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本気ですか?

「それ、本当か?」


 大司教の質問に、カスパールもすぐに答えれない。

 ハンスとはカスパールの兄で、ザルツブルクの街門の門番や夜警を持ち場にしていた人物である。弟のカスパールとは違い、出世コースから外れてはいたが、本人は別に気にする素振りも見せず弟のカスパールとも仲がよかった。

 そしてゲオルクにとっては奥さん同士がとても仲がよかったので、他人事ではなかった。


「わ、分かりません……けど……なんか、そのイレズミ……それによくよく見ると、顔や体型も……」


 カスパールは今にも泣きそうである。


「一度、確かめに行きましょう」


 ゲオルクは観察をやめてカスパールと部屋の外に出ようとした時、


「ちょっと待て! それはカスパール一人に任せよう」


 と大司教が止めに入った。


「まだカスパールの兄かどうかも決まってないし、全員で行く事もねえよ。それよりも、この男の死因……それがオレは引っかかってる」


「まあ……確かに」


 ゲオルクもそれには賛同した。


「カスパール。お前、もう行っていいぞ。心配で仕方ないだろ? 行って確かめてこい」


「ありがとうございます! 大司教」


 こうしてカスパールは一人、早足で部屋を後にした。

 部屋に残された大司教とゲオルクは、冷静に話を続けた。


「で、大司教。どうお考えで?」


「うん。オレはなあ、ホントにバケモンがやったんじゃないか? って思ってるんだよ」


 その返答にゲオルクは面を食らった。


「ええ? 大司教? 本気ですか?」


「ああ、本気だ。まあバケモンを信じてる訳じゃねえんだけどよお、その傷はともかく、そんな干からび方を人間がするか?」


「まあ……まあ、そうですねえ」


「でもよお。まだ現時点ではよく分かんねーし、バケモンの仕業だとしても……まあ退治法とか分かんねーけど、何とかなるだろ」


 大司教はワハハと笑った。


「そうだ。とりあえず、こういう事の専門家がそこにいたなあ。なあ? クラーマー」

「は、はいっっ」


 一時保管室の出口のところから、クラーマーはバツの悪そうな顔を出してきた。実はずっと部屋の入口で話を聞いていたようだった。


「ワ、ワ、ワタクシも現在、このザルツブルクに異端審問官として、は、派遣されてきた身ですからねっっ! こ、こういった変死体は、ほ、放っとく訳には行かないじゃないですか? だから……」


「じゃあ入って来なさいよ」


 あたふたしているクラーマーをゲオルクは笑みを浮かべて招き入れた。しかしクラーマーは部屋に入ろうとはしない。


「い、いや、ワタクシはここでけ、けっこう! あ、悪魔の仕業かもしれない遺体によく近づけますねっっ! や、やられますよっっ!」


「フ。もう死んでるから僕たちはやられないですよ」


「もういいよクラーマー。お前、魔法とか詳しいだろ? バケモンの事とか調べておいてくれ。それから何か手掛かりを持ってきた人間がいたら、オレに伝えるんだ。いいな。オレとゲオルクは外に出るから。頼んだぞ!」


「はい! 大司教!」


 背筋を伸ばし直立不動のクラーマーは、その姿勢のまま、教会の書斎に向かった。

 それをゲオルクと大司教は見届け、目の前から消えると、ゲオルクは大司教に聞いた。


「で、どこに行くんで?」

今回もここまで読んでいただき、本当にありがとうございました!

まだ序盤が続きますが、このままよろしければお付き合いのほど、よろしくお願いいたしますっっ。

では本当にありがとうございました!!

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