表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/136

第七話 プランテーション大作戦

 ラナが、孤児院や育児院の施策を領主達と推めている頃、ハルクは内陸部のブラッド子爵領に向かい、テムジンとニーナは、海岸部のタイナ子爵領にいました。


「やっぱり主力産品にすべきなのは、オリーブよね。オリーブオイルは、植物油が足りないこの国には、欠かせないわ。」

「うん。でも、パイナップルやマンゴー、バナナにオレンジなんかの果物だって、他の地域では作れないし、いい特産品になると思うよ。」

「海岸部三領に、各々専門のプランテーションを作って、3つのプランテーションを併せた組合を作ろう。

 オリーブプランテーション組合とか、パイナップルプランテーション組合とかさ。」

「東部の漁業組合みたいにするわけね。」

「領主の皆さんに、各プランテーションに参加する人選を手配してもらおう。まず、そこから始めようか。

 ニーナには、オリーブとオレンジのプランテーションの指導を頼むよ。

 僕は、パイナップルとバナナ、マンゴーを

指導するよ。」

「わかったわ。三領の参加する人達をタイナ子爵領に集めましょう。ここのプランテーションで、育成を指導するほうが、効率がいいわ。」

 

「皆さん、今日から、オリーブの木と、オレンジの木の農業指導をするニーナといいます。

 どちらも実が成り、その実を食用としますが、オリーブの実からは、健康によい食用油が採れます。


 皆さん、私に付いて来てください。

 これがオリーブの木です。オリーブの木は、《()し木》、つまり、木の枝を地面に直接さして、育てることができます。

 ここのオリーブ畑には、大きなオリーブの木を移植しましたが、皆さんには、その木の枝を切って()し木をしてもらいます。

 そうやって、オリーブの木を増やしていく訳です。


 こちらにあるのが、オレンジの木です。

 オレンジの木は、挿し木ではなく、木の枝を他の生育した木の枝を切断し、同じく切断したオレンジの木の枝を継いで、苗木を育てる《接ぎ木》という方法を取ります。

 

 これが、実ったオリーブの実とオレンジの実です。オレンジは、生でそのまま食べられますが、オリーブは、生ではアクが強くて食べられませんので、水煮や塩漬けにします。今日は、両方用意しました。皆で試食して見てください。

「ああ、オレンジの実って、大きいのね。」「すごくみずみずしいわ。酸味があるけど甘くて、美味しいわっ。」

「オリーブの実は、梅の実に似とるな。」

「ああ、食用油が採れるというから、もっと脂っこい味かと思ったが、そうてもないぞ。」

「でも、独特の味だね。食べたことがない味で、なんと言えばいいか。」

「おい、オリーブの油は、オリーブの風味なのか、ほんのり甘味があって、こりゃいけるぜっ。」

 

「オリーブオイルは、生で野菜や肉や魚にかけて食べても、美味しいのよ。

 オリーブオイルに浸したまま、魚貝やお肉を熱して食べる《アヒージョ》という料理があるの。それは他の油ではできない料理よ。」


「とにかくすげーよ、オリーブもオレンジもよぉ。こりゃ、売れること間違いなしだぜっ。」

「そうね、素晴らしい作物だわ。」



 一方こちらは、バナナとパイナップルとマンゴーのプランテーション。

「バナナは皆さん知っていると思いますが、このバナナは、ブラッド子爵のグリーンさんが、品種改良したもので、野生のものより実が大きく甘いバナナです。

 このプランテーションでも、育てながらさらに品種改良を続け、美味しいバナナを作りましょう。」

「すげーなあ、このバナナを食ったら、野生のバナナなんて食えねぇぜっ。」

「ああ、まったく。これが同じバナナとは思えん。」

「品種改良って、できるだなあ。パイナップルやマンゴーも品種改良すれば、もっと美味しいものにできるんかなあ。」

「やろうぜっ、俺達で。俺達にしか作れない、美味しい果物をいっぱい作ろうぜっ。」



 ブラッド子爵領にやって来た俺は、グリーンさんとサトウキビ畑にする場所を探して、領内を見て回ってる。

「ここら辺りは、森から離れてるし、多少起伏がある土地だが、日当たりは良いし、サトウキビ畑にするには最高だなっ。」

「ああ、問題があるとすれば、日照りの時の水の確保だな。」

「グリーンさん、灌漑用水路の計画では、この辺りはどうなっているんだい?」

「うむ。川が一本もない東側のここら辺りは、川を造るしかないかなと思っているのだが、時間もかかるし、何よりこの領地では、人手が足りないから、悩んでいるよ。」

「コウジ(にい)に、話してみようぜっ。コウジ(にい)なら、なんとかしてくれるぜっ。」

「そうだな、ここは教官に頼るしかないな。」

「その教官て呼び方、コウジ(にい)は嫌いみたいだぜっ。ほかに呼び方ないのかよっ。」

「宰相閣下とでも呼ぶのか? もっと嫌がると思うぞっ。」

「違えねぇ、(にい)は偉い人って、呼ばれ方が大嫌いだからな。ほんとは、とんでもなく偉いのになあ。」

 「「あはははっ。」」



 コウジ(にい)に、グリーンさんが手紙を書き、領地の東部に川を引くための工事に人手が足りなくて、悩んでいると言ったところ、ダム湖の工事が周辺の部分が終わったところで、人手が余るから、そのまま人を送るとのことだった。

 でも、その数7万人。グリーンさんは、驚愕して、人夫の人々を受け入れるための準備に奔走してます。

『川を造るんじゃなくて、7万人もの人々の住むところを造るなんて、考えてもいなかったよっ。領地の全人口の3倍もあるんだよっ。 』

 なんか引きつってる顔が、妙に可笑しくて、吹き出してしまったけど、

『コウジ(にい)のやることだから、予想の範囲を超えてるのは、普通のことじゃね?』

 そう言って慰めたけど、慰めになってないみたい。


 人夫の人々が住む場所には、商売をする人々も集まり、マーレ半島随一の巨大な街ができた。

 後年、川の造成工事が終わっても、サトウキビなどのプランテーションで働く人々がいて、街は活況まま商業都市へと発展してゆく。


 (ハルク)とニーナとテムジンは、知らないところで、補佐官をもじったのか、《ハーベストの三銃士(三従士)》と呼ばれるようになってたのを、後で聞いて絶句したけど。

 コウジ(にい)には、なかなかいいネーミングだね。と言われてしまった。


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ