第8話 王の打診と神童教師誕生
数日後。
王城に呼び出されたルーファス・グレイ。通称ルーは、玉座の間で王様レオポルト三世と再び対面していた。
「ルーファス・グレイ」
荘厳な声が響く。ルーは反射的に背筋を伸ばした。
「そなたの力はすでに王都の人々に知られておる。ゆえに……十二歳からの学園入学は……」
「や、やめてください陛下っ!!」
ルーは瞬時に床に突っ伏し、またしても土下座した。
廷臣たちがざわめく。宰相バルトロメウスが「ほら始まった」と小声でつぶやく。
だが、王の次の言葉が場の空気を一変させた。
「生徒としてではなく、“教師”として迎えたいのだ」
「……え?」
ルーは涙で濡れた顔を上げた。
「そなたの才は生徒に収める器ではない。十二歳になれば“特別魔法教師”として学園で教鞭を執ってもらう」
「……先生? 俺が……?」
ルーの心は揺れた。
学園に行きたくない気持ちは変わらない。だが、“生徒”ではなく“先生”。
テンプレ的な「入学式」も「同級生との青春」も回避できるかもしれない。
むしろ、自分が上に立つ側なら吐血せずに済むのでは?
絶望と困惑の中に、ほんの少しだけ希望が差した。
「……わかりました陛下。俺……いや、僕は、魔法の先生になります」
その答えに、王は満足げにうなずいた。
「よかろう!では学園に神童教師、ルーファス・グレイ誕生だ!」
廷臣たちが一斉に拍手する中、ルーはまだ胸の奥がざわついていた。
これで本当に吐血フラグを回避できるのだろうか?
そう考えると、不安と期待がないまぜになった涙が、また目尻ににじんだ。




