……なんかいる
真夜中のホーエンザルツブルク城もみな寝静まっており、歩いているのは夜警とアパート帰りのゲオルクくらい。
すっかり落ち込んでいた大司教を城内の中央宮殿の寝室まで見送ると、今日の疲れと先程のワインの酔いで、ゲオルクはかなりフラフラになりながら妻のアンナの待つアパートに向かった。
幸い、城内は至る所にランプや松明の灯りがあるので、道に迷う事もぶつかる事もない。
今のヘロヘロのゲオルクにはそれがとてもありがたかった。しかしアパートの建物の前まで来た所ですっかり疲れたゲオルクは、一階のパン屋の壁に持たれて座り込んでしまった。
城壁の上に浮かんでいる月を眺めながら、今日の事をいろいろ思い出していた。
今日はいろんな事があったな……全部夢みたいだ……しかし……また大司教の命を狙っている連中が現れるとはな……前はよく神聖ローマ帝国皇帝の手下に狙われてたからな……大司教も大変だ……また皇帝絡みじゃなきゃいいけど……しかし……これが今朝のあの死体……ハンスと関わりがないといいんだけどな……もしそうなると、かなり面倒な事に……
そう思いながら、ゲオルクは視線を通路の暗闇に移した。何か妙に気になる。まるで昨日の暗闇と同じだ……
………………んん?
ゲオルクはその暗闇に何か危険なものを感じた。
ここは城内、不審者がいるとは考えにくい。しかし……
すっかり酔いの覚めたゲオルクは、ゆっくりと壁沿いに身体を預けながら立ち上がった。
そしてゆっくりと左手に短剣を握り、いつでも攻撃できる体勢に変えていった。
……絶対いる……
ゲオルクは、通路の先、角の塔の影の中をじっくりを凝視した。
すると、その塔の影の中から、ゆっくりと、ゆっくりと、少しだけ月明かりの差す通路側に、背の高い影が浮かびあがった。
その影は、真っ黒な影の骸骨のような頭の輪郭がはっきりと姿を現し、そしてその両耳が悪魔のようなとがり方をしているのが確認できた。
な、なんだあれは……?
ゲオルクは動けないまま、その影を見る事しかできなかった。
その影は、ゲオルクを認識しているようで、ゆっくりとゆっくりと手を差し伸べてきた。
ただ、その手は不自然に大きかった。指の長さ、そして鋭くとがった五本の爪。全てが異様だった。
その異様な手の人差し指が、ゲオルクを指さしてきたのだ。
ゲオルクは確信した。
こいつは人じゃない!
ここまで読んで頂き、本当にありがとうございます!
ようやくそれっぽいのが、出てきましたので、次回も読んで頂けると嬉しいです♪♪
では本当にありがとうございました!!




