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第14話【お上りさん】

「小田原アリーナってデカいすね」


幸弘ゆきひろはときどきアホ丸出しになるよな」


 失礼なことを言っているのは見学のときに案内してくれた長谷先輩。「ながたに」ではなく「はせ」。ここ要注意。


「いや、中学までこんな大きなところでやる大会に出たことないすもん」


「そうか。じゃあさっさと負けたら、明日は俺の付き人やってな」


「いやいや。決勝で会おうぜ、くらい言ってくださいよ」


幸弘ゆきひろ、俺の方のヤマだから準決勝で当たるじゃん」


「そうなんですか?詳しいですね。ひょっとして僕のファン?」


「なんで自分と仲間の位置確認してないの?」


 そんな感じでふざけていたら個人戦の1日目を突破。ベスト8にまでなってしまった。次の週に行われた団体戦も3位。


「いやー、大したもんですな。先鋒の僕が最後しか勝たなかったのに。これで次のインハイ予選も頑張りやしょう」


「その前に関東大会あんじゃん」


「え?」


「関東大会の本戦があるよ!」


 県大会は個人はもちろん、団体もそこそこ頑張ったけど関東大会は死ぬかと思った。副将やる人って強すぎない?正直なめていた東京8位の学校の選手にもボコられて、インハイ予選は自分をレギュラーから外すよう粉河こかわ先生に直訴。あと優勝した光誠学園はヤバい。強いとかいう次元じゃないでしょ。絶対やりたくない。


「無理です。デカい人嫌いです。強いとこの副将はデカい人ばっかです」


「ダメだよ出なきゃ。神奈川個人ベスト8でしょ」


「そんなプライドとかないに決まってるじゃないですか」


「んじゃ先鋒なら小さい人が多いから、先鋒で出なさい」


「マジすか。チビッ子だらけ?」


「だらけ」


「わかりやした」


 結果的に先鋒で出てよかった。そう思えるのはあのインハイ予選準決勝戦があったから。


 今回のうちの目標は横須賀よこすか学園に勝ってベスト8。その次の準々決勝、星辰せいしん大学平塚は格上なんだから当たって砕け散るだろうという具合だった。僕個人で言うとデカい人には当たらないということと、稽古の成果はちゃんと発揮したいな、ということ。


「ホントだ。チビッ子まではいかないけど、そんなに大きい人がいない」


「気楽そうだね」


 当たるだろう学校の先鋒を見て大満足の僕に、代わりに副将をする喜田きた先輩が言う。


「別に剣道は小さくてもそこまで極端に不利になるわけじゃないから」


「でも大きい人はガツガツ押してくるじゃないすか。それで勢いで食われちゃうと、お互いの理合いで勝負することができないからズルいって思います」


「ふーん。でも光誠の倉富くらとみ、あと結局最後に出てきそうな槙野まきのなんて大きいじゃん」


「やだな。そこまで行けるわけないすよ」


星辰せいしん平塚よりこないだ代表まで言った橘の方が強いよ」


「あれはまぐれだし、関東でフルボッコにされたばっかじゃないすか。考えが甘い甘い」


「なんで負ける気でいるやつが偉そうなんだか…」

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