閑話七 サナとリミ
この国の法律は、大雑把でとても法治国家と呼べるような代物ではない。
だから、罪もない幼い子が虐げられるようなことが、放置されている。
俺は、アレク国王とランドル宰相に、明言した。ちゃんとした法律を作れと。一年以内に作れと。無理だと、叫ぶランドル宰相に、それができないなら、今すぐ宰相を辞めろと。
そして、アレク国王に言った。一年以内にできなければ、王家を倒し新しい国を治める仕組みに変えると。
俺がしたことを褒めることしかできない国王など、不要であると。
「そちが、その法律の案を作ってはもらえぬか?」
「いいですよ。俺の作る法律は、第一に王家の廃止ですから。すぐにも作りますよ。
そして、それは除外できません。」
国王は、仕方なく一年以内に法律を整備すると、約束した。
俺が偶然に出会った穢れとされていた《サナ》と《リミ》であるが、サナは5才、リミは3才の姉妹である。
サナがパンを買うために手放した母親の形見を、まず取り戻すために、商人を訪ねたが、白を切るので、代わりにお前の命を貰うことにするというと、そんなことをすれば、警備隊に捕まるというので、お前が死んでから、考えることにするよ。と言って、まず腕を切り落とした。なおも切ろうとすると、命乞いをし、サナから取り上げた母親の形見を返して寄こした。
そのあと、警備隊が駆けつけてきたが、俺が護国卿だと分かると、商人を睨みつけ、命を取られなかっただけ幸いだったなと言って、左腕を切り落としてしまった。
この国に、法律などないことを改めて認識した瞬間だった。
サナとリミだが、ハーベストに連れ帰り、孤児院へ連れて行ったのだが、孤児院の子供達にも心を開かず、話し掛けられても震えるばかりで、幼い頃から虐待を受けてきた心の傷の深さを思い知った。
俺は決心した。レイネに話し、許可をもらって二人を俺の妹として、引き取ることを。
ロッドも賛成してくれた。そればかりか、自分が二人の面倒を見ると、言ってくれた。
俺とレイネとロッドとサナとリミ。5人の生活が始まった。
レイネは、側に居ればサナとリミを抱いて離さず、次第に二人もレイネを母親のように慕うようになっている。
ロッドも何かと、外から帰ると、二人にお土産を買って来ては渡し、優しいお兄ちゃんぶりを発揮している。
俺は、そんな二人が、暗い表情を見せないか、見守り続けている。
寝るときは、四人で一緒のベッドに寝る。俺、サナ、リミ、レイネの順だ。レイネとは、話した。サナとリミが落ち着くまで、俺達に心を開き屈託ない子供に戻るまで、俺達の子供は作らないと。
そんな俺達には、心強い味方がいた。誰あろう、レイネの母、シモーネである。
彼女は、俺達5人が家族として、親密になるまで、遠巻きに二人には接していたが、のんびりとした穏やかな人柄に安心感を持つのか、リミが甘えるようになり、サナも次第に心を許すようになった。
シモーネは、二人にレイネが幼かった頃の話やおとぎ話を話して聞かせ、二人の心を落ち着かせてくれた。
時折、ハーベスト伯爵が紛れ込むのだか、何も喋らず黙ってサナを膝に抱いている。
サナも心地よいのか、伯爵の膝の上でうとうとしていることもある。
二人は、そんななか次第に、俺達に笑顔を見せるようになって行った。
二人が大人になって、俺達の元から巣立つまで、ずっと見守り続けてやろうと思う。




