第9話 神童先生、初出勤
十二歳の誕生日を迎えたルーフェス・グレイ。通称ルーは、ついに王立魔法学園へと足を踏み入れた。
校舎は白い石造りで広大、芝生の庭園には花が咲き乱れ、門前では制服姿の生徒たちが集まっている。
もう、この光景だけで血の味がする。
ルーは口元を押さえながら心の中で叫んだ。
「やばい! テンプレ学園風景……俺のデバフ発動寸前じゃねえか!!」
だが逃げるわけにはいかない。
今日は“神童教師ルー”の初仕事、自己紹介の日なのだ。
講義室に案内され、壇上に立たされる。視線が一斉に集まった。
生徒たちのひそひそ声が聞こえてくる。
「え、先生……子供じゃない?」
「まさか、あの男爵家の神童……?」
「可愛い……!」
やめろその反応!!
学園テンプレ臭が強すぎる!吐血する!
ルーは机の陰で必死に胸を押さえ、深呼吸した。
そして、渾身の笑顔を作り、言った。
「こ、こほん。今日から君たちに魔法を教えることになった……ルーファス・グレイだ。よろしく」
教室は一瞬静まり返り、次の瞬間、歓声が湧き起こった。
「すごい! 本当に子供の先生だ!」
「絶対に強いに違いない!」
その“テンプレ的な熱狂”に、ルーは視界がチカチカして鼻血がにじむ。
「ぐっ……! や、やめろ! そのノリは俺を殺すっ!」
だが、彼は何とか耐え抜いた。
気合で鼻血を袖で拭い、黒板に魔法陣を書きながら強引に授業を始める。
「えー……魔法は楽しむものだ。火と水を混ぜると、こうなる!」
教室の中央に小さな虹が現れ、生徒たちがどよめいた。
歓声の中、ルーは少しだけ笑った。
教師なら、学園でも生き残れる……かもしれない。




