閑話 少女のその後
私はミッシェル。
どこにでもいる、ちょっと不幸な女の子。
お父さんとお母さんを亡くしてしまった程度の不幸な女の子。
でも同時にとっても幸運なのだとも思う。
だってこの村は今、凄くて、楽しいから。
ちょっと前までこの村は少し不幸な村だった。
だからどうにかしなきゃって、おじいさんたちと色々やったりもした。
だけどトウヤ様が村にやってきてくれて、全てを解決してくれた。
たった一つ。
私の両親を助けてはくれなかったけど。
「ミッシェルちゃんの両親は、トウヤ様とそれはそれは偉大なことをしてくれたんだよ」
村の人たちはそう言って私を撫でてくれる。
妹のエルも、こうして二人一緒に暮らせるのはトウヤ様のおかげだと言う。
私はまだ、心から感謝することは出来ない。
でも、感謝するべきなんだって頭ではわかってる。
だってこの村の建物を補強してくれているドワーフさんたちは、トウヤ様との繋がりがあるからやってきてくれる。
トウヤ様が置いていった仮説住居?の見学とアレンジのために毎日のようにやってくる。というか数人ほど住み着いたって聞いた。
だってこの村の作物が豊作になったのは、トウヤ様のおかげだ。
フェスティス様が渡してくれた肥料は、それはそれは物凄い効き目。
みんなが「二ヶ月もすれば収穫できる」って言ってる。
いつもより早くすくすく育つのは私でも分かるので、畑仕事を手伝っていて楽しい。
収穫後は一か月土を休ませなきゃいけないらしいけど、それでも一年で見ていつもの3倍の収穫が見込める。
だけではなく、その一回の収穫量も通常の2倍になりそうというお話。
保存の効くものばかりではないから、今は周辺の村に買い取ってくれないか聞いているところ。
ケンタウロスさんたちに聞くところだと、反応は上々のようだ。
そう、ケンタウロスさんと言えばよく私の家に遊びに来てくれる。
みんな優しい人で、畑仕事を手伝ってくれたり、家事もしてくれる。
きっとトウヤ様の手配なのだろうと思う。
本当に、心から嬉しく思う。
ただ、その名前と、その顔を思い浮かべると、一緒に両親のことを思い出してしまって、胸が苦しくなってしまうだけで。
うん、大丈夫。
気を付けないと。
そう言った苦しさを少しでも顔に出すと、一番よく来てくれるルゥラってお名前のケンタウロスのお姉さんは察してしまって、私が泣きやすいように甘やかしてくる。
これまでもそのせいで三回ほど泣いてしまった。
もの凄く恥ずかしい。
恥ずかしくはなりたくないから、私はこれをいつか克服しないといけない。
そう思う。
……ただ。
ルゥラお姉さんの胸はとっても柔らかくて暖かくて、凄くいい匂いがするものだから。
もうちょっとだけ、たまに、本当にたまに、甘えちゃってもいいかな、なんて思ってしまう。
ところで今日はずいぶん静かなんですね。
いつものように様子を見に来てくれたルゥラお姉さんに聞くと、今日は良くない人が村を通り抜けるのだと聞いた。
あまり顔を見るべきではないし、見られるべきでもない、そんな人らしい。
お姉さんが人を悪く言うのを見たのは、初めてだった。
だからきっと、その人はよほど良くない人なのだろうと思う。
でも安心していいのだと、お姉さんは言う。
すでにケンタウロスさんたちが周辺の村に連絡に走っているんだって。
だからこの村も、周辺の村も、安心して今まで通りで良いんだって。
監視をつけて泳がせるんだって言ってた。
近くの川は浅いけど、どこで泳がせるんだろう。
私にはケンタウロスさんたちがどうするつもりかよく分からない。
だけどどんなにその人が良くない人であっても、ケンタウロスさんたちがいればきっと大丈夫だ。
私を含めて村のみんながそう思っている。
それくらいにケンタウロスさんたちは、優しくて力強い。
村にとってもはや欠かせない存在となっている。
そんな頼もしいケンタウロスさんたちは、全員がトウヤ様にすごく感謝しているのをよく耳にする。
今はまだ、気持ちの整理がつかないけれど、それでも。
どうか神様、トウヤ様に幸いがありますように。
それと。
良くない人は二度とこの村に来ませんように。




