それにこの子は私にしか心を開かないのよ。だから私が何とかしてあげようとしているの」
「失礼なことを聞くかもしれませんがお金とかもらえるんですか?」
「うん。いや。フリースクールとカウンセリングが私の仕事」
「儲かっているの?」
「あんまり儲かっていないねえ」
「やっぱりそれでもこの仕事が好きなんですか?」
「うん。大好き」
と意気揚々に笑顔で語るサユリさん。私はそんな夢を持っているサユリさんに憧れてしまった。
そんなときだった。
ノックして入ってきたのが男の子だった。
「はーい。あらケンジ君」
と口調が優しい。聞いている私までいやされる。
そしてケンジ君は椅子に大股を開きながら座っている。
「ケンジ君」
「うん」
とケンジ君は何やら悩ましげな顔をしている。
「お茶でも飲む」
「はい」
と言ったらお茶を出そうとしているサユリさん。だから私は、
「大丈夫です。私が用意しますからサユリさんは続けてください」
私は少しでもサユリさんの役に立ちたかったので申し出た。
「ありがと亜希子ちゃん」
「はい」
と私が言ったら再び椅子に座って、
「じゃあ、お父さんとお母さんの調子はどうなの?」
とケンジ君に問いかけるサユリさん。
「もう最悪だよ。口論が二階の俺の部屋まで聞こえて来るんだよ。やっぱり俺、夫婦喧嘩をしている母さんと父さんを見ていると辛いよ」
「そうよねえ、私がケンジ君のお父さんとお母さんにお願いしてあげようか?」
「ホントに」
嬉しそうに目を丸くしているケンジ君。
私は二人にお茶をもてなした。
そんなとき、ケンジ君と目があった私は、
「あんた誰?」
と聞かれて私は、
「北野亜希子と申します」
ぎこちない笑顔だったかもしれないが私の精一杯のおもてなしだ。まだ人とふれあう事にはまだ慣れていない。
「高校生」
とケンジ君に聞かれ、
「いえ中退しました」
「じゃあ今はニート?」
と失礼な暴言に私はむかついた。憤りが頂点まで達してきて私はとりあえず我慢した。立ちつくす私は我慢すればするほど体が小刻みに震えだし涙を流してしまった。
それを見ていたサユリさんは、
「ケンジ君そんな言い方しちゃダメだよ。亜希子ちゃんは私のか弱い私の生徒なんだから」
「ゴメン悪かったよ」
と反省しているみたいだ。
私はコクッと頷いて許した。サユリさんは私に背中をすすって優しく包み込むように慰めてくれて私は安心した。
「じゃあケンジ君話に戻りましょうか」
とサユリさんは手をたたいて言った。
「俺、今日はもう良いよ」
と私にひどいことを言ったことに対して罪悪感を感じているみたいだ。これって私のせいなんじゃないかと思い、
「ケンジ君。サユリさんに助けて貰ったら良いじゃない。私そんなこと気にしていないからさあ」
と私が言った。私が原因でカウンセリングをやめるなんて言ってほしくはない。それにそんな迷惑な存在になりたくない。
「わかったよ。じゃあ、サユリさんお願いします」
「良いわよ」
「じゃあ、日曜日にお願いします」
「明日ね」
「良いんですか?」
「ええ」
ケンジ君は私のところに来て、
「北野さんだっけあんたも来いよ。あんたの人生の経験にもなるからよ」
私は一瞬困惑したがケンジ君のセリフに了解と言った。




