温故知新
目の前の今起きている現象の方へと意識が逸れ、迫りくる雪崩に向かって指を刺し
「どうやってるの!?なんで雪がこないの?どうして私達、無事なの!?」
少女は目を大きく開き瞳を輝かせながら今の状況を解かっていても好奇心を止めることが出来なかった。目の前で消えていく自分達を飲み込もうとする雪の大洪水について何度も何度も指を刺して質問するが甲冑の人物は何も返答してくれなかった。
少女は目の前で起きている不思議な現象が気になって仕方なかったのだが、何度呼びかけても何一つ反応が返ってこない為、もう返事が返ってこないのだと悟り
その事については諦め
「ねぇ!?これって鎧、だよね?鎧って金属だよね?ここって寒い、よね?私、おかしくないよね?どうして、鎧が暖かいの!?」
次の湧き上がる好奇心を叩きつけるように何度も何度も甲冑を手のひらで叩いた。
少女の頭に中にある疑問、こんな寒い世界なのに金属が冷たくならないことについて何度も質問を投げかけ続けるのだが…返事が返ってくる様子はなかった。
呼びかけ続けている間も少女は、触れている感触を何度も確かめるように触り続け蹴れば続けるほど、少女を守るように抱き寄せられ触れる箇所すべてが金属であるはずなのに冷たくなかったことについて不思議が湧き上がってきて仕方がなかった。
無知であれば何も気にしないだろう、だが、少女には最低限の知識がある、故に、好奇心が膨れ上がってしまうのだ、何故なら、街での注意だけではなく少女はこの山に来て身をもってこの寒さを体験した、肌で感じ知識としても知ったからこそ、目の前にある事実が信じられない。
極寒の大地で金属に触れると言うことが、どれだけ危険なのか知っているからこそ、少女はこの疑問が頭から離れていくことがなかった。
少女が街を出て山へ向かう前に、少女が装備を点検している際に街の人から教えられたことがある、辺り一面、雪の世界、吐く息は白くなる場所に到着したのであれば、地面を掘るために用意したスコップを絶対に!直に!触れてはいけない!と強く教えられていた。
雪山では金属は想像以上に冷たくなるというのを念を押されるように教えられていた。
そして、少女はそれを確かめようと、山に来て周りが白く染まった場所に到着すると直ぐに持ってきた金属に触れて少女が思っていた以上に冷たくなっているのを身をもって体験していた。
だからこそ、少女はこの疑問が消えてなくなろうとしなかった。
今この瞬間、少女は金属に触れているのに、少女が持つ体の熱が金属へと吸われることが無かったからだ。
いや ───寧ろ ───
その逆だった、金属の方から熱が自分の体へと伝わってきているかのようだった。
少女に伝わってきたその熱を感じていると少女はふとその脳裏に思い浮かんだ、その温もりはまるで、お日様の下にでもいるみたいだと…
自身の体に流れてくる熱、温もりによって少女は錯覚を起こしてしまいそうな程だった、ここが雪山なのではないのだと…そんな錯覚をしてしまいかねないほどに触れている金属が暖かいという事実に少女は…不思議で不可思議で、自分の中にある常識が崩れていくのが楽しくて仕方がなかった
っが!故に!好奇心の行動は止まることが無かった!守ってもらっているのにもかかわらず!!
「ねぇ!ねぇ!ねぇったらねーえ!!ぜったい!聞こえてるよね!?音凄くても、きこえてるよね!!ねぇ、返事してよぉ…ぇー、聞こえてないのかなぁ?それとも、私、ちゃんと話せれてない?そん、なこと、あるぅ?ちゃんと話せれている、よ、ね?…ねー!どうなの?ねぇーえ!!返事してよぉ!!!」
少女はこんな危険な状況だとしても目の前にある不思議に心を奪われたのか必死に何度も何度も、同じ言葉を何度も何度も、相手が応えるまで少女は同じ質問を投げかけ続け、甲冑を着た人物の腕の中で手のひらや足首が僅かに動かせれると判断し、動かれる部分だけを精一杯動かして暴れているのだが
甲冑を着た人物からは何一つ返事が返ってこなかった。
何も反応がないのはきっと大きな雪崩の音が世界を包み込んでいるため聞こえていないのかもしれない
そう少女は考えたりもしたが、自分の中に膨れ上がる好奇心を抑えることがどうしても出来なかった
その様な状況が暫し続くと好奇心旺盛な少女の喉に痛みが出始めてきて声を出しづらくなってきた、そんな頃合いになってようやく、少女の周りが静かになった。
静かになった今だからこそ甲冑を着た人物に質問をしようとしたが
「・・・!!!」
弱い少女の喉からは音が出なくなってしまっていた。
自身の声が出ないことに気が付き、喉から痛みがあるのだと解った少女は自身の喉に手を当てた瞬間、背を低め守ってくれていた甲冑を着た人物が立ち上がったので、少女はそれどころではないと判断し彼が何処かに行かないようにと彼を掴もうとしたが
「・・・」
伸ばした手の甲に優しく甲冑を着た人物の手が触れ、優しく力がくわえられ手をおろさせられてしまった。
少女はこれ以上、目の前の人物を引き留めてはいけないのだろうかと悩んでいると甲冑を着た人物が山のふもとへと視線を向けおもむろに腕を上げたので、誰か来たのだろうかと少女は後ろへと振り返ると少女の目にはまた新たな好奇心が湧き上がる現象が発生した。
少女にとって初めて見る鮮烈な光景が好奇心豊かな少女の思考を塗り替えてしまった。
眩く輝く閃光によって、山のふもとまで続く雪のない道が出来ていた。
少女の目に焼き付く様な出来事、初めて見る光景…
それは、少女が振り返った瞬間、ほんの僅かな、一瞬だけの奇跡だった。
長く見つめて記憶に焼き付かせたかったけれど、残念なことにたった一度の瞬きをしている間に、その鮮烈で衝撃的な出来事は消えてしまっていた。
けれども、その一瞬、僅かな一時、少女の瞳には信じられない光景が焼き付いていたのもまた事実。
目の前からその現象が消えたとしても少女の記憶にはしっかりと焼き付いていた。
眩い、まるで、光の…棒のようなものが地面を駆け抜けていくのが一瞬だけ見えた、そして、先ほどまであった雪たちがその光によって一瞬にして消えてなくなっていた。
気が付けば、山のふもとまで真っすぐに雪が無くなり、人ひとり分、いいえ、人が三人並んで歩いても十分なほどに、地面がむき出しになっていた。
剥き出しになった地面は、まるで、神様が使者の事を憂い用意したと言わんばかりで、まさに神の御業、奇跡の道(シャイニング ゴッデス ロード)という言葉が少女の頭の中に浮かび上がり、少女は体を小さく震わせ感極まってもいた。
目の前に用意された道
少女に雪山を安全に下りるんだぞと言わんばかりだと乙女思考は感極まっていたとしても!
冷静な思考は、きっと甲冑を着た人物が山のふもとへと戻るために小さな私の為に用意してくれた道なのだと冷静な思考は解っていたとしても!
奇跡のような出来事を目の当たりにした少女は、私は特別なのだと勘違いしてしまいそうだった。
勘違いしてはいけない理由が冷静な思考が少女に答えを提示してくる、何故なら、目の前にできた道幅が広いからだ。
これは私の為ではなく甲冑を着た人物が歩きやすくするためだと直ぐに理解した
先の雪崩もそう、私を守るためではない、たまたま、私が近くにいただけ、甲冑を着た人物が雪崩から身を守る際に私が居ては巻き込んでしまうだろうから、きっとその程度の配慮…
私の為に何かをしてくれたわけではない。
現実は辛く悲しい、私のような人物がそのような大それた夢を見てはいけない、後に待ち受けている現実に押しつぶされてしまうのは目に見えている。
勘違いしてしまいそうな連続した出来事を払拭するかのように、気持ちを切り替えようとしていると、少女の中には、そのような事よりも抑えきれない衝動の方が…
好奇心が再度少女の中で膨らんでいき、全ての思考を払いのけるどころか押しつぶしてしまっていた。
先の雪崩を防いだ方法
先の常識外れの暖かい金属
この僅かな、瞬きすら許されない一瞬での出来事によって生み出された雪解け道
全てに置いて少女の中の常識が崩れ、理解が及ばない。
いいえ、少女の中に一つだけ理解できる、出来てしまう言葉があった
この所業の全て、まるで、神様が起こしたかのような奇跡
続けざまに眼を焼き好奇心を焦がしつそうとする奇跡の数々───
少女が生きてきた全ての常識から逸脱した内容だったがために、少女の頭の中は完全に好奇心で満たされてしまっていた。
礼節を叩きこまれているのに、礼節を…助けてもらったと言うことを忘れてしまい
自分が危険で死ぬかもしれないという状況ですらも溢れ出る好奇心によって失念してしまっていた。
初めてみる何もかも!!
一つ一つの疑問がそれぞれ独立した思考のように好奇心が湧き上がり膨れ上がり、頭の中では様々な質問が溢れかえってしまっていた。
少女は、どれから整理していけばよいのか整理する事すら困難な状況に陥っていた。
頭の中ではずっと思考が渦巻き自分の質問が先だと、いいや、この疑問を解消するのが先だと、無秩序に走り駆け巡っていた。
目まぐるしく入り乱れる思考の中、各々が自己主張が激しく譲るという概念すらない好奇心たちの中、ただ一つだけ、今この瞬間の感動という名の感情が全てを圧倒し始める。
そう、少女の瞳を通して得られ流れ込んでくる目の前の奇跡
もしかしたら私の為かもっという乙女思考が全ての好奇心を跳ね除け少女の中で膨れ上がきった!
何処までも続いていく自惚れてもいいのであれば自分の為に用意してくれたかもしれない奇跡の道!
街へと続くように伸びた雪解け道!
そのような奇跡を目の当たりにしたのであれば乙女であれば淡い期待を抱くのが至極当然!
少女の中で走り回る複数の疑問という名の思考は完全に止まり少女の口からは
「はわぁ~」っと驚きの極地に至ったがゆえに自然と零れ出てしまう声に、高鳴る心臓の音だけが少女の音を満たしていた。




