第7話 神童の未来会議
ルーファス・グレイが王の前で土下座した翌日、オルデン王国王城の会議室には重々しい空気が漂っていた。
出席者は国王レオポルト三世、宰相バルトロメウス、そして、ルーの両親。セドリックとエリザ。
レオポルト三世は眉をひそめ、開口一番に言った。
「……あの坊主、学園に行きたくないと泣き叫ぶとはな」
宰相バルトロメウスは書類をめくりながら、冷静に続ける。
「しかし、陛下、ルーファスの才能は常軌を逸しております。魔法全属性を扱える者など、数百年に一人。放っておけば国にとって損失です」
父セドリックは真剣な顔でうなずいた。
「確かに……ですがあの子は本気で学園を拒絶しています。無理に生徒として入学させれば、また倒れかねません」
母エリザは困ったように微笑んだ。
「昨日なんて、家に戻ってからも“学園いやいや土下座”を繰り返して……床がすっかりピカピカになってしまいましたの」
室内に一瞬の沈黙が落ちる。だが、宰相が口を開いた。
「……では逆に考えてはいかがでしょう。生徒としてではなく。“先生”として学園に迎えるのです」
王の目が見開かれた。
「なに? 十歳の子供を教師にだと?」
「はい。あの年で王都の魔物を一掃するほどの力をお持ちです。生徒ではなく“特別教師”として扱えば、彼のプライドも満たされるでしょうし……何より、学園側としても大いに箔がつきます」
セドリックはしばし考え、やがて小さく笑った。
「……あの子にとって“生徒”という言葉が呪いなら、役割を変えてしまえばよいのですね」
エリザも胸に手を当ててうなずく。
「先生なら、あの子も少しは納得してくれるかもしれませんわ」
レオポルト三世は豪快に笑った。
「面白い! 決まりだ! ルーファス・グレイは学園に“特別教師”として迎え入れる!」
こうして神童ルーの未来は大きく転がり始めた。
彼は学園に入る。ただし、生徒としてではなく、教師として。
本人がそれを知ったとき、再び号泣するのは間違いない。




