第15話【邂逅、歓喜】
しかし予想に反して横須賀学園には何の苦もなく勝って、星辰平塚も見てて負ける相手じゃなさそう。となると…。
「なんかバタついてますね」
光誠が不穏な空気を発している。隣で見ている粉河先生に話しかけた。
「なんか足を攣ったのかな、槙野」
光誠学園のデカいのがもんどりうったと思ったら、そのまま引っ込んでしまう。どうやら槙野さんはケガで、次の試合からは小さい人が先鋒になったっぽい。
「だ、だれすかあのあれは!」
「ネームに外田ってあるから、去年の全中個人準優勝のやつだな。槙野ダメだったかー」
先生が大事なことをサラッと言った。
「先生、今なんとおっしゃいました?」
「槙野ダメだったかー」
「その前!」
「去年の全中個人3位。なんだ。ビビっちゃった?」
「てことは1年生、タメなんですか!?」
「そこなのね。外田は1年生だよ。いい剣道してる」
「小っちゃくて1年。これは怪我せずに済みそうです!」
「緊張してなさそうで嬉しいが、その気楽さはどうなんだい」
俄然やる気が出てきた。槙野さんって人、見るからに人を殺しそうな感じあるし。
それの代わりに出てきた外田くん?っていう人、この人とやっても弾き飛ばされはしなそう。
準々決勝もパリッと勝って、やって参りました。準決勝、我らが神奈川の大ボス、光誠学園。
さっき舐めたことを言っていた頃の自分が羨ましい。整列して外田くんの顔を見て逃げたくなった。鬼のような怖い顔というより怖い鬼の顔だ。
蹲踞から立ち上がると
「ほいやー!」
あれ?あんまり仕掛けてこない感じ?カチッ、カチッと剣先が叩きながら少し詰めてきても激しさはなかった。
うーん、でもこっちから打ってくのは怖いしな。お、なんか構えを緩めてる。これは…誘ってるのかな。なんだろ。急に試合に出されて外田くんもおっかなびっくり剣道やってるのかな。
よし、いっちゃえ。裏から払ってコテに見せかけてメン!
「ンメァー!」
ああ、普通に捌かれた。仕方ないね。いったん仕切り直し…
「メァッ、ォメタァー!」
ひぃっ!すごい速さで裏からメンを打ってきた!ていうか今のフェイントしてから打ってた?速すぎてわからなかったんですけど。てかこの背丈の差であそこから届くんだ。
とか考えている暇はなかった。メンを避けたら悠長に鍔迫り合いなんかしてくれなくて、崩して引き技。決まらないと鍔競り合いになる前に体当たりで崩して次の技に繋げてくる。
それを嫌って離れても、竹刀が触れ合う入り際のところで必ず向こうから先に入ってこられてペースを握られる。こうなるとアップアップな状態から構えあうことになる。
いやー、すごい。そうか、これが追い込みと掛かり稽古をする理由なんだ。技を打っても体勢が乱れないし、だから次から次へと技が途切れない。おかげでこっちは防戦一方。うん、マジでずっと外田くんのターン状態。でも本当に感動しちゃうな。技を上下に散らしたり、あえて偏らせて裏をかいてきたり、この速い連打の中でも間を外してきたり。理屈で固めてきてる。避けるのでいっぱいで苦しいけど、このまま無限に打ち込まれても勉強になって面白いかも。へー、そうしたら次はそこ打つの。じゃあ次は?って。
と思ったら一旦連打による地獄の責め苦から開放。なぜかというと僕が場外にすっ飛ばされたから。確かに踏ん張ろうにも厳しい姿勢だったけど、こんな紙切れみたいに吹っ飛ばされてそまっては笑うしかない。
でも、これで仕切り直し。お互い五分五分の状態で構え合える。
「セヤッ」
中断から開始直後、剣先を下げつつ、いきなりグイっと外田くんが間合いに入り込んでくる。
んぇ、なんか深すぎない?粗すぎない?雑過ぎない?そんな入り方だと左足の引きつけに時間がかかるんじゃないのかな。その間にこっちから打ってみようか。
「メアァッ、オメン、メンヤッタァァ!」
あらら。バッコリ当たった。よし残身も決めてみようか…、ってグェ。外田くんにかぶさりながら決めようとしたらカチあげられてひっくり返った!そのまま背中から着地。イタタタ。あ、でも旗が3本。
ひゃー。奇跡だね、なんて思いながら開始線に戻ろうとすると、外田くんが明らかに動揺しながら開始線に戻ってる。これ、イケんじゃね?
「カテヤコテエェエエエ!!!」
わっ。メンのフェイトを見せたら見事に手元を上げてくれた。うひょー、2本勝ち。
そしたらみんな勢いが出たっぽくて、3連勝で勝ちが決まった。喜田先輩は惨殺されて、大将のは長谷先輩は微妙なコテ2本をとられておしまい。 いや、でもチームとして章領は勝ってしまったのだ、光誠学園に。




