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第51話【強すぎて謝謝】

 準々決勝の相手は菱田。香川の坂出学園の2年生。

「ァテヤッ、コテァ!」


 ははあ。2年で四国個人チャンピオンだけあって、面白いところで手を出してくる。単にタイミングがおかしいというのではなく、構え合いの中であえて外してくる感じだ。

 いいねー。でも、ちっとセンスに走りすぎて基本のところが疎か。だから、ほら。俺のコテが怖くて、中心の取り合いでどんどん自信がなくなってきているのが分かるよ。


 さあ、どうすんのよほれほれ、手元を上げないように我慢してても、こうやって角度をつけて当てちまうぞ!

「ンメダァアア!」

 ほらあ。メンがガラ空き。一丁上がりですよっと。

 おまけでツキからのメンも追加して2本勝ち。




 続く準決勝戦は埼玉の与野第一から3年の櫛枝。こいつはあれだ。全中の決勝で内海に負けてた。せっかく関東に進学したのに、公式戦では手合わせできなかったからな。同じ内海に負けた同士なのに、順位がお前の方が上なのが、いたく気に食わなかったんだ。だから今回の対戦は楽しみにしていたぜ。


「うぇあああ!」

 なかなかどうして、気持ちの入った気勢の割に、鍔迫り合いは手応えがない。構えは堅くもなく緩くもないが、中心は安易に譲ってくれない。


 しかし、ビデオと実際の手合わせとは感覚が違うもんだ。高校だと個人戦は予選でポロポロ負けていたから、櫛枝の対策h¥では団体戦の試合ばかりを見ていた。しかし、こいつは個人戦だと全く剣道が異なる。一番の特徴といえば、構える時間が長い。とにかく永い。団体戦だと結構テンポよく攻めたり、諦めて間合いを潰したりと、早め早めの行動が主だった。それが個人戦だと、こっちが下がれば詰めてきて、逆にこっちが詰めれば程よく間合いを取る。


 それじゃ、強引に攻め込んだらどうなるか。

「メェン!」

「カテェッ!」

 おっと。結構詰まった間合いでも、俺のメンに潰されずにコテを刺しこんできた。これは体勢を崩さないと、こっちが危なくなる。


 であれば、これはどうだ?

「ツケェッ」

 うむ。長く構えて足が止まったかと思ったが、片手ツキも避けやがった。


 ほほう。長丁場がご所望ですか。まぁ、時間内で決め方をどうするかの検討くらいはつけさせてもらいましょうか。


 表から竹刀を抑えながら入る。詰めて詰めて、メン!と見せかけて

「コタァッ!」

 あ、そう。全然手元は上がらないか。しかし、向こうから俺の出頭や返し技を狙うことはない、と。

 じゃあ、遠間から急にコテメン。これは普通に見切られて、メンの打ち終わりに抜きメンを打ってきた。こちらも捨て身で打ってないし、さっと避けてやる。


 それから色々と構え合ったり、タイミングを外して出ても、櫛枝は届かせないようにしてくる。

 4分が来て、ブザーが鳴った。なるほどね、こっちの集中が切れるのを待っているのか。開始線に戻りながら考えをまとめる。となると…。


「コテェッ、コテ、コテッ、ツイタメンダァアア!」

 牽制のコテを3発。そこからツキメンと畳みかける。これは当たらなかったものの、櫛枝は足を止めて、苦しい姿勢で手だけで捌いた。そのままメンを打った勢いで体当たりを喰らわせてやり、相手の首根っこを竹刀の根元でガツンと刈り上げて、体勢が崩れて手元が上がったところで引きドウと見せかけて引きメン!と見せかけて


「ドウァアア!トウッ、ドウォオオオオアアア!」


 櫛枝の左胴がパカァン!快音を鳴らした。当然3本の旗がこちらを支持している。決着。うん、手数は少なかったので体力の消耗は最小限だ。ただ頭の方を加味したら準々決勝の何倍も疲れた。


 なるほどな。櫛枝、確かにお前は全中準優勝に相応しい男だったことが分かった。俺の攻めに対して頑なに構え続けたあたり、並の人間には真似できない実直さがひしひしと伝わってきた。




 面を外すと、もう一歩のコートのホワイトボードが見える。内海は2本勝ちだったか。

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