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11 おにいちゃんは、 ちゃんと恋慕のおにいちゃんだよ

 敦の策は次のようなものだった。



 まず、敦の腕力ではまともにかち合ってもゴーレムは倒せないことは前提だ。だが相手の動きは単調で、武器を用いれば対抗できないほどではないと読んでいた。



 敦はそれをアパルに確認し、バールを用いて、ひたすら相手を叩き壊し続ける。



 アパルはバリアでカバーだ。



 しかしそれだけでは再生された挙げ句、数に圧されてしまう。


 そこで再生していくゴーレムの身体に、

 アパルと共同でアーク溶接棒などの尖った金属片を飲み込ませていく。



 最後の仕上げは恋慕の電撃だ。



 魔術的な要素による目標の設定がされていないのであれば、それが電気である以上、

 性質からより通電しやすい場所を探して走るはずだ。



 アパルの口ぶりから弾数に限りがあるのはわかっていたため、一撃必殺を目指すために全力で発射させる。もちろん敦とアパルもバリアで身構えてはいたが、稲妻は金属片を飲み込んだゴーレムを貫き、

 結果全滅してしまったというわけだ。

 視力を奪われていたのは予想外だったが、作戦通りにうまくいった。





 もっとも敦は、正面からドッカンと雷をぶち込まれるのがあれほど恐ろしい行為だとは思いもしなかったのだが。





 ちょっとちびった。もう二度とやらない。




「うぅ……ん」




 自宅のベッドに寝かせた恋慕が目覚めたのは夜になってからだった。

 やっと気付いてくれた。側に付き添っていた敦は、ほっと胸をなで下ろした。

 気絶した人の世話などしたこと無いため、このまま起きないのではないのかとヒヤヒヤしていたのだ。



 恋慕は虚ろな顔で周囲を確認すると、

 敦を見定めて微笑んだ。



「どう? 体だいじょうぶ?」


 敦が問いかけると、

「うん。ちょっとふらふらするけど。

 ……すぐ治るから」


 そう気丈に答えて体を起こす。



「アパルは?」

「ちょっと調べ物に上層界に帰った。

 もう少し寝てないでいいの?」

「大丈夫よ」

 異常がないことをアピールしたいのか、

 恋慕はあの可愛らしい笑顔を向けてきた。



 ……だがそれがしゅんっと曇ってしまう。




「ごめんね……

 私、おにいちゃんを

 護らなきゃいけないのに……。

 怖い思いさせっちゃった」


 敦は首を大きく左右に振った。



「いや、謝らないといけないのは僕だ。

 僕のために体を消耗してるんだってね」

「アパルね。口止めしといたのに」

「……僕はさ、君の気持ち、

 ちょっと疑ってたんだ。

 おもちゃにされてるんじゃないかなって」

「あはは……」

 恋慕は困ったような笑みを浮かべた。

「でも、君は僕に

 全てをかけてくれてたんだ。

 ごめん。

 僕はそれすらわからないでいたんだ。

 おにいちゃん失格だよ」



「そんなことないよ。

 あの時、おにいちゃんが『信じろ』って叫んだ時、すごく安心した。

 おにいちゃんは、

 ちゃんと恋慕のおにいちゃんだよ」




 恋慕が真っ直ぐな瞳を向けてくる。


 経験なんか無くったってわかる、

 想いの籠もった熱い視線だった。

「あの時のおにいちゃん……、

 すごく、かっこよかった」

 頬を染めていわれると、

 気恥ずかしくなる。

 少しは『強くて、かっこよくて、優しいおにいちゃん』に近づけたのだろうか?



「……恋慕」



 聞いてみたかったが、野暮な気がして、

 敦は代わりに名前を呼んでみた。



 空気を伝って、

 二人の心臓の音が重なる。

 信頼し合った男女の鼓動が、

 徐々に徐々にリズムを高めていく。




 敦は恋慕の桜色に染まった唇に――、





















「チェアー」


 えーーーーーーーーっ?



 がっくりと膝をつき、

 腕が上半身を支えてスタンバイOK。



「ちょ、え、嘘!?」

「おにいちゃん……っ、大好き……っ」

 熱にうなされたような湿り気のある声。

 恋慕は愛おしい兄の頭を、

 それはそれはやさしく撫でた。




 ……足裏で。




「こ、これ違うだろっ!

 絶対違うだろこれ!?

 おかしいってこんなの絶対おかしいよ!

 ……うわなにそれ、

 またそんな形容しがたい何かをぉ、

 ぎゃああああああああああああッ!!」


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