第五話 ペルシナ王国、王子シャルダン
ウインランド王国の王都に、鉄道という乗り物に運ばれて着いた。
道中は、驚きの連続であった。草原の中で、羊を追う生活しか知らなった俺にとって、ウインランド王国の人々の暮らしや、いろいろな建物、いや、道でさえ手を加えていることに驚きを禁じ得なかった。
砂漠を越え、ウインランド王国に入って、最初に目にしたのは、豊かな森だ。木々が青々と茂り、水が豊かな国なのだなと思った。
そして間もなく、大きな川を見ることができた。豊かな水量をたたえた川は、ゆったりと流れ、川の岸には、川の氾濫を防ぐための堤防が築かれていた。
いくつかの村々を過ぎて、ラスカル伯爵領の領都に着いたが、そこでは宿泊するのではなく、公衆浴場というところに連れて行かれた。
男女別ではあったが、こんな広い浴槽を見たのは初めてであった。石鹸というものを使うと、旅の汚れが驚くほど落ち、爽快な気分になった。
旅の垢を落とした後は、すぐに鉄道という乗り物に乗せられ、王都に向って出発した。
鉄道。馬がいなくても走るこの乗り物は、ウインランド王国中を、走っていると言っていた。
速さは馬車の5倍、しかも休憩を、しなくてもよいというのだから、遠くへ行くほど早く着くことになる。
食事や飲み物は、車内で済ませ、トイレだって、車両にあるのだ。
その列車がひっきりなしに、出発しているのだ。いったいどれくらいの人達と荷物を運んでいることやら、想像もつかない。
そして駅弁。車中で食べやすいように、小さい木の箱に、食事を詰めたものだが、ウインランド王国の文化が詰まっていると、言っても過言ではない。その駅弁が4食も出た。
最初の駅弁は、ほんのり甘い麦の飯に、甘辛い薄切りの牛肉と、薄味の甘じょっぱい野菜を煮たもの。
二つ目は、平たい小麦のパンに、油で揚げたというカツを挿んだサンドイッチと、芋のサラダを挿んだもの、葉野菜とハムという肉の燻製のサンドイッチの駅弁。
三つ目は、パスタという小麦で作った麺に、ひき肉のソースが掛かった駅弁。温野菜がついていた。
四つ目は、油で揚げたパンの中に、細かな肉や野菜を詰めてあるピロシキという駅弁。ついていた生に野菜には、マヨネーズというソースで、味付けがされていた。
どれも食べたことなどないが、美味いとしか言いようのない味だった。
ウインランド王国の王城に着いて、アレク国王にさっそく謁見した。
「陛下、宰相閣下、ペルシナ王国より、只今戻りました。無事、国交および通商を結ぶことができました。
また、こちらにおられますのは、シャルダン王子殿下とルビー王女様です。
お二人は、ペルシナ王国と我が国との友誼を深めるために、我が国へみえられました。」
「儂が国王のアレクじゃ。ようみえられた、シャルダン王子、ルビー王女。歓迎致す。」
「宰相のコウジといいます。よくお出でくださいました。
これまで、隣国でありながら、お互いの国のことを、ほとんど知らずにおりましたが、これからは、互いに助け合うような友誼を深めたいと思っています。
お二人には、我が国を見ていただくと共に、ペルシナ王国のことを教えていただきたいと思います。」
コウジ宰相。カルロ殿から聞いていたが、若い、年の頃は、俺と変わらない。
穏やかな笑みを讃え、聡明で誠実そうな方である。この方とは、是非とも親しくなりたいものだ。
「はい。そのつもりでおります。父へラーク王より、アレク国王に親書を預かってきました。こちらです。」
「ふむ、拝見しよう。なるほど、我が国との友誼を深めることに賛同いただけるとあるな。
お二人のことは、国賓として歓迎する。宰相とカルロ大使が世話をするので、何でも遠慮なく言うてくだされ。」
「はい、ありがとうございます。遠慮なく、この国を見せていただくので、よろしくお願いします。」
こうして、俺のウインランド王国見学ツアーが始まった。
宿泊先は、コウジ宰相の屋敷に決まり、俺とルビー、警備の者達20名がお世話になる。
宰相の屋敷では、宰相の奥方が迎えてくれた。
「シャルダン殿下、ルビー王女様、ようこそ。妻のレイネといいます。
お疲れでしょう、今日は屋敷でゆっくりお休みください。
サーガ警備隊長、警護の方々を宿舎にご案内してあげてください。」
「宰相の警備隊長のサーガです。警護の方ですが、2交代で殿下と姫様の警護についてください。我が国の警護も同数の者が当たります。宿舎へ案内後、半数の方は引き続き警護をお願いします。」




