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第28話【俺だって元ショタ】

「恵一も剣道始めたらええやん」


 小学校1年生の夏、友達に誘われたのが剣道を始めるきっかけだった。まさかそいつが半年後に辞めるとは思わなかった。


 始めた頃は剣道を


「しけとー。はよ辞めたか」


 と、しょっちゅう言っていた。


 なんせ稽古がキツイ。いいと言われるまで前後ろ左右にすり足。メンもコテもドウもあったもんじゃない。お陰で足の裏が痛い。靴って偉大だったんだなとつくづく実感させられる。


 足捌きを長々とやらされた後は素振り。前進後退メンや左右メン、跳躍素振りなんてやらない。右足を前に出しながら振りかぶり、左足のに引きつけと同時に面のあたりへ振り下ろす。それで引きつけが遅かったり手足がバラバラ、右手中心のように悪いところがあると


「悪かぞ!」


 そこを竹刀でバシッと叩かれた。


 その折檻の主は我らが悟敬館道場の館長様、田川悟先生だ。


 それにしても悟を敬えと書いて悟敬館。小学生のときは漢字が分からなかったが、いっそ清々しいまでのネーミングである。


 しかし当時はそんなことも分からず、ただただ怖い爺さんという印象だけだった。確か高卒で福岡県警に奉職、特練で全日本選手権にも出たことがあるとかなんとか。実際、背は低くてもそこらのくたびれた老人ではないあり得ないガタイの良さで、強いジジイの代表格みたいな男だった。

 そしてこのジジイは


「恵一、お前は剣道以外むいとらん」


 と口酸っぱく言った。というのもすぐにカッとなりやすくて負けると引きずるし、味方の失敗でも簡単にへそを曲げる。まったくもって団体競技に向いてないのだ。


 その代わりと言っては何だが、キツイ稽古だろうと最後まで根を上げることはなかった。

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