幕間-先輩と後輩の世間話
「と、ところでさ、先輩。どうして秘密にするの?」
夜。
誰もが寝静まった頃にルルクが囁くような小声で尋ねる。
答える必要もないけど無視する理由もない。
だから答えてあげる。
秘密にするのは、怖いからだ。
色々と勝手なことしてしまっているという自覚がある。
それを咎められることが怖い。
「う、うん……わからなくもないけど、ご主人様は気にしないと思うなぁ。先輩がそれで良いなら、ぼ、ボクがなにか言うことでもない、けどさ」
じゃあ言わなくて良い。
今のままでなんの問題もないのだから。
「で、でも、ご主人様気づいてないよ? み、妙なところで鋭いのに、妙なところで鈍いから……」
それの何が問題なのか。
「う、うん……それなら、良いけど……」
むしろご褒美です。
「え?」
今はまだ分からないかも知れないけれど。
「うん」
いつか貴女にも分かる日が来る……。
「そ、そうかなぁ……?」
さぁ?
「えっ、適当!?」
ごめん、後輩とのおしゃべりが楽しくてね。
「な……ず、ずるいなぁ……」
照れた様子の後輩。
うん、可愛い後輩だ。
「そういうところ、ご主人様に似てるよね」
そうかな?
「そうだよ」
悪い気はしないけど。
とにかく、現状はこのままで良いよ。
余計なこと考えるのは、考えられる余裕が出来てからで良いから。
「ま、まだ余裕ないの?」
まだまだ。
「そうなんだ……じ、じゃあ」
「……ルルクぅ?」
「ぴゃ!?」
ルルクが振り向くと、そこには寝ぼけ眼のアギが立っていた。
「ど、どど、どうしたのアギくん?」
「いや……なんか話し声が聞こえたから……誰かいるのかなって……あと、トイレ……」
「そ、そっかぁ……えと、竜には、遠くの竜とも通信する能力があるから、そ、それでちょっと、ね」
「マジかぁ……すっげーな、竜は……」
「え、えへへ……ほ、ほら、風邪引かないうちに車内に戻らないとだよ」
「おう……じゃあ、おやすみな……」
「うん、おやすみー」
ふら、ふら、と覚束ない足取りながらもアギは車内に戻っていく。
「び、びっくりした……」
良いきっかけでもある。竜だって寝た方が調子良いでしょ?
「そりゃあ……うん、そうだね」
じゃあ、役目を忘れない程度にもう休んで。
「わ、分かった。念の為だもんね……」
改めて警戒の魔法を使用してルルクは竜の姿のまま身を伏せる。
「じゃあ、おやすみ先輩」
はい、おやすみ後輩。
少しするとすよすよとルルクの寝息が聞こえ始める。
この状態でも魔法の効果で、敵意を持ったものが近づくとすぐに目覚める事ができる。
竜騎士とその竜は拘束してあるが、それでも未知の方法で抜け出すかも知れない。
それを考えたら当然とも言える警戒だろう。
シャールの要請を受けて牢屋の近くで番をすることになったのだし、仕事はきっちりとこなさなければいけない。
このあたりは後輩が出来て良かったと思うところだ。
これからもっと良くなっていくだろうか。
そんな思いと共に夜は更けていく。




