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【完結】学園もので吐血する俺、だれか助けて。  作者: 山田 ソラ


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32/33

最終話 神童先生、今日も元気に生きている

 王立魔法学園。


 かつては王国でも有数の名門校だった、少なくとも学園長はそう主張している。


 今でも名門であることに変わりはないのだろう。


 ただし、少々問題がある。


 地下には巨大ダンジョン。校庭には黒竜。


 休日になれば観光客が押し寄せ、冒険者たちは修行のために訪れる。


 生徒たちは定期的に地獄コースへ放り込まれ、教師たちは胃薬を常備していた。


 どこからどう見ても普通の学園ではない。


 もっとも、今さら誰も気にしていなかった。


 昼休み。


 校庭のベンチに座っていたルーのもとへ、生徒たちが駆け寄ってくる。


「先生!」


「なんだ?」


「ダンジョン十階層を突破しました!」


「そうか」


「そうかじゃないです! もっと褒めてください!」


 口々に文句を言う生徒たちに、ルーは少しだけ笑った。


「よくやった。最初の頃なら五階層で泣いてただろ」


「うっ……」


「反論できない……」


 生徒たちが苦い顔をする。だが、その表情はどこか誇らしげだった。


 少し離れた場所で見ていたミラが微笑む。


「みんな、本当に強くなりましたね」


「ああ」ルーも頷いた。


 最初は逃げ出したいと騒ぎ、地獄コースを見て泣き、毎日のように文句を言っていた連中だ。


 それが今では自分たちの力でダンジョンを攻略している。


 教師としては悪くない気分だった。


「先生のおかげですよ」


「俺だけじゃないさ」


 ルーは周囲を見回した。


 アランは職員室の前で胃薬を飲んでいる。


 学園長も飲んでいる。

 ついでに他の教師たちも飲んでいる。


「……なんでみんな飲んでるんだ?」


「先生のせいです」ミラが即答した。


 周囲の教師たちも無言で頷く。

 ルーは納得いかない顔をした。

 その時だった。


「グルルル」


 聞き慣れた鳴き声とともに黒ちゃんがやって来る。


 巨大な頭をぐいぐい押し付けてきた。


「重い」


 押し返しても離れない。完全に懐いた大型犬である。


 そこへ、散歩でもするかのような気軽さでレオポルト三世が現れた。


「今日も平和だな」


「どこがですか」ルーは反射的に突っ込んだ。「校庭に黒竜がいますよ」


「可愛いではないか」


「基準がおかしいんですよ」


 王様まで完全に慣れてしまっている。


 そんなやり取りをしていると、ふと学園の門の方が目に入った。


 一組の親子が立っていた。


 まだ幼い少年が、憧れを隠しきれない様子で学園を見上げている。


「ここが王立魔法学園……」


 その目はきらきらと輝いていた。


「僕、強くなりたい!」


 その言葉を聞いて、ルーは少しだけ目を細めた。


 前世では学園ものが嫌いだった。テンプレ展開を見るだけで避けていた。


 だから絶対に関わらないつもりだった、なのに気が付けば教師になっていた。


 毎日騒がしい。問題は次から次へと起きる。恋愛相談を聞けば吐血するし、生徒は無茶をするし、黒竜は居座る。


 胃が痛くなることだって多い。


 それでも「まあ」ルーは小さく笑う。「悪くないか」思わず漏れた本音だった。

 

 だが、その直後。「ルー先生!」


 女子生徒が全力で駆け寄ってくる。

 嫌な予感しかしない。


「恋愛相談が――」


「やめろぉぉぉぉぉ!!」


ブッ。


 盛大に吐血した。


「先生ぃぃぃぃ!?」


 ミラが飛び出す。

 アランが胃薬を落とした。

 学園長は頭を抱えた。


 黒ちゃんは慌ててルーファスの周りをうろうろしている。


「グルル!?」


 レオポルト三世だけが大笑いしていた。


「はっはっは! 平和だな!」


「平和じゃありません!!」


 生徒も教師も全員で叫ぶ。


 青空の下、今日も王立魔法学園は騒がしかった。


 学園ものが嫌いだった一人の少年は、いつの間にか誰よりも学園の中心に立っている。


 本人はきっと認めないだろう、それもまた、悪くない人生だった。


おまけ


【学園掲示板・最終版】

■学園最強ランキング

1位 ミラ

2位以下 努力賞

■教師ランキング

1位 ルー先生

■怖い先生ランキング

1位 ルー先生

■優しい先生ランキング

1位 ルー先生

■意味不明ランキング

殿堂入り ルー先生


「最後までそれかぁぁぁぁぁ!!」


 こうして掲示板は最後まで平和だった。

たぶん。


 完。

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