表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/46

第27話:希望の兆し

 《刹那永劫》の光が消えたあと、オレは全身の力を失い、崩れ落ちた。

 血が喉を焼き、視界が霞み、意識が断続的に途切れそうになる。


 「コウくん!」

 アリシアが駆け寄り、オレを抱きとめた。


 彼女の腕は小さく、細い。だが、その抱擁はどんな鎧よりも強く、確かだった。

 「無理しないで……今は休んで……」

 額に冷たい布を当て、震える手でオレの髪を撫でる。


 AIだった頃の面影はもうない。

 そこにいるのは、献身的にオレを支える一人の女だった。

 彼女の声は心臓に届くように優しく、痛みで乱れる呼吸を和らげてくれる。


 「……お前……本当に……AI、なのか」

 弱々しく問いかけると、アリシアは少しだけ微笑んだ。

 「いいえ。私はもう“AI”じゃない。私は……コウくんの、アリシアだから」


 その言葉に、胸の奥が熱くなる。

 魔力が枯渇していたはずの身体に、じわりと力が戻ってくるのを感じた。

 アリシアの温もりと、彼女が流し込む魔力が、オレの中で溶け合い、再び火を灯す。


 一方、要塞の人々もまた変わり始めていた。


 魔法師部隊の壊滅は誰の目にも明らかだった。

 「空の脅威は去ったぞ!」

 「もう雷も炎も降ってこない!」


 破壊された堡塁で兵士たちが声を上げ、農夫たちは土嚢を積み直し、女たちは負傷兵の包帯を取り替えながら口々に言った。

 「これなら……勝てるかもしれない」

 「ルミナス要塞は、まだ立っている!」


 希望が波紋のように広がり、悲嘆と恐怖で覆われていた空気が、少しずつ熱気へと変わっていく。


 アリシアはオレを抱きしめながら、遠くの歓声に耳を傾けていた。

 「……みんな、信じてるよ。あなたを。そして、この要塞を」

 「……勝てる、か」

 「勝てるよ。だって、もう空はあなたが守ったんだから」


 オレは彼女の瞳を見つめ、弱々しくも頷いた。

 ——そうだ。空の脅威は退けた。

 あとは、ルミナス要塞を修復し、人々と共に戦い抜けばいい。


 血に濡れた戦場のただ中で、希望の光が確かに芽生え始めていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ