二十七日目-5 相談と確認の1つ目 ルルクのお仕事
「と、言うわけで相談のお時間です」
キャンピングトレーナーに変化したヴァーハナのダイニングにて、全員揃ったのを見て俺はそう宣言した。
いや、厳密には全員プラスアルファか。
アギ、マリ、ヒミナ、ルルクという乗員、乗客、ペットの面々。
それに加えて本人の強い要望でエルが参加していた。
俺としてはいろいろと込み入ったことを話すことになると思うので遠慮してほしかったが、感情の起伏が乏しい彼女にしては妙に食い下がるので、折れた。
「まずはルルク君。予定より帰ってくるのが遅れたことについて聞こうか」
ちょっと強めの視線を向けると、ルルクはビクンと身を竦ませてからあたふたと両手を振り回す。
「え、ええと、その、サボってたわけじゃないんだよ? ああああの、フィッツさんから頼まれたことがあって」
「頼まれごと?」
「う、うん。ご主人様が置いてきたコンテナの、使用済みの空のヤツをね、貸して欲しいって。それでとても運べないから、ぼ、ボクに運んで欲しいって」
「コンテナを?」
確かにそれはルルクにしか出来ないことだろう。
実際今日ルルクが近くにいなかったのは、定期的にラマーナ山に御用聞きに行かせているためだ。
使用済みのコンテナを移動させて、未使用のコンテナと交換する。
ルルクだったらものの数分で終わる作業だが、人間がやると何日掛かるか分かったものじゃない。
だからアフターサービスというか、責任の一旦としてルルクに様子を見に行ってもらっているわけだ。
「えと、ね? ご主人様が言っていた、砦による防衛ラインの機動防御構想っていうのに着手したいんだって。それで、砦を作るまでの間の仮拠点兼防護壁として、あのコンテナを借りたいんだって」
「……あ、あれか」
ラマーナ山に滞在した時に、フィッツさんから何度か相談を受けて、スマホをいじりながら答えたものの一つだ。
この国……というかこの世界では局所的に魔族や竜などによる襲撃が発生することがある。
だからそれぞれの街に防衛戦力が常駐する必要性がある。
そのため国としての軍という形を取っておらず、個々の拠点が自衛能力を維持するという形を取っていた。
最前線のサンテラなどの街にはある程度戦力が集まっているが、そこから魔族領より遠ざかるほど持っている戦力は減っていく傾向にある。
しかしそれが適正な減り方かというと、そうでもない。
街の治安や文化、人の往来、農家の数、諸々によって抱える戦力は一定ではなく、過剰に保持している街が多いようだった。
もちろん少数で浸透してきて襲撃してくる魔族への対応としては正しいが、今回のような隣国からの襲撃に対しては動きにくい部分がある。
健全な外交関係であるエルランディアと面する西側には余剰戦力がそこそこあるようだった。
なのでまあ、素人考えではあるけれど、だったら砦作っちゃえばいいじゃん、と。
街と街の間に砦を作り専業兵士を集めて常駐させ、日頃はローテーションで待機組と訓練組に分かれて活動する。
有事の際には街固有の戦力が時間を稼いでいる間に砦から急行、合流しこれを解決すると。
そうすれば街に残すのは最低限の戦力で良くなり、浮いた余剰分をさらに砦に回すことが出来るのではないか、と。
問題は砦に常駐させるのが専業兵士になると言うこと。
基本的に兵士は農民が兼業で手伝っていたり、警察の役割も担う衛兵がやっていることがほとんどだった。
それを軍事専門の兵士にしてしまうと、農作業や治安維持に支障が出るかも知れない。
だから砦に詰める人員も稼働当初は交代制にして、給金を衣食の現物支給で我慢してもらうというのはどうだろう、と。
その衣食はなんだったら俺が用意するから、と。
割と軽い気持ちの提案だったんだけど、そうか、通ったのか……問題起きないといいな。
「それでね? フィッツさんがこれはお仕事だって、言うの。で、ご主人様、運ぶ系のお仕事だって言ってたし、ぼ、ボクが請け負ってこなしちゃっても、も、問題ないかなって、思って」
「夕食のギリギリの時間まで運んでたのか」
「うん……だ、ダメ、だった?」
おずおずと不安そうに上目遣いで聞いてくるルルク。
「いや、良くやった。まさか一人で仕事をしていたとはな。偉いぞ」
おかげで最大戦力なしでケンタウロスたちと対峙することになったけど、それはそれ、これはこれ。
俺は犬にしてやるような気持ちで持って頭を撫でてやる。
「え、えへ、えへへ……」
気持ちよさそうに目を細めるルルク。
こうしてみると本当に竜と言うより犬の反応だ。
「でも勝手に引き受けちゃったのはちょっとマイナスだ。簡単なものなら良いけど、複雑で問題がありそうなこともあるかも知れないしな。慣れるまでは返答を待ってもらって、まず俺に報告、連絡、相談するように」
「う、うん。分かった」
良し、聞き分けの良い子だ。




