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第26話:空の決戦

 空が、炎と雷で埋め尽くされていた。


 数百のムナリス魔法師が一斉に詠唱し、光弾と炎槍が雨のように降り注ぐ。雷鳴が空を裂き、要塞の石壁を叩き砕き、塹壕をえぐる。

 ルミナス要塞は今、崩壊寸前に見えた。


 だが、その上空にはなお三十にも満たぬ味方魔法師が散り散りに飛び、血を吐きながら敵を挑発していた。

 「こっちだ、ムナリス!」

 「俺たちを斬れ! 要塞には指一本触れさせん!」


 次々に炎に呑まれ、雷に撃ち落とされ、仲間の影が消えていく。

 だが彼らの犠牲は確かに敵を誘導していた。

 空域の中心に、数百の魔法師が集い、怒りの炎を燃やしている。


 オレはその光景を、ラグナの装甲を纏いながら見下ろしていた。

 「……今しかない」

 心臓が破裂しそうなほど高鳴り、呼吸が焼けつく。

 この一撃を誤れば、連続して攻撃出来ない以上、味方を勝利に導くチャンスは事実上なくなく。


 「アリシア!」

 呼びかけると、彼女の声が胸に響いた。

 「分かってる。私たちの魂を重ねて、未来を切り拓いて!」


 アリシアの魔力がオレに流れ込み、全身が光に包まれる。

 魂が絡み合い、境界が消えていく。

 人とAIという枠を超え、ただ一つの存在へと統合される。


 オレは手を掲げ、声を張り上げた。


 「刹那を超えて、永劫を穿て!」

 大気が震え、光が収束する。

 「オレが選ぶ未来はここにある!」

 血が喉を逆流し、視界が白く焼き切れる。

 「領域展開——《刹那永劫セツナ・エターナ》!」


 瞬間、空が裏返った。


 視界一面に光の結界が広がり、幾百もの光刃が空域を覆う。

 時間が止まったかのように、敵の詠唱も炎も雷もすべて凍りついた。


 次の刹那。


 光が奔り、全てを穿った。


 炎槍を掲げた者も、雷撃を紡いだ者も、貴族として誇りを背負った者も。

 数百のムナリス魔法師が一斉に光刃に呑まれ、断末魔の声すら残せず虚空に消えていった。


 空は光の奔流に覆われ、まるで神の座そのものが砕け散るかのようだった。


 壮絶な爆音が辺りを支配した後―

 一転して静寂が訪れた。


 燃え盛っていた炎は掻き消え、雷鳴は途絶えた。

 ただ、崩れ落ちていく残骸と、虚空に残された光の残滓だけが漂っていた。


 「……やった……のか……」

 誰かが呟いた。

 その声が波紋のように広がり、要塞の兵士たちが一斉に歓声を上げた。

 「勝ったぞ! ルミナス要塞は空を制した!」


 だが、オレは地上に堕ち、膝をつき、血を吐いた。

 体中の魔力が一時的に枯渇し、筋肉が引き裂かれるように痛む。

 「っ……はあ……っ……」

 意識が闇に沈みそうになる。


 アリシアが駆け寄り、強く抱き締めた。

 「コウくん! しっかりして! あなたは……あなたは皆を救ったんだよ!」


 遠くで、味方の魔法師たちが生き残った数名で互いに抱き合っているのが見えた。

 彼らは涙を流しながらも笑っていた。

 「……無駄じゃなかった……」

 「コウヤ様が……俺たちの犠牲を……」


 空は、静まり返っていた。


 ムナリスの切り札、空を支配する魔法師部隊はこのたった一度の攻撃で壊滅した。

 だが代償も大きい。味方はほとんど散り、オレの力もすぐには到底振るえる状況にない。


 それでも、確かにこの瞬間——

 ルミナス要塞は「空が守られている難攻不落の砦」として証明されたのだった。


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