第三話 スカンジナ地方振興計画
杜のくまさん鉄道に乗って、王都から11時間、ヒーロー男爵領の領都〘オスロ村〙にようやくたどり着いた。
駅に降り立つと、懐かしい顔ぶれが見えた。ヒーロー男爵領のウルト、ノルエー男爵領のボルグ、フィンレー男爵領のルイーズ。皆、昨年秋までハーベスト農業学校に来ていた生徒達だ。
もちろん、三人の男爵達、各家の重臣達、それに護衛達を含めると、総勢40人近い人達が待ち受けていた。
「コウジ卿、遥々お出でいただき、恐縮です。ウルトの父のセダン·ヒーローです。」
「初めてお目にかかります。ボルグの父のダビデ·ノルエーです。」
「農業学校では娘が、大変お世話になりました。ルイーズの父のヨハン·フィンレーです。」
「皆さん初めまして、コウジです。お出迎えありがとうございます。」
「妻のレイネです。ウルトさん達に会えるのを楽しみにしてきました。」
「コウジ卿、レイネ様、長旅でお疲れでしょう。今夜は宿でゆっくりお休みください。」
「ありがとうございます、ヒーロー男爵。そうさせていただきます。」
俺達は、ヒーロー男爵の案内で村の宿へと向かった。宿は駅から歩いてすぐのところにあり、夕食を生徒三人とその父親達と一緒に取ることになった。
宿で用意された夕食は、
地元で採れた山菜尽くしだった。山菜入りのライ麦パンに、山菜の煮しめ、山菜の天ぷら、山菜の漬物。
「この天ぷらという料理は、いいですなあ。ウルト達が、ハーベスト領で覚えて来て、広めたのですが、何の食材でも合う。」
「ヒーロー男爵、天ぷらの油はどうしているのですか?」
「コウジ教官、鉄道が開通したおかげで、南方地域から、廉価なオリーブオイルが流通するようになったんですよ。」
「教官、私のフィンレー領でも大流行ですわ。おかげで、私は料理上手に思われてますの。うふふ。」
「あら、ルイーズさんは、砂糖と塩を間違えて、あま〜いポテトフライを作らなかったかしら。うふっ。」
「あ〜ん、レイネ教官。それは秘密ですぅ。」
『『『ハッハッハ。』』』
「ボルグさんのノルエー領は、何か特産物はありますか?」
「教官、うちの領地は、スカンジナ三領でも一番の山間地域で、耕地も狭く(せまく)、山の木々を活用して、製材や炭焼きも考えましたが、炭は暖炉には不向きで、どうしようか迷ってます。」
「山の探査は終わったのですか?」
「いえ、まだほとんどが手つかずです。」
「俺の考えは、明日皆の前で話すよ。その上で、何ができるか考えよう。」
翌日、宿の広間には、三男爵家の当主、跡継ぎ、重臣が各家5名、俺達も入れて総勢25名の施策検討会が開かれた。
「皆さん、多忙なところをお集まりいただきありがとうございます。ウルトさんから、手紙を貰い、スカンジナ地方の皆さんが、領地の開発に大変苦慮されていると聞いて、何かお手伝いできないかと、参りました。」
「コウジ卿、皆を代表してお礼を言わせてください。私達のために、わざわざ遠路遥々(はるばる)お出でくださり、心から感謝致します。
もう、それだけで、私達は開拓の勇気をいただきました。ありがとうございます。」
「あははっ。来たからには、何かお役に立たなければ、農業学校校長の名がすたるというものですよ。
まず、皆さんのこれまでの取組みと、その結果について伺わせていただきたい。」
ヒーロー男爵家からは、農作物の取組みとその結果。ノルエー男爵家からは、製材や炭焼きの取組みと結果。フィンレー男爵家からは、ライ麦の加工食品の取組みと結果について報告がなされた。
「ライ麦パンを蒸して作ることで、やわらかいパンを作ることができましたが、手間がかかり大量に作るには、時間がかかってしまうんです。」
ルイーズさんの話にもあるとおり、結果は、一長一短というところのようだ。
俺は考えてきたことを話すことにした。
「皆さんも考えたとおり、この地域の発展のためには、この地域の特産品を作ることが、必要です。
そこで、今から言うことを試してください。
ヒーロー男爵家。ジャガイモ、甜菜、トマト、トウキビ、かぼちゃ、スイカ、りんご、それに小麦の早生種の栽培。
〘種子や種芋は、ハーベスト領から持ち込んだものだ。〙
ノルエー男爵家。キノコ、もやしの栽培。鉱山の調査。
〘キノコ舎は、パネル工法でプレハブの建物を作るよう指示し、椎茸、シメジ、なめ茸、舞茸、エリンギなどを各々の種類の原木に、キノコの菌のついた種駒を打ち込んで栽培する。日光を遮断した暗がりのキノコ舎を利用し、もやしも栽培する。〙
フィンレー男爵家。乳牛の飼育、チーズ、バター、クリームの試作。
酪農のための牛は、まもなく鉄道で到着します。受け入れの準備をお願いします。
〘酪農の手配は、ハーベスト領でやっているから、レイネ達にお任せだ。〙
各々の方法については、お配りする冊子に書きましたので、読んで質問があれば聞きに来てください。
それからボルグさんは、明日から俺と山歩きです。何人か地理に詳しい人を連れて来てください。以上です。」




