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どう出る?

 こいつは人じゃない!


 ゲオルクはその暗闇に潜むその異様な影に細心の注意を払いながら、ゆっくりともたれていた壁から背中をはがして戦闘体勢を整えた。


 しかし……どう出る?


 ゲオルクは過去の戦闘の経験から、大抵の人間には勝つ自信はあった。

 しかし今目の前にいるのは、出会った事のない未知の存在……相手の出方も分からず、うかつにこちらから飛び込むのも危ないため、身動きが取れない……


 一方、暗闇の中から人差し指を伸ばした異様な影は、ゲオルクが戦闘体勢に入っている事に気がつくと、少しためらったような動作をして、ゆっくりと、ゆっくりと、その異様に大きな両手を上に上げた。


「ん? あれ?」


 ゲオルクは少し戸惑った。


 あのポーズは、戦う気がない事のアピールなのかな? でも、そう見せかけて~の攻撃! もあり得るから、もう少しこのまま様子を見よう。


 ゲオルクが体勢を変えないと気がついた異様な影は、両手をあげたまま、どうしていいのか分からなくなったようで、半歩ほど、ゆっくりと前に出て来た。


 月明かりと城内のランプや松明の灯りはあるが、あまりはっきりと顔を認識するほどの明るさではない。

 ただよく見ると、どうやらその影には髪の毛が生えていないようだ。月明かりがキレイにその頭皮を照らしている。

 それにその地肌の色は薄暗くも分かった。全く血の気がない死人のような青白さである。

 そしてかすかだが、両目がギョロリとこちらを見ているのが確認できた。


 一歩前に出た事で、距離が短くなったと感じたゲオルクは、どうするか悩んだ。


 何せ相手は人ではないバケモノ。どう攻撃を仕掛けてくるのか、さっぱり検討もつかない。しかし殺気は感じないし、両手を上げているから、ひょっとすると、自分に何か用があって出て来たのかもしれない。


 ゲオルクはどうしていいか迷い始めた。すると、


「コ、コンニ~チワ~ッ!」


 と、その影は挨拶をしてきた!


「ええ?」


 ゲオルクは少し拍子抜けした。

 その異様な手の大きさのハゲ頭のバケモノは、妙に高く不安を押し殺して勢いに任せたような声で、下手くそなハンガリー語で挨拶をしてきたのだ。そして、その声質から、それが男性というのが確認できた。


「え? え? ええ~……言葉……話せます?」


 つい敬語でゲオルクはハンガリー語で話しかけた。


「ス、スコシネ~」


 あれ? こいつ、思ったよりもいい奴なんじゃないのか?


 ゲオルクは少しだけ、戦闘体勢をゆるめた。


「ああ~~……っとお~。……君は何者……誰だ?」


「ワ、ワタシハ~……オロロック! オロロックネエ~!」


 この緊張感をぶっ壊した返しに、ゲオルクはつい笑いが込み上げてきた。ゲオルクは何だかバカバカしくなって、戦闘体勢を解いた。


「ええ~? オロロック? それ、名前? オロロック?」


「ソウネエ~! オロ……ア!」


 そう言うと暗闇の中の男は、少しオロオロし始めて、何か困ったようだった。


「あ~……と、オロロック? くん? さん? どうした?」


 ゲオルクはもう完全に舐めはじめた。


「ア~……ウマク~……イエナイネエ~ッ」


 ゲオルクは手に構えていた剣も腰に戻し、少しだけその男に歩み寄ってみた。

 するとその男はゲオルクが近づいた分だけ、なぜか目を細くして、後ろに下がった。


「んん~? どうした?」


「イ、イタイネエ~ッ」


 イタイ? 痛いって言ったのかな? 何が痛い?


「ア、アナタ……イタイネエ~……」


 あなた痛い……? 舐められてんのか?


 ちょっと何を言われているのか分からないゲオルクだったが、その暗闇の中の男は、目をシパシパとまたたいているし、どうやら本当に痛いのかもしれない。

 しかし何がどう痛いのかもよく分からない。


「ああ~~……。このままだとラチが開かないからねえ。君、オロロックくん? その~……何か別の言葉とか~~……通訳。そう、通訳とかいませんかねえ~?」


「ツ、ツウヤク? オオ~、ツウヤク!」


 お! 通訳は通じたみたいだぞ! よかったよかった。


 と安心したのも束の間、目の前にいた男が一瞬でいなくなったかと思ったら、気がついたら後ろに移動している!

 そしてゲオルクは驚く暇もなく、顔にこれまた一瞬で布を被せられた。


「キテ!」

「ええ?」


 すると両脇を後ろからその男に掴まれたと思ったその時、一気に体が上空に上がっていくのを体感で感じた。


「ええ~!」

「スグツクネエ~」


 布を被されているゲオルクだったが、自分が空中を飛んでいる感覚はしっかりあり、普段は冷静なゲオルクも、それには度肝を抜かれた。


「ま、待て! 今、どうなってんの?」

「スグスグ」

「だから教えなさいって!」


 そう言っている間に今度は身体が下降しているのを感じた。そして、ゆっくりと地面に両足がついた。

 すると両脇を押さえていた大きな手の感覚も取れたので、ゲオルクは慌てて頭の布を取った。


「君ねえ~! 一体どう言う……」


 ゲオルクは周りを見渡して驚いた。そこはつい数時間前に大司教と来ていたジプシーのテント群の前!


「ああ~……ええ?」


 と驚いたが、その前に一気に気持ち悪くなり、その場でワインやらビールやらを吐き戻してしまった。


「うう~~……、これは気持ち悪い……」


 そう涙目になりながらもう一度目の前のジプシーたちのテント群を眺めて、本当に何が起こっているのか考えたが、やっぱり何一つ理解できない。


 そんな混乱しまくりのゲオルクの前に、ランプを持ったラーダがやってきた。


「ごめんなさいねっっ。まさかあなたを連れてくるなんて思ってもみなかったからっっ。あら、吐いちゃったの? あらら~……」


 そう言うと、ラーダはグッタリしているゲオルクの手を取ってしばらく介抱してくれた後、テント群の一番端にあった馬車まで連れていってくれた。


 そこはハンガリーから逃げてきたという中年男性と赤と黒のスカーフの男の子の馬車である。


 中に入ると、そこには色々な生活の為の箱や服などが置いてある中で、数時間前に話したハンガリーから逃げてきたという少年とゾラが手前の御者席側に座っており、その奥の荷物だらけの馬車の端辺りで、先程の無口だった中年男性と、頭から湯気が出ているハゲ頭の男の後ろ姿が目に入った。

 ゾラもゲオルクを見るなり大慌て!


「ええっっ! な、なんでその人が?」


 しかしそれをラーダがなだめ落ち着かせた。

 ゲオルクだって全く理解できていない。

 そんなゲオルクにラーダが言った。


「あの人、吸血鬼なのよ」

今回もここまで読んで頂き、本当にありがとうございました!

ようやくバケモンが登場しましたので、宜しかったら次回も読んで頂けると嬉しいです♪♪

では今回も本当にありがとうございました!!

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