第21話 神童先生、ダンジョンで復活する
学園祭から一週間後。ルーは保健室で寝込んでいた。
「もう学園祭なんて二度とやらん……」
「先生、毎年あります」ミラの一言にルーは布団を被った。現実逃避である。
だが、その平穏は長く続かなかった。学園長が血相を変えて保健室へ飛び込んできたからだ。
「大変ですルー先生!」
「嫌な予感しかしない」
「学園地下でダンジョンが発見されました!」
「は?」
王立魔法学園の地下。古い倉庫の壁が崩れ、その奥から巨大な石造りの階段が見つかった。
調査した結果、どう見てもダンジョンだった。しかも、未発見、完全な新規ダンジョン。
学園中が大騒ぎになった。
翌日、地下入口前。学園長、教師陣、生徒会、上級生たちが集まっていた。
「安全確認のため調査隊を編成します」学園長が説明する。「引率教師はルー先生」
「嫌です」
「却下します」
「なんで!?」
「最強だからです」
正論だった。ルーは泣いた。
こうしてルー、ミラ、上級生十数名の調査隊が結成された。
ダンジョンへ入る。一歩、二歩、三歩。そして、ルーが足を止めた。
「あれ?」
「先生?」ミラが首を傾げる。
ルーは拳を握った。体が軽い。魔力が溢れてくる。いつもの感覚だった。
「ははは」
「先生?」
「はははははは!」
急に笑い始めた。生徒たちが怖がる。
「学園じゃない!」
「え?」
「ここ学園じゃないぞ!!」ルーが叫んだ。「つまり!」両手を広げる。「俺は完全体だ!!」
その直後、ゴブリンの群れが現れた。数十体。普通の生徒なら苦戦する数だった。
「敵です!」
「戦闘準備!」生徒たちが武器を構える。
しかし、ルーは歩きながら指を鳴らした。
パチン。
それだけだった。
ドォォォォォォン!!
爆炎、雷撃、暴風、氷嵐。全属性魔法が同時発動した。ゴブリンが消えた。本当に消えた。跡形もなく。
「…………」
「…………」
「…………」
生徒たちは固まった。「先生強すぎる!!」誰かが叫んだ。全員が頷く。
「なんだあれ!?」
「化物だろ!」
「学園の時と別人じゃん!」
ルーは鼻で笑った。「今さら知ったのか?」格好よく言った。珍しく格好よかった。
ミラが頷く。「いつもの先生です」
「そうそう」
「学園限定で弱くなります」
「説明するな」
さらに進む。オーク出現、一撃。ミノタウロス出現、一撃。巨大スライム出現、一撃。生徒たちは戦う暇すらなかった。
「先生だけでいいんじゃない?」
「俺もそう思う」ルーも同意した。
やがて調査隊は第三階層へ到達した。そこには巨大な扉があった。明らかにボス部屋。
学園長から渡された資料には書かれている。過去の記録にも存在しない未知のダンジョン、危険度不明。
ルーは扉を見上げた。「さて」久しぶりに冒険者時代の血が騒ぐ。「開けるぞ」
重い扉が開く。その先で待っていたのは高さ十メートルを超える巨大な黒い竜だった。
「ぎゃあああああ!!」生徒たちが悲鳴を上げる。ミラが即座に短剣を抜く。
しかし、ルーだけは笑っていた。「なるほど」肩を回す。首を鳴らす。「久しぶりに楽しめそうだ」
黒竜が咆哮した。そして学園地下ダンジョン最大の戦いが始まる。
もちろん、学園の外なのでルーは絶好調だった。




