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幕間4:カルドミア王国・情報将校

 緑深き森と大河の国、カルドミア王国。

 北には砂漠を越えた交易路、南には豊饒なジャングルを抱え、千年の文化を誇る独立独歩の国家。

 その国境監視所に立つ情報将校 サリム・ハダール は、空を覆った白光を目にして息を呑んだ。


 「……消えた……」


 双眼鏡の中で、数百のムナリス魔法師が、光の奔流に呑まれ、跡形もなく消え去った。

 忠誠と誇りを武器に大陸を畏怖させてきた精鋭が、一瞬にして無に帰したのだ。


 サリムは長くムナリスとの国境で任務に就いてきた。

 しばしば小規模な衝突があり、民を奪い合い、砦を焼き払うこともあった。

 だが常に決定的な戦争には踏み切れなかった。

 理由はただ一つ——ムナリスの魔法師部隊の存在だった。


 それが、今この瞬間に失われた。


 「……好機だ」

 サリムの声は冷酷だった。


 カルドミアの王と評議会は、この報告を聞けば必ず動く。

 「ムナリスの威光は地に堕ちた。国境を越え、奪われた土地を取り戻す時だ」

 功利主義的な算段が頭の中で目まぐるしく回り始める。


 しかし同時に、サリムの胸に重くのしかかるものもあった。

 ——中央平野。


 つい先日まで「寄せ集めの辺境民」としか見ていなかった勢力が、いまや神殺しの力を現実に示した。

 「……あれは侮れぬ。むしろ、敵に回せばムナリス以上の脅威となる」


 サリムは記録帳に震える字で書き込んだ。


 《中央平野の指導者コウヤ、ラグナを纏い領域展開を確認。

  破壊力はムナリス魔法師部隊を凌駕。

  以後、中央平野は大国と同等の脅威として扱うべき。

  ムナリスの弱体化を受け、ただちに実力行使の検討を要す。

  ただし、中央平野を味方に引き入れる余地があれば、それを最優先とすべし》


 サリムは水晶の双眼鏡を閉じ、深く息を吐いた。

 「……歴史が動いた」


 長年、ムナリスとの国境を見張り続けてきた彼は直感していた。

 この光景は単なる一戦の勝敗ではない。

 大陸の秩序そのものが、今まさに書き換えられたのだ。


 そしてカルドミアは選ばねばならない。

 「敵になるか、同盟者になるか」——その決断が、未来を決めるのだ。


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