表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学園もので吐血する俺、だれか助けて。  作者: 山田 ソラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/27

第24話 神童先生、ダンジョン経営を始める

 王城でたっぷり二時間説教された翌日。


 ルーファス・グレイは、またしても王城に呼び出されていた。


 昨日のことがある。


 さすがに今日は余計なことを言わないでおこう。


 そう心に決めていた。


 だから珍しく真面目な顔で謁見の間へ入る。


「失礼します」


「来たか」


 玉座にはレオポルト三世。その隣には宰相バルトロメウス。さらに学園長までいた。


 全員、どこか疲れた顔をしている。そして、ルーは思った。


(俺のせいだな、これ)


「ルーファス」


「はい」


「学園地下ダンジョンの件だ」


 ルーは内心で身構える。また、説教かもしれない。


 しかし、王の口から出たのは予想外の言葉だった。


「お前はダンジョンの管理者になった」


「そうですね」


「ならば責任を持て」


「……はい?」意味が分からず聞き返す。


 レオポルト三世は淡々と続けた。「調査の結果、あのダンジョンは極めて安全性が高い」


「そうらしいですね」


「生徒の実力向上にも役立っている」


「みたいですね」


「つまり有効活用しろ」


「……ああ」


 そこで理解した。嫌な方向に。

 

 王がにっこり笑う。


「正式運営を許可する」


「嫌です」


「却下だ」


「ですよね」


 即答だった。ルーは遠い目をした。逃げ道は最初からなかったらしい。

 

 こうして学園地下ダンジョンは正式に運営されることになった。


 そして、なぜかルーファス・グレイは経営者になった。

 

「なんで教師がダンジョン経営するんだよ……」


 誰も答えてくれなかった。


 一週間後。ダンジョン入口前。ルーは巨大な看板を見上げていた。

 

【王立魔法学園地下ダンジョン】

【本日グランドオープン】

 

 もちろん作ったのはルー本人である。

 

 隣で学園長が頭を抱えていた。


「本当に設置したんですね……」


「作ったからには使わないともったいないでしょう」


「学園なんですが」


「今さらですよ」


 学園長は何も言い返せなかった。確かに今さらだった。

 

 ダンジョン内部も大幅に整備されている。


 ルーは管理者権限を使い、攻略コースをいくつか用意した。

 

 まずは初心者コース。スライムやゴブリン中心。危険性は低く、訓練向け。

 

 次に中級者コース。オークやウルフが出現し、簡単な罠もある。一般冒険者向けだ。

 

 そして。

 

【貴族泣かせコース】


 学園長が看板を二度見した。


「……何ですかこれ」


「貴族向けです」


「説明になってません」

 

 ルーは真顔だった。

 

「高い場所を歩きます」


「はい」


「泥に落ちます」


「はい?」


「転びます」


「はい?」


「プライドが死にます」


「最低ですね!?」

 

 だが意外にも教育効果は高かった。


 失敗を経験したことのない貴族の子弟たちには、なかなか好評だったのである。


 本人たちは不満そうだったが。

 

 さらに。

 

【ルー特製地獄コース】

 

 宰相が無言で看板を見つめた。

 

「……内容を聞いても?」


「地獄です」


「名前で分かります」


「地獄です」


「だから説明を」

 

 内容は単純だった。オークの群れ。迷路。落とし穴。連続ボス戦。全部入りである。

 

 ルーは満足そうだった。周囲は全く満足していなかった。そして、迎えたオープン初日。

 

 ルーは入口の前で固まっていた。

 

「……何だこれ」

 

 人。

 人。

 人。

 

 見渡す限り人だった。

 

 行列は学園の門を越え、通りを曲がり、さらに王都の大通りまで続いている。

 

「冒険者ですね」ミラが淡々と言う。


「見れば分かる」


「大人気です」


「なんで?」

 

 ミラは不思議そうに首を傾げた。

 

「死なないからでは?」

 

 ルーは黙った。

 

「あー……」

 

 納得した。

 

 普通のダンジョンは死ぬ。

 怪我もする。

 命懸けだ。

 

 だが学園地下ダンジョンは違う。安全装置付き。経験は積める。宝箱も出る。訓練にもなる。

 

 そりゃ人気になる。

 

「毎日通うぞ!」

「こんなの夢のダンジョンだろ!」

「訓練し放題じゃねぇか!」

 

 冒険者たちは大盛り上がりだった。

 

 結果。大繁盛。一か月後。

 

 王都観光案内の冊子を見たルーは固まった。

 

【王都名所】

・王城

・大聖堂

・中央市場

・王立魔法学園地下ダンジョン

 

「なんで?」

 

 思わず呟く。

 

 さらに学園周辺には屋台が並び始めていた。宿屋も増えた。武器屋も増えた。


 いつの間にか小さな商店街までできている。

 

 完全に観光地だった。

 

「経済効果は非常に大きいですね」


 宰相が上機嫌で報告する。


「税収もかなり増えています」

 

 王は満足そうに頷いた。

 

「素晴らしいではないか」


「よくありません!」学園長だけが悲鳴を上げる。

 

 誰よりも学園の未来を心配していた。

 ある日の夕方。

 

 ルーは学園入口の看板を見上げていた。

 

【王立魔法学園】

・生徒募集中

・ダンジョン挑戦者募集中

・観光客歓迎

 

 しばらく見つめる。そして、ぽつりと呟いた。

 

「……これ、本当に学園か?」

 

 誰も答えなかった。ただ一つだけ確かなことがある。

 

 王立魔法学園は今や、学園であり、ダンジョンであり、観光地でもある不思議な場所になっていた。

 

 そして、その原因が誰なのか。

 

 ルー自身が一番よく分かっていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ