12 ネイギーは諦めない
暗く、埃っぽい空間だ。
月夜に映し出されたその廃工場を、
金属音が苛立ち紛れに突き進む。
「やあやあ、おかえり」
玉座に座るネイギーは極めて穏やかに
彼女を迎えた。
「あのタイミングでの
撤退命令が納得いかないようだね」
「……申し訳ございません。
もしよろしければ、
理由をご説明ください」
「かまわないよ。
もしあの時君が詰めに入っても、死すら決意したあの下層人がエナジー体を解放してドラゴンに変身、そんなことも予想できない君はジ・エンド。
あ、僕は大事な従者を失うんだなぁ
と思っただけさ」
「……!!」
ラブラは自らの認識の甘さに気付き、
無言で悔いた。
「ああ、いいんだよ別に、
気にしなくても。
締めのあの状況を造ってくれるなんて、
君はよくやってくれた。見たまえ」
パチリとネイギーは指を鳴らす。
玉座の真後ろの空間が湾曲し、
スクリーンに変わった。
全力の一撃が発射された瞬間だ。
「うわぉ。何度見てもすさまじいねぇ。
やっぱりあの捜査官は普通じゃない。
なまじブースデットマンってわけじゃないね、まったく。この場合はガールかな?」
その電撃が下層人の少年を直撃……だが、四方に分散し、その周囲にいたゴーレムを巻きこんで光に満たされる。
「ご覧よこれを。
あの下層人は僕の兵隊になにか仕込んだみたいだけど、その条件とあのちんけなバリアでこいつが防ぎきれると思うかい?」
「いえ。不可能です」
「そうだろう、そうだろう?
ならあの少年は
何故黒こげにならない?」
「……エナジー体のなせる技、
でしょうか?」
「正解さ! 大正解だよ!!」
ネイギーは興奮気味に言った。
「ああ、すばらしいとおもわないか?
この強力な力が、
手を伸ばせば届く場所にあるんだよ!
それさえあれば、
……僕の研究は無限に広がる。
必ず手に入れてみせるぞ!
ふふふ……、必ずだ!」




