第四話 第二世代の反乱
ロッド宰相補佐官達との会談を終えたスフラン伯爵は、息子のカエサルを呼んで、今回の出来事を伝え意見を求めた。
「弟君のことは、知っていますが、穏やかな人柄ですから、今回のことはわざとですね。
たぶん、反発のある貴族を焚き付けるために、そう言ったのでしょう。」
「やはり、そう思うか。お前から聞いていた様子とは違うのでな。儂もわざと煽っているように思うたのだ。
しかしそうなると、危ういな。本気でロッド補佐官達を亡きものにしようとする輩が現れるとも限らぬ。
カエサル、農業学校の仲間達は信頼できるのだな?」
「ええ、俺達は、この国のいろんなことを話しましたが、皆、コウジ教官に感銘を受けていました。
ましてや、一緒に苦楽を共にした弟君を殺めようとする者などおりません。」
「よしわかったわい。お前は今日ことを密かに農業学校の仲間達に知らせよ。
そして、現領主達が馬鹿なことをせぬように、監視せよと伝えるのじゃ。」
「承知しました。俺も、父上のことを監視させていただきます。」
「はっはっはっ、それで良い。儂はお前達に期待しておる。」
「誰か、ビクトリー騎士団長を呼んで参れ。」
「はっ、直ちに。」
「ビクトリー、お呼びと伺い参りました。」
「うむ。ロッド補佐官達に護衛を付けろ。」
「それは通常の護衛とは別にということですな。」
「そうじゃ、暗殺を目論む者が出るやも知れぬ。
もしそうなれば、儂もこの家も終わりじゃ、心してかかれ。」
マーレ半島には、ひとつの伯爵家と、二つの子爵家、そして四つの男爵家がある。
皆、次期当主をハーベスト農業学校に留学させており、ロッド達との会談を終えたあと、ほとんどの家では、次期当主からロッド達との会談について、話し合いが行われたのだが、唯一ブラッド子爵家だけは、息子のグリーンを除外して重臣達5人だけで話し合いが行なわれた。
ブラッド子爵は、ワンマンな性格で、なんでも自分の思い通りにするので、家臣達も言いなりにならざるを得ないような有り様で、次期当主のグリーンは、その資格を得るためにハーベスト農業学校には行かされたが、未だ子爵家の政務には全く関与させてもらえない。
「まずいな、我が領の調査結果をそのまま出せは、恥をさらすようなものだ。」
「しかし閣下、貧民のための施設や資金は、国が全て負担するのでございましょう。我が領地としては、なにも損をすることはないかと。」
「馬鹿なことを申すな。貧しい者が他領より多いということは、儂の統治が悪いと見られるではないか。」
「そうだベルク、以前捕らえた盗賊共はどうしておる?」
「はあ、鉱山で働かせておりますがなにか?」「あ奴らに、補佐官どもの視察の際に、襲わせよ。
さすれば、盗賊共が暴れ回ることで、我が領が貧しい理由にもなり、小童どもを怯えさせることもできるわ。」
「しかし、そんなことをして、もし露見すれば大変なことになります。」
「バレなければ良いのだ、バレなければな。」
僕達は、会談の翌日から、視察を開始しました。
最初は、一番南のインダス男爵領から。
2日ないし3日で特産品のヒントや、領地の問題点をさがして行きました。
インダス男爵領は、南の海に面し、椰子の木が立ち並ぶ、風光明媚な海岸線が続く、まさに南国という景色の土地です。
果樹栽培は、天然の椰子と野生のパイナップルぐらいで、実も小さく、味もあまり美味しいとは言えない。
土地は、なだらかな丘陵地帯が続き、灌漑用水さえあれば、農地に開拓可能です。
領民は、多くない川辺の土地に小麦を植え、ネギなどの野菜をわずかに育てています。
漁業は、熱帯の魚であるため、小型で味も淡白であまり美味しいものではない。
この領地の問題点は、明らかに水資源の不足です。
インダス男爵領での3日目の視察を終えた夜、カエサルとグリーンが訪ねて来ました。
名目は、農業学校当時に約束した果物の改良成果を見せるということだったが、そうでないことはすぐにわかりました。
品種改良したバナナを説明しながら、グリーンの表情が暗いのです。
一通りの説明を終えたグリーンは、意を決したように話し始めました。
「弟君、恥を偲んで話すけど、父の様子がおかしいんだ。なにか企んでいる。
それは、間違いなく、弟君達を害することだと思う。」
「なぜそれを?」
「カエサルから、父の様子を監視するように言われたんだ。馬鹿なことをすれば、廃爵になるとね。
申し訳ないけど、俺は政務には関わらせてもらえなくて、なにを企んでるかまでは、探ることができないんだ。」
「わかったよ、グリーン。きみの立場もわかります。
だけどね、今回はそれでは済まないよ。ブラッド子爵家が廃爵されれば、きみの将来はなくなるのだからね。
グリーン、よく考えてくれ。ブラッド子爵家がなくなれば、きみだけでなく、多勢の家臣やその家族達が路頭に迷う。
きみが解決しなければ、ブラッド子爵家の内部で解決しなければ、廃爵になる。」
「どうすれば。俺はなにもちからがないんだ。」
「そんなことないわ。ブラッド子爵家を守る次期当主よ。
グリーンさん、家臣達に話しをして。
ブラッド子爵家を守るためには、どうすればいいか、家臣達の意見を聞いて。」
「わかったよ、ラナ。やってみる。」
それから一週間後、ブラッド子爵家をグリーンが継ぐという届けが王城に出されました。
理由は、ブラッド子爵の病気です。
でも、カエサルから聞いたところによると、ブラッド子爵達の政務の会議に、グリーンが乗り込み、子爵にブラッド家を潰すつもりかと、問い詰めたそうです。
子爵は、白を切ろうとしたが、家臣の全員がグリーンに事実を話したため、子爵は観念し家督をグリーンに譲ることに同意したそうです。
家臣の一人が、家督を譲らなければ、自分と一緒に子爵には死んでもらうと迫ったそうだ。
ブラッド子爵家のお家騒動として、処理されましたが、現当主の貴族達は、次期当主のちからを再認識したようです。
そうですね、皆、コウジ宰相の生徒なのですから。




