第17話【好きで負けたわけじゃない】
改めて外田恵一視点でお楽しみください。
6月最終週。朝練を終えて教室に着いた。今日もレスリング部の吉田は声を掛けてこない。ここ最近死んだようになっているが、こちらからも何も言うことはない。
それは俺が薄情だとか人付き合いが苦手だというのとは別問題だ。
吉田がふさぎ込んだ理由はただ一つ。レスリングが今年のインターハイに出場ができないからだ。剣道部がインハイ予選でやらかしたのに気を使ってとか、そういう繊細な人間ではない。レスリング部は今年のインハイ予選で優勝したものの、高校スポーツ最大の舞台には立てない。というのも3年生の数名による万引きが発覚、それを鑑みて出場を辞退からだ。
そりゃ落ち込むだろうな。その事件でやらかした3年生っていうのが、とっくに戦力外通告を受けて不貞腐れ普段練習もせず後輩をいじめることだけに精を出すようなクズで、そいつらの不祥事が部の落ち度に数えられる。真面目に練習してきた身からすれば堪ったもじゃないだろう。
一方で俺はというと、光誠学園の連続出場を途絶えさせた1番の大戦犯。
落ち込むに落ち込んだところで稽古をサボるわけにもいかず、気乗りしないままメンメン言う日々を送っている。矢野、いや矢野新主将。頼むから一思いにぶん殴って喝を入れてくれ。こうハッキリしない気持ちに気合を入れる役を他人に押し付けて考えたりだ。
インハイ予選で負けてから、代替わりで主将が渡会から矢野に移った。ただ3年生でレギュラーだったメンバーは玉竜旗があるから稽古には出続ける。もちろん渡会と金本にいたってはインハイ個人だってある。
しかし、空気は重たい。
「尾道!お前だけテンポが遅いと全体がグダるんだぞ」
アンチ矢野の最前線だった尾道。たぶん今日どやされたことも愚痴らないんだろう。全体が締まらないような覇気の失われた雰囲気で満たされている。
極めつけは玉竜旗のオーダーだろう。大戦犯の俺がまたしても登録されている。これには3年生の保護者から不満の声が出ているようだ。当然だ。自分の子供がインターハイに出るのを邪魔した1年坊主をまた試合に出すなんて考えられないだろう。こっちだって勘弁してくれと思う。しかし徳田は気にするなの一点張り。
周りからは疎まれ、また反対に気を遣うものもいてで整理ができない。




