↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/136

第二話 モルゴン族長アラビナの決断 その二

 ウインランド王国に来て三日目に、王城から亡命の許可が出ました。

 早い。この国では、決めるのが我が国、いや、かつての我が国よりも、何倍も早い。

 そしてもう、受け入れてくれる土地まで、決まったという。王国の東部ハーベスト領という領地の草原地域だとのこと。


 新たな居住地への出発は、さらに三日後から毎晩200人ずつ、5日間に渡り、鉄道という大型の馬車を繋いだようなもので行くという。500頭の羊も100頭ずつ、一緒に運ぶのだとか。

 2日後には、ハーベスト領から受け入れ世話をしに来たという、宰相の弟、ロッド殿とラナ嬢がやって来た。そして、居住地の詳しい説明を聞けました。


「初めまして。ハーベスト領から、お迎えに来ました、ロッドといいます。兄の宰相から、皆さんの居住地の世話を、申しつかりました。

 不便なことや不満なことがありましたら、遠慮なく言ってください。」


「同じく、ハーベスト領から参りました、ラナといいます。

 未経験の土地に来て、不安や心配なことが、多いと思いますが、できる限り、相談にのりますので、よろしくお願いします。」


「モルゴン族を(ひき)いる《アラビナ》です。この度は、我らの願いを聞き届けていただき、お礼を申します。

 隣にいるのは、私の弟で9才になります。」


「アラビナ族長の弟の《テジン》です。よろしく。」


「族長の補佐をしている戦士長の《ギスハ》です。お見知りおきください。」


「さて、これから皆さんが向かう場所は、ウインランド王国の東部にあるハーベスト伯爵領です。

 領都ブルータスは、商売と農作の街ですが、それより東に、50キロ、鉄道で一時間少しのところの草原地帯です。

 これまで、人が住んでいない地域で、全くの草原ですが、小川が何本か流れていて、羊を飼うのに支障はないかと思われます。

 皆さんの家は、今までどおり、《ゲル(テント)》に住んでもらうことになります。

 食糧は、皆さんが自活できるようになるまで、ハーベスト伯爵から、小麦や野菜が無償で提供されます。

 少し時間をいただきますが、井戸や橋も作ります。

 それと、その場所には、皆さんだけが暮らすことになりますが、居住地の名前は、《モルゴン村》。

 族長のアラビナさんは、村長という名前で、これまでどおり、部族の取りまとめをしてください。

 皆さんが行くまでには、仮建物の駅と道ができているはずです。

 いずれ、村長さんの住居兼公民館の建物を建てますが、すぐには無理なので、了解してください。」



 ラスカル伯爵領に来て、6日目の夜、私はロッド殿と共に、第一陣として、ハーベスト領に向かうために、列車の人となりました。

 ギスハとラナ嬢が最終便で、それまで、皆の世話をしてくれます。

 駅には、ラスカル伯爵の娘のティアナさんが見送りに来てくれました。滞在中、炊き出しや病気、怪我(けが)人の世話など、なにかとお世話してくれた方です。ロッド殿とは親しいようで、二人で軽口(かるくち)をきいていたのが、微笑ましかったです。


 列車が駅を出発すると、飲み物と駅弁という食事が皆に配られ、物珍しさと美味しさに、皆が騒ぎ立てています。

 飲み物は、男達にはビールという酒が、女と子供達には、果実水という果物(くだもの)の汁の水が配られ、駅弁には、驚くほど柔らかな肉料理だというハンバーグに野菜を煮たもの、それに、麦飯という穀物が入っていました。

 どれも、具材をさらに美味しくする、味付けがされていて、皆、幸せな笑顔をしています。


 良かった。どうしようもなくて、国を捨てる決断をしたのですが、不安しかありませんでした。

 移動の道中は、皆に、出会った部族との戦いの恐怖や、過酷な砂漠での生活を()いることになって、この上、悲惨な暮らしが待っていたら、どうしようかと思っていたのですが、この国の方達は、思ってた以上に優しく、私達を受け入れてくれています。

 私の(かたわ)らでは、母を亡くしてから、(ふさ)ぎ込むことの多かった(テジン)が、笑顔で皆と談笑しています。

 

 私の決断が間違いでは、なかったことに安堵(あんど)しています。

 そう、私には部族を守ると同時に、弟を立派な部族長に育てるという、役目があるのですから。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。