第四話 ボルグくん、鉱山を探せ。
翌日俺とロッドは、ボルグ達の待つノルエー男爵領の街道の橋にやって来た。橋のたもとには、ボルグと二人の男が待っていた。
「コウジ教官、お待ちしてました。こちらは、地理に詳しい〘ドーラ〙さんと、土地の伝承などの物知りの〘カムイ〙爺さんです。」
「お爺さん、これから何日も山歩きすることになりますが、身体の方は大丈夫ですか?」
「わははっ、毎日山歩きしとるでな。お前さんらよりは、マシじゃよ。」
「そうですか、ではよろしくお願いしますね。」
「コウジ教官、どこから調べますか?」
「まず、この川の上流の、崖の地形を見て歩こう。あとは、川から離れたところにある崖かな。」
俺達はさっそく、川に沿って上流へ歩き始める。3時間程で、最初の崖にたどり着く。崖の地層を丹念に調べるが、ここは砂地の地層ばかりで、昔から川底だったようである。
2時間後、ふたつ目の崖。ここも探す地層は見つからない。
探索一日目は、7つの川沿いの崖を調べて終わった。
それから10日、川沿いの崖には、探す地層は見つからなかった。
「さて今度はどこを探すかだが。カムイ爺さん、土地に伝わる話で、何か変わった話はないかな?」
「どんな話じゃろな?」
「例えば、燃える石があったとか、珍しい石が見つかったとか。山火事があったとか。」
「ふーむ。そう言えば、魔火の森と呼ばれとる場所があってな、昔から雨が降ったあとで、火が上がることがあるそうじゃ。」
「それはどこですか? 行ってみましょう。」
魔火の森、そこは大木がまばらにあるが、あとは草地の斜面が入り組んだ地形の場所だった。
「コウジ教官、なぜこんなところに、火が熾きるんでしょうね?」
「もしかしてだが、俺が探してる鉱石がこの下に眠っていて、そのガスが漏れ出て、何かのひょうしに火がつき、燃えるのかも知れない。ボルグ、この辺りを何ヶ所か掘ってみよう。」
起伏のある森の地形、高く盛り上がっている箇所を掘り、より地層の深い層がある場所を掘り進めた。
「あった! 兄上ありましたっ、《石炭》(いしずみ)です。」俺より低い場所を掘っていたロッドの叫ぶ声に、皆が駆け寄る。
「これが、《石炭》(いしずみ)ですか。真っ黒な石ですね。」
「初めて見ましたなっ、黒く輝いておる。」
「炭よりは固いが、以外と脆い石だな。」
「ボルグ、火を熾せ。焚き火にこの石炭を入れて燃やしてみるんだ。」
焚き火が炎を上げて、燃え上がった中に、石炭の欠片を投げ入れる。しばらくすると、石炭が明々と燃え上がるのが見えた。
「石炭に間違いない。俺が探していたものだ。」
砕いた石炭を一袋ずつ持ち、掘り当てた場所に目印の十字架の杭を立て、その場所が判るようにした。
見晴らしの良い場所にも、矢印の杭を立てて、俺達は帰途についた。
ノルエー男爵領の領都、《トロイカ村》に戻った俺達は、石炭が見つかったことを知らせる。
「父上、教官が、コウジ教官が、石炭を見つけてくれました。」
「ボルグ落ち着け。石炭とは何なのだ?」
「燃える石ですよ、ノルエー男爵。炭のように加工しなくても、掘るだけで用意できますから、薪より効率の良い燃料になります。
石炭は、大昔の木や草が地中に埋まり、堆積したもので、地層に沿って大量にあるはずです。」
「なんと。燃料の問題が解決するな。」
「父上、それだけではありません。他領への商品として売り物になります。」
「それと男爵、川の上流で鉄鉱石らしきものを見つけました。調べて見ないと確定はできませんが。」
「あの岩がやけに固かった場所ですね?」
「そうだよ、ボルグ。さて、ロッド、お前はこの鉱石をボッシュに届けて、鉄鉱石かどうか調べてもらえ。」
「はい、わかりました。明日の列車で行ってきます。」
「男爵、鉱山の経験のある者は、いますか?」
「いや、ヒーロー子爵領には、鉱山がなかったので。」
「ロッド、追加だ。ボッシュに頼んで、鉱山の技師を派遣してもらってくれ。できれば、一緒に連れて来い。」
「兄上、任せてください。ボッシュさんなら、必ず手配してくれると思います。」
「コウジ卿、そうと決まれば、鉱夫の手配ですな。すぐに取りかかります。」
5日後、ロッドは、ボッシュほか、5人の鍛冶ギルドの面々を連れて、戻って来た。
調べてもらった鉱石は、やはり鉄鉱石だった。それを見たボッシュは、自分が行ってハーベスト領に出荷するように手配すると、意気込んで来たらしい。
ボッシュ達の指導で、炭鉱と鉄鉱の鉱山開発が始まった。
これで、ヒーロー男爵領も発展するだろう。




