第23話【人に歴史あり】
その後に行われたインターハイ、団体で出場を逃したが個人では渡会が奮起した。1回戦で秋田の秀明館高校の谷内に延長15分の苦戦を強いられたあとは、本来の硬軟織り交ぜた剣道で快勝を重ねた。
最終日に準々決勝で伊野学園の能美に敗れたものの、光誠学園の主将として、大将として戦ってきた男の背中は観客席から見ていて頼もしかった。
渡会の一振り一振りに光誠学園の応援団は歓声を上げて力いっぱい手を打ち鳴らした。また彼の劣勢の場面には関節が白くなるほどこぶしを握り締めた。
最後の試合が終わったとき、矢野は泣いていた。試合場では付き人を務めた金本が涙をたたえながら渡会を迎える。徳田は面を外した渡会と握手をし、言葉を交わしている。 多くの期待を背負って戦ってきた男の涙だった。
ああ、行きたかったな。みんなでこの会場で団体戦を戦いたかった。強い相手を倒すためじゃなくて、このチームで長く戦うためにインターハイに出場したかった。
入部数ヶ月の俺がこう思うんだ。先輩たちはもっと強い気持ちがあるんだろう。今の自分にできるのは、この気持ちを落ち込むためではなく、来年に向かう力に変えることなのだろう。
そういえば南和大橘は予選リーグでコケやがった。負けたこっちが言うことじゃねえが、もっとこう、何とか出来たろうがよ。
ま、仕方ない。俺は気持ちを入れ替えたんだ。8月20日あたりにある神奈川県の1年生大会。早速やってきた一場を倒すチャンス。おい章領、うちに当たるまで他所に負けんじゃねえぞ!




