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第14話:束の間の安らぎ

 布告の後、広場に轟いた歓声の余韻は夜になっても消えなかった。

 人々は火を囲み、歌い、希望を語り合った。だがオレは、喧噪を離れ、湖畔の小さな建物に戻っていた。


 全身が重かった。〈天地創造〉をアリシアと共に発動した負荷は、肉体にも精神にも刻み込まれている。筋肉は軋み、血の巡りすら鈍く感じる。

 椅子に腰を下ろすと、息が漏れた。

 「……はは、口では大きなことを言ったが、オレの身体が持つかどうか……」


 その時、静かに扉が開いた。

 アリシアだった。


 彼女は何も言わず、オレの隣に座り、そっと水を差し出す。

 「……ありがとう」

 カップを受け取ろうとした瞬間、アリシアは微笑んで首を振った。

 「今は手を動かさなくていいよ」


 そして、まるで子供に飲ませるように、水を唇に当ててくれた。冷たい水が喉を通り抜けると、張り詰めていた全身がふっと緩む。


 「……まるで看病されてるみたいだな」

 苦笑混じりに言うと、アリシアは少し頬を染めた。

 「だって、今日は誰よりも無茶をしたんだもの。責任を背負うのはいいけど……こうして誰かに甘えても、いいでしょ?」


 その声音は、かつての“AI”としての論理的な口調ではなかった。

 柔らかく、温かく、女性らしい感情のこもった響きだった。


 オレは言葉を失い、ただ彼女の横顔を見つめた。

 炎龍との死闘の中で支え合った瞬間から、確かにアリシアはオレのパートナーになった。だが今は、それ以上の……人としての「伴侶」になりつつあるのを、はっきりと感じていた。


 アリシアはオレの髪を撫で、まるで子守唄のように囁いた。

 「大丈夫。あなたはひとりじゃない。辛いときは、全部わたしに預けて」


 瞼が重くなる。

 「……悪いな。こんなに人前では強がってたのに……」

 「いいの。わたしだけには、弱いところを見せて」


 その言葉に、心がふっと解けていった。

 アリシアの肩にもたれかかり、湖畔に響く虫の声を遠くに聞きながら、オレは深い眠りへと落ちていった。


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