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第2話【ようこそ、R組へ】

「剣道部は朝から随分といい香りだな」


「朝からうるさいよ」


 朝練が終わり教室で昼食に支給された弁当を食べる俺に、隣の席のレスリング部の吉田が軽口をかけてきた。


「お前ら剣道部はな、ほとんどスポ薦しかいない教室で臭いで浮くって、どんだけだよ」


「しょうがないだろ。防具の汗は積み重ねがモノをいうんだから」


 うへぇと顔をしかめる吉田に、お前の制汗スプレーの臭いだって相当なもんだぞ、とは心の中にとどめてやる。しかし臭いと匂いを同じ読み方にしたやつはバカなんじゃないか。いや、くさフェチの可能性もあるか。そうだとしたら漢字という世間みんなが使うものを決める立場の人は、まともな性癖の人でないと困るな。


 まだ続いている吉田の文句を無視しながら、朝のホームルームが始まるまで下らないことを延々考えていた。


 ホームルームが終わると1限開始までの間に急いで購買に駆け込む。買ったのは総菜パン。これは授業休みの間に食べる用のもので、昼食はまた食堂で買う。


 光誠こうせい剣道部に食事のノルマはないのだが、他の運動部員も含めて食トレをするものは多い。


 聞いた話では、学校によっては朝昼晩のそれぞれにどんぶり何杯以上おかわりしなければならないといった具合で、ノルマがあるとかなんとか。


 食トレの成果は体格に現れるよりまず意識に出て、我が1年R組の授業中の起床率は50%を大きく下回る。


 `寝る子は育つ`と`少年老い易く学成り難し`を地で行く姿に今日も教師らは呆れ顔なのだろう。実際どうなのかは寝ているのでわからない。




 光誠学園のクラス割は単純で、前年の成績順である。当然1年生はまだテストを一度も受けていないので入学試験の順位で決められる。


 そのため吉田や俺のような自分の名前より難しい漢字を書けないタイプの、清々しいまでのスポーツマンは一番下のR組に配属される。


 しかしスポーツ推薦の全員が学力下層クラスなのではなく柴田は中くらいのL組にいるし、スポ薦でもサッカー部は上のクラスが多い。これは余談だが、俺はサッカーやバスケのように強豪が平気で髪を伸ばしている競技は鼻について仕方がない。ヘアバンドをするくらいなら丸坊主にすればいいのだ。


 逆に付属の中学上がりでちょっと不良気味な一般生が下位クラスに少数混じっていて、髪を染めていたり体格が明らかに小さかったりで浮いている。


 入学当初は付属上がりの彼らがクラス内でも幅を利かせていた。しかしそれも三日天下で、今では運動部でも気性の荒いのからは使い走りにされ、授業中も私語でもしようものなら真面目に寝ようとするものからどやされる。


 最下層のR組を支配する秩序は腕力の大小のみであった。

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