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【完結】学園もので吐血する俺、だれか助けて。  作者: 山田 ソラ


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第27話 神童先生、教師たちを絶望させる

 学園対抗戦で完全優勝を果たしてから数週間。


 王立魔法学園は、今日もいつも通り賑やかだった。


 生徒たちは地下ダンジョンへ潜り、冒険者たちは訓練や素材集めに励む。最近では観光客まで見学に来るようになり、学園は以前にも増して活気づいていた。


 その一方で学園長室には、今日も胃薬が積み上がっていた。


 平和である。

 たぶん。


 そんなある日、教師たちによる定例会議が開かれた。


 議題は一つだった。


「最近、ルー先生ばかり目立っていませんか?」


 発言した教師の言葉に、部屋の空気が妙な静けさに包まれる。


 やがて誰かが頷いた。


「目立っているな」


「かなり目立っている」


「否定できませんね」


 次々と賛同の声が上がる。学園対抗戦の完全優勝。地下ダンジョンの管理者。王国最強候補の生徒ミラの師匠。


 ついでに王様から怒られた回数も学園トップ。


 並べてみると、確かに目立っていた。


「だがな」剣術教師のガレスが腕を組んだ。「生徒が優秀だからといって、教師本人が強いとは限らんだろう」


「それは確かに」


「一理あるな」


 教師たちが頷く。


「なら決めればいいじゃないか」


 誰かが言った。


「教師同士で戦ってみれば」


 その一言で話は決まった。数日後、学園の掲示板には大きな張り紙が貼り出される。


【第一回 王立魔法学園教師最強決定戦】


 それを見たルーは頭を抱えた。


「どうしてこうなった……」


 誰も答えてくれなかった。


 大会当日、学園闘技場は異様な熱気に包まれていた。


 生徒だけではない、教師、冒険者、卒業生、さらには町の住民まで集まっている。


「ただの教師同士の試合だよな?」

「そのはずなんだが……」


 誰もが首を傾げながらも席は満員だった。


 選手入場。ルーが姿を見せると歓声が上がる。


「ルー先生ー!」

「頑張れー!」

「負けろー!」


「どっちだよ!」思わずツッコミを入れるルーに観客席から笑いが起こった。


 そして、第一試合。ルー対ガレス。


 開始の合図と同時に、ガレスが迷いなく踏み込む。


「行くぞ!」鋭い剣閃が走った。


 次の瞬間、ルーの身体が派手に吹き飛んだ。


「ぐえっ!?」


 地面を何度か転がり、そのまま動かなくなる。


 審判が慌てて宣言した。


「勝者、ガレス先生!」


 闘技場が大歓声に包まれる。


「弱っ!」

「ルー先生弱っ!」

「学園最弱じゃないか!」


 ルーは地面に寝転がったまま空を見上げた。


「だから言っただろ……」


 学園の中では弱い。本当に弱いのだ。

 教師たちも安心したように笑っている。


「なんだ、普通じゃないか」

「噂ほどじゃなかったな」

「最強説は誇張だったか」


 だが、観客席の最前列にいたミラだけは静かだった。


「まだ終わってません」


 隣の生徒が首を傾げる。


「何が?」


「本番がです」


 嫌な予感しかしなかった。


 試合終了後、興奮した生徒の一人が叫んだ。


「先生! 学園の外でもやってください!」


 一瞬の沈黙。

 そして。


「それだ!」

「見たい!」

「やれやれ!」


 観客たちが盛り上がる。ルーは頭を抱えた。


「なんでそうなるんだ……」


 だが多数決とは恐ろしい。気が付けば会場は学園正門前へ移動していた。


 しかも観客はさらに増えている。どこから聞きつけたのか、王様まで来ていた。


「余も興味があってな」


「陛下まで来る話じゃないですよ!?」


 逃げ道は完全に塞がれていた。やがて再試合が始まる。


 ルーはため息をつきながら学園の門へ向かった。


 そして、一歩だけ門の外へ出る。その瞬間だった。


「あー……久しぶりだな、この感じ」


 体の奥から力が湧き上がる。抑え込まれていた魔力が一気に解放される感覚。


 空気が震えた。

 周囲の観客たちがざわめく。


「なんだ……?」

「雰囲気が変わったぞ」


 ガレスも思わず眉をひそめる。だが、試合は始まった。


「2連勝だ!」


 ガレスが突撃する。鋭い一撃。だが……。


 ルーは片手で剣を受け止めた。


「……え?」


 ガレスが固まる。観客も固まる。ルーは首を傾げた。


「遅くないか?」


 次の瞬間、ガレスの身体が空高く舞った。


「うわああああああっ!?」


 綺麗な放物線を描きながら、遥か彼方へ飛んでいく。


 誰も言葉を発せなかった。


 さっきまで一撃で倒されていた少年と同じ人物には、とても見えなかったからだ。


 その後も試合は続いた。


 魔法教師を瞬殺(殺してはいない)。騎士教師を一撃。格闘教師をワンパン。


 挑戦者たちは次々と宙を舞った。


 途中から観客たちは勝敗ではなく飛距離を予想し始めていた。


「今回は八十メートル!」

「いや百メートルだ!」

「記録更新しろ!」


「競技が変わってないか?」ルーのツッコミは誰にも届かなかった。


 そして、大会終了。優勝トロフィーを受け取ったルーは疲れ切った顔をしていた。


「おめでとう、ルーファス」


 レオポルト三世が満足そうに笑う。


「全然嬉しくありません」本音だった。


 その翌日、学園掲示板に新たなランキングが貼り出された。


【教師ランキング】

 学園内最弱 ルー先生

 学園外最強 ルー先生

 教師最強 ルー先生

 意味不明部門1位 ルー先生


 しばらく無言で見つめた後、ルーは叫んだ。


「最後の項目はなんなんだぁぁぁぁ!!」


 ルーの悲鳴が学園中に響くのであった。

 

 




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