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三十日目-4 今明かされる事実

「だいたいの話は分かった」


 数分ほどして、ようやく落ち着いたルルクに話を聞いて分かったことは、やっぱりヴァーハナは俺の知らないところで活動していたということだ。


 とは言えルルクが最初に言ったように、悪気があったとかそういうことではなく、あくまで俺のためであるらしい。

 今はカーナビのディスプレイにヴァーハナが獲得しているスキルが表示されている。

 例えばその中の最初の方にある《自立行動》のスキルは、諸事の原因となるものだ。

 ──がそれを獲得させたのは俺らしい。


 思い起こせばもう昔のことに感じられる、グラム山脈に連れて行かれてスヴィアスフィア達に料理を振る舞った時のことだ。

 あの時の調理量はとんでもなかった。

 だから俺は思ったのだ。

 こういう作業も、ヴァーハナが自動でやってくれればいいのにな、と。

 ちょっとした期待を込めてそう思いながら、ヴァーハナを変化させた。

 その思いに応えて、ヴァーハナは《自立行動》のスキルを獲得した。

 そこからは俺の要望に応えるために次々と必要なスキルを獲得していったらしい。


 本体に接しているならば外部にもオプションを呼び出せるようになる《外部拡張》。

 このスキルによって車体周辺だけではなく、車外に大きく飛び出すようなオプションが出せるようになった。

 二つのスキルを同時に使用する《デュアルスキル》に、二つ以上のスキルを組み合わせて新しい効果に変える《スキルリンク》、異なる世界法則に順応する《異界渡る者(ウォーカー)》に《検索LV5》と《感知LV5》。

 これらのスキルでは元の世界の救急車にこちらの世界のポーションを呼び出すと言ったような合わせ技を可能にしている。


 対して《意思在る道具《インテリジェンスアイテム》》に《共振会話》、《不滅属性》、《神聖域LV4》あたりは、主だったスキルの中で初期から持っているもののようだ。

 《意思在る道具《インテリジェンスアイテム》》は俺がヴァーハナを馬車に変えた時に自動取得、伴って《共振会話》を取得して、他二つはヴァーハナとしての基本スキルらしい。

 《共振会話》は指定の共通項を持つ存在と、頭の中で直接会話が出来るスキル。

 ヴァーハナの場合は「俺の乗り物である」ことが指定の共通項となっている。

 これを使って、グラム山脈での決闘の時には混乱していたルルクにアドバイスを飛ばしたようだ。

 《不滅属性》はまんま、ヴァーハナが不滅であることを意味している。

 《神聖域LV4》は説明に色々と書いてあったが、要するにヴァーハナの中ではその許可無く何かを傷つけることは出来ないという効果だ。


 他にも《ダメージ無効》やら《ペイントレード》やら《解析》やら数えきれないほどの様々なスキルを獲得している。

 それだけでも驚きは驚きなのだが、メインの驚きは別にあった。


「なんだ、これ」


 表示項目を変えて映し出される数字。

 桁を数えて一十百千万の、億の、兆の……えっと、兆の次の単位ってなんだっけ?

 そんな桁の数字が表示されていた。

 さらにその数字の横には大きな星マークが2つと小さな星マークが7つある。


「……ご主人様の持ってる経験値」


 ほーん。


「で、この星は?」

「《ストックLV3》と《圧縮LV3》で保管してある上限値以上の経験値」


 なるほど。


「つまり、俺は天文学的な数字の経験値を持っている?」

「うん」


 こくりと頷くルルク。

 そうか。

 俺、兆を軽く超える量の経験値を持っていたのか。


「……え、いつの間に?」

「え、えっと、経験値ってLV差で補正が入るんだよ。二倍差なら四倍の経験値、四倍差なら16倍っていう感じで」

「八倍差で64倍か」


 俺はLV1で魔将軍を倒している。

 その補正があるなら確かにかなりの経験値が入っただろうけども、それでも桁がおかしいのでは──


「う、ううん? 八倍差なら256倍だよ」

「……は? え、な、ちょっと待て」


 X倍差だった時はXの二乗倍の経験値だと思ったんだけど、八倍差だと256倍?

 ってことは……ひょっとして、X倍差の時に2のX乗倍の補正か!?

 じゃああの魔将軍が例えばLV50だったとしたら、何倍になったんだ!?

 くそっ、だめだ電卓の桁が足りない!

 でも確か2の50乗は16桁ってどこかで聞いたことがある。

 16桁ってことはええと……千兆が16桁か。

 魔将軍の持つ経験値に何千兆倍の補正が入って俺の経験値に……?


「いや、それバランス調整めちゃくちゃ、っていうか誰でも魔王なんか簡単に倒せるくらいにLVアップ出来るんじゃないか?」

「それは無理ですよ」


 俺の言葉にヒミナが苦笑しながら首を振る。


「LVに2倍も差があったら、普通一対一では勝てません。まして十倍以上ともなれば、トウヤさんのヴァーハナのような特別なものがないと無理です」

「四対一なら?」

「勝てるかも知れませんけど、経験値も約四等分されて結局補正ないのと似た結果になりますよ」

「だったら、俺の時だってシャールと二人がかりだったぞ」

「貢献度で経験値配分は変わりますので」


 なるほど。

 普通LV差が大きく劣った人間は戦果が芳しくなく、割合を考えたらLV差補正が入ってようやくまともな経験値が入ってくるわけか。

 分かった、OK、俺にとんでもない経験値があることは理解した。


「じゃあなんで俺はまだLV1なんだ?」


 さっきも一応ステータスチェックをしてみたけど、やっぱり以前と変わっていない。


 HP:37 MP:112 LP:4 力:10 反応:9 速さ:16 精神:8 幸運:17


 これが俺のステータスだ。


「えっ、わざとではなかったのですか?」

「え?」


 なんの冗談かと思ったが、ヒミナは本気で驚いているようだった。


「あっ……ご、ごめんなさい。私、気が付かなくてっ!」


 一瞬遅れて慌てて頭を下げるヒミナ。


「レベルアップは巫女の仕事なのです。巫女と本人の意思と必要経験値が揃って、レベルアップが可能になります。それまでは経験値量に応じた補正しか得られません……!」

「あー、そういう」


 ゲームでも稀な方の、拠点で経験値消費して任意でレベルアップするシステムか。


「いや謝るほどのことでもないし。幸いここにはヒミナがいるわけだし、すぐにレベルアップを──」

「ま、待って待って、それはちょっと待って!」

「ルルク?」


 彼女にしては珍しく俺をぐいぐいと力づくでヒミナから遠ざける。

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