蓮、ゴメン
古着屋の店長は売った古着を着る人を操ることが出来る。そうとは知らず高三の詩は古着屋で買ったコートを着て、受験と恋愛に奮闘するロマンタジー。第7話、蓮、ゴメン
みんなでクレープを食べた後、湊と蓮は二人で行くところあるからと言って、二人でどこかへ行ってしまった。残されたあたしと凛は二人で帰ることになった。クレープ食べてたときも暗い気持ちだったし、二人があたしたちを置いて出かけたことでさらに悲しくて、凛と話す気もなかった。
電車に乗ると凛が妙なことを言い出した。
「ねぇ、詩。蓮は誰が好きだと思う?」
「えー、分かんないよ」
「ほんと、あんたは鈍感ね。今日、蓮が詩と似たようなコート買って、うれしそうだったと思わない?」
「うれしそうだったね。気に入ったんだよ、きっと」
「ほんとにそれだけと思ってるの?クレープ食べながら、蓮が詩のこといろいろ聞いてきたけど、あんた、ずっと上の空だったよね。蓮、かわいそうだったよ」
「え、何言ってるの?意味わかんない」とどうでもいいと思って答えた。
それでも、凛があたしの顔を覗き込んできた。
「蓮は詩のこと好きなんだよ。わたしの勘」
「そんなことないって。蓮はコート気に入っただけだし、いつもみんなに話しかけて、場を盛り上げるのが好きなだけだって」
「あ、そ。じゃぁ、詩は誰のこと好き?」
「今は特にいないよ」と答えた。あたしが湊のこと好きなことは絶対に凛に教えない。
「ふーん、ほんとかな?」
「ほんとだって、今は受験勉強頑張って、大学入ったら彼氏つくるんだ」
「わかったよ、でも、もっと蓮に優しくしてあげなよ」
「えっ、普通に優しくしてるよ」
凛が珍しくあたしに絡んでくる。あたしは蓮も湊も同じように話している。どちらかと言うと湊のほうが緊張してうまく話せないのだけれど。
凛がこんな話するからあたしも聞いてみた。
「そう言う凛は誰が好きなの?蓮とラインしてたなんて、あたしびっくりだったよ。実は凛が蓮のこと好きだったりして?だから、蓮は誰が好きかって気になるんでしよ!」
「蓮はラインで、詩のことばかり聞くんだよ」
「凛は蓮があたしのこと好きだって言いたいの?そんなことないって。もし、そうだったら、あたし、気づくって」
「あー、話がこんがらがってきた。もう、この話は終了」とこの話を切り出した凛が言った。
次の日、塾に行くと彩葉、湊と蓮がいつもの席に座っていた。蓮は昨日のコートを着てきていて、コートを脱いで椅子の背もたれにかけている。蓮の隣に座り、あたしもコートを背もたれにかけた。なんだかあたしと蓮がお揃いのコート着てるみたいだ。
「昨日は楽しかったね」と蓮に言うと蓮が頷いて、
「あそこの店長さん、いい人だったよね。あ、凛、写真ありがとうね」
後ろに座っている凛に言った。
「受験終わったらまた行きたいね」と凛が言った。湊と行ければいいなと思った。
授業が終わると、じゃあねと三人が教室を出ていった。あー湊と帰るチャンスが!と思ったが、あたしと凛だけが教室に残された。しかたなく、凛と二人で教室を出ていく。凛がピザまん行くと誘ってきたがちょっと食欲ないから帰ると言って、凛とも別れた。湊が帰り道にあたしを追い越すときに話せればと期待して。
湊と蓮、彩葉で塾を出て、駅の方へ歩くと蓮が、
「あ、ちょっと俺、詩と話してくるから」と言って、塾の方に引き返していった。湊と彩葉は何かを察し、二人でしょうがないなという顔をして、歩き出した。蓮が見えなくなったところで彩葉は湊と腕を組んだ。
「原宿の帰り二人になったとき、蓮に言ったんだ。早く告白しろって。詩と似たようなコート買ったり、クレープ食べながらずっと歌に話しかけてたんだよ。あいつ」
「うまくいくかな?ちょっと心配」と言いながら、彩葉はそんなことどうでもいいという顔をして、腕を組んでいる湊の匂いを嗅いだ。湊は詩が湊のことを好きだということに気づいてないんだと彩葉は思った。湊は私のことしか見てないと確信した。
後ろから駆け足の音がすると思ったら、まただ、体が前に進まない。例の金縛りだ。
「詩、ちょっと待って」
あ、蓮の声だ。湊じゃない。蓮が横に来ると、体が前に動きだし、横に並んで歩いた。
「昨日は楽しかったね。俺、このコート気に入った」
「似合ってると思うよ」
「ねぇ、詩って彼氏いるの?」
「えっ、いないよ」蓮何言ってるの?
少しの沈黙のあと、
「そっか、そっか。あのさ、詩、俺と付き合わない?」
えっ、嘘。俺と付き合わないって、どういう意味?あたしのこと好きってこと?えっ、凛が言う通りなの?
蓮、ごめん。でもあたしは湊が好き。だから、蓮の気持ちには答えられない。なんでもっと早く蓮の気持ちに気づいてあげられなかったのだろう。一緒に古着屋さん行った時に戻れたらいいのに。そうすればもしかして蓮の好きなところ見つけていたかもしれない。待って、待って。なんて答えたらいいの?
あ、まただ。誰かがあたしの右手を蓮の腕の方に引っ張る。あたしの右手が蓮の左腕に伸び、えっ、腕に触れた。蓮がびっくりした顔してる。どうしよう!何か言わなくちゃ。
「あ、あのね、あのね、蓮」と時間稼ぎをした。なんであたしが腕に触れながら?と思いながら、そうだ。
「蓮、受験終わるまで待って。受験終わったらちゃんと答える」
おー、我ながらうまくはぐらかせたと思った。
「だから、それまで仲良く勉強しようよ」
「そうか、そうだよね。じゃあ、受験終わったらコート着て、また、一緒に古着屋さんに買い物行こうか?」
「うん、いいよ」
やば、心にもないこと言ってしまった。すると、ふと腕組んだ手が離れた。
「蓮、第一志望は?」
「青学か中央。詩は?」
「青学」
「そっか、青学一緒に行けたらいいね」
「うん」
「じゃ、帰るわ。ごめんね。驚かせて」
「ううん」
蓮が駅に向かって歩き出した。
立ち止まって、彼の後ろ姿をずっと見ていた。彼が角を曲がるとき触り返って手を振った。あたしも手を振った。湊を好きなあたしが蓮に思わせぶりな態度をしたために、すごい罪悪感を感じる。けれど、蓮に俺と付き合わないって言ってくれて、うれしかった。蓮、ありがとう。そう言えばあたし、男の子に告白されたの生まれて初めてだ。湊ばかり見ていたから、隣の蓮のこと何も気にしてなかったことに気づいた。あたしが湊のこと好きだって知っている人は誰もいない。あたしは蓮のこと好きなんだっけ?あれ?あたし、何考えているんだろう?
「よし、うまくいった」と店長は喜んだ。お店で見た時も、詩ちゃんと蓮くんはお似合いだと思った。詩ちゃんを足止めしたり、腕組むように仕向けたけど、最後は詩ちゃんが受験終わるまで待ってて伝えたのだから、余計なお世話は不要だったかもなと少しばかり反省したのだった。店長はこの二人はうまくいくと信じている。あとは受験の結果次第だ。二人とも青学に合格するのだろうなと楽観的に思った。
読んでいただき、ありがとうございます。毎週火曜日に続編を投稿する予定です。
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