第27話【どっちを向いてるの】
北は北海道、南は熊本まで遠征遠征遠征と走りまわって新チームが固まっていった。先鋒は倉富、次鋒は柴田が抜擢された。そして中堅に新浦、副大が俺と矢野である。
ただここに行きつくまでに少々揉めた。
「去年一番後ろでやってたからって、そのまま矢野を大将にするのって安易なんじゃない?」
と意見したのは新浦。
「なら俺じゃなくてお前が大将をするのか」
当然、矢野が聞き返す。
「なんて言うの?俺としては何にも考えないで、決定事項みたいに矢野を大将に置くのがちょっと腑に落ちないのよ」
なんだよ、コイツ。クソへっぴり腰のくせに今回は突っかかってくるな。
「主将もほとんど出来レースみたいな感じで決まったじゃん。そんときからなんか違うよねって思ってたわけ」
「だったら言えばよかったろ。今更、混ぜ返すな」
「まあそんときは矢野がまとめるのが一番いいと俺も思ったよ。でも『はい、矢野が主将で良いですね。決定決定』って作業みたいに決まったのはどうかなって。俺も倉富も、他の2年生だっているのに」
矢野が面倒くさそうに眉をしかめている。同感だ。俺は何を見せられているんだ?
「だって3年生が抜けて、ある意味みんな横一線でしょ。山内章領に誰も勝てなかったんだから」
コイツ、本当に…。
「もういい。わかった。俺から監督にチーム編成について新浦を後ろに置くように掛け合ってくる」
「いや、それじゃなんか俺が大将になりたくてゴネたっぽく思われちゃうじゃん。ちょっと柔軟にチームの組み方を考えてみたらって話し方で頼むわ」
矢野は返事もせずに、のそりと立ち上がって師範室に向かった。
時間の無駄だ。しかし新浦の話を完全には無視できない状態ではある。なぜなら敷いて自分を矢野派とした場合、新浦派の人間も一定の数はいるのだ。
なんせ矢野は厳しい。怒鳴る。稽古でハメる。わりと簡単に殴る。とにかく規則の厳守と稽古の姿勢に関してこれでもかとうるさい。お陰で俺たちは3年生から怒られる隙が無かった。イントロクイズでもやっているのかというくらい1年生の行動を監視して、間違いを見つけるや直ぐに叩きに現れる。
一方で新浦のぬるさたるや。後輩を怒らない。間違いを優しく指摘するでもなくサボりに誘う始末。
よくある派閥争いなんだろう。俺はインハイ予選での新浦の腑抜けた態度に辟易した。矢野も愛想はないが、まあ口うるさい指摘の数々も気にかけれているからこそだと思うこともできる。
夛田は矢野に目をつけられていたこともあって新浦派である。しかし意外にも尾道は矢野派だ。普段矢野の文句を言うくせに、実は慕っていたのだ。というほどのことはなく、ただ矢野がたまたま野球のソシャゲ(ストロングベースボール、略してストベの中毒者で話が合うからだ。本当にどうしようもない奴だと思う。




