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第13話【あれも剣道、これも剣道】

 ここの剣道部ではすべてが明快だった。こういう動きをするためにこのトレーニングをする、こういう相手の動きに合わせるためにこの稽古をする。


 剣道って、剣道ってスポーツなんだ!今までさんざん煙に巻かれてきた。心意気だ、精神性だ。それって先生自体分かってるんですか?と言うとはぐらかされてきたものが、粉河こかわ先生は完答してくれるかもしれない。


 これでもう入部を決めて、春休みは稽古も遠征にもついていった。


 僕の決断は正しかったらしく、以後多くの疑問をぶつけても、その都度粉河こかわ先生は答えてくれた。


「追い込みや掛かり稽古は、実践ではそこまで一方的な場面はないのに何で練習するんですか?激しい練習をしてる割に、高段者がいい剣道って言ってるのはじっくり構える剣道じゃないですか」


「それはその二つがいつでも打てる体勢をキープしながら技を出す稽古だからだよ。互角稽古だと『いっせーのせ』で打って、決まらなかったらくっついてやり直しだろ?実践だとそうじゃなくて打って決まらなかったら次の打ちを出せた方が有利だ。そのためには一本打った後すぐに次の技を繰り出せる状態、要するに状態がつんのめったりあちそっち向いたりしないでやる必要があるんだ。そこで追い込みやかり稽古といった様々な形で連打をする練習が意味を持つんだ」


 へえー、なるほどなるほど。


「で、いい剣道との関係だって?」


 そうそう、それ。


「確かに高段者の人は手数が少なくじっと構えてるよ。でもあの人らだって若いときの剣道はそれなりにガチャガチャだよ」


「え、そうなんですか?」


「そうそう。でも今はガチャガチャしてない。しかもじっと構えられててこっちは打ちに行きづらい。それってやっぱりいつでも打てる状態だから、こっちにも怖い感じが伝わってきてるんだと思うんだよね」


「打てる体勢ができてるだけでも攻めになるんですか?」


「そりゃもう、攻めよ攻め攻め」


 感じは伝わってきたかも。


「だからかりも追い込みも頑張りましょう」


 ぐぬぬ。やるしかないのか。


 正直坊主にするのが嫌いで剣道を続ける気はちっともなかったけど、今となっては粉河先生の教える剣道部に入れてよかったと思う。中学のときよりは当然キツイ練習が多くなったけど、目的がハッキリしている分、達成したときの喜びがある。闇雲で先が見えない練習とは大違いだ。


 その甲斐あってか週末の練習試合でもみるみる成績が良くなっていった。というかさすが体育大学出身。コネで対戦相手をたくさん選ばせてくれる。うちのレベルでは恐れ多い格上の学校と試合が組まれる。


 そして、高校剣道最初の大会がやってきたのだ。

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