…………たんです
ゲオルクとアンナは共同食堂で食事をとり終えると、すぐに兵士に呼ばれた。
どうやらオットー・フォン・ニーマンに裁判がもう始まるらしい。
二人は中央宮殿に戻り、宮殿内の大広間に出向いた。
そこにはザルツブルクの貴族達が一斉に揃っており、大広間の一番奥の高台の所には大司教が正装をして、横にいる補佐司教や他の司教たちと打ち合わせをしている。
そこにはクラーマーもいたが、彼はイマイチ相手にはされていない様子だった。
「おお! 来たか! こっちに来い!」
大司教の呼びかけで、ゲオルクとアンナは事件関係者として、司教たちの横の席に案内された。
いろいろと騒ついている周りを見て、アンナは緊張を始めたが、ゲオルクは平常心のままだった。
「ねえねえ、これってラーダさん達とかは呼ばれないんだよね?」
「たぶん」
ゲオルクは息も荒くなっているアンナを気づかって「はい、深呼吸」と少しでも緊張をほぐそうとした。
そんな中、大司教が声をかけた。
「おい! そろそろ始めるぞ! アイツ呼べ!」
その掛け声で大広間は静かになり、司教たちが座っている奥の扉が開くと、そこからオットーが足を引きづりながら入場してきた。
両手は後ろで鎖で縛られ、両足にも足かせがついており、歩くたびにゴリ、ゴリと音を立てた。
アンナは始めて見る友人を殺した男を見て吐きそうになり、下を向いた。ゲオルクはそれに気がついてアンナの肩を寄せた。
オットーがゆっくりと大司教の前までやってくるとニヤけた顔を見せた。
「フ~、これたまらんです事よ」
オットーは鎖をジャラジャラ音を立てたが、大司教は顔色一つ変えない。
「では裁判をとり行う。ますはお前の名前を言いなさい」
「オットー。オットー・フォン・ニーマン」
「今、お前はどうしてここにいるか、分かっているな?」
「………………」
オットーは何も言わない。そして下を向いた。
「オットー、どうした? 分からないのか?」
大司教の問いかけにもしばらく答えない。
ゲオルクは嫌な予感がした。
「おい! オットー!」
大司教が大声で質疑を行うと、オットーは肩を震わせ始めた。
「…………たんです」
「え? 何?」
「……ハメられたんです」
「ええ?」
「小生! ハメられたんですのよホントに!」
あ~……っと……何を言い始める?
ゲオルクは聞き入る事しかできない。大司教はすでにイラ立ち始めている。
「お前? 何言ってんだ? ちゃんと自分のやった事を話せ!」
「だから小生! ハメられたんです! ソイツに!」
オットーはゲオルクを指差した!
おお~っとお~っっ……これはどうしたらいい?
ゲオルクは顔色変えずに、ただオットーの言う事を全て聞く事にした。横にいるアンナはビックリしてゲオルクを思わず抱きしめた。
大司教はゲオルクが動かないのを見計らうと、質疑を進めた。
「小生オットー・フォン・ニーマン三十五歳独身。これを申してここにいる皆さまが信じていただけるか……小生、非常に心配なんですの。でもホント、神に誓って嘘は申しませんのよ本当に。え~……この数日間の出来事は、まるで悪夢を見ているようでした。最初は夢で『ザルツブルクに来い』と悪魔のようなハゲのモンスターに言われ、小生はまるで操られるかのようにこのザルツブルクの地に参ったのでございますの。すると、そこにいる男に『よく来たな』と言われ、街の外のジプシーたちのテントに通された小生は、その場で黒魔術の儀式に参加させられて『ザルツブルクを滅亡させるのだあ~』とさらに操られてしまったのですのよ。そして夜中に黒魔術の使いに操られていた時、小生、運良く目が覚めて慌ててソイツから逃げたんですの! するとその使いは夢に出たあの悪魔に噛みつかれて! それからは悪魔の使いとの闘いだったのですのホントに!」
おお~……オットーのやつっっ……すげ~事言い始めた……
ゲオルクはそのあまりのこじつけに驚いた。しかしまだまだオットーの供述は続いた。
「でも昨日の夜もあのハゲの悪魔に捕まって『大司教を殺せ!』と操られた挙げ句『その手下をまず殺せ!』と言われて、小生は操られてたんです! だから全然知らない人を、私も無意識のうちに殺してしまった! 小生はビックリして、慌てて隣の家に逃げ込んだんですの! でもそこにソイツが現れて、目の前であの人達を皆殺しにして『全部おまえがやった事にする!』とまた操られたんですの! そう! だから小生は自分の意思で人は一人も殺してなんかないんですのよ! 全部ソイツが黒魔術と悪魔を使って仕組んだ事なんですって!」
ゲオルクは、ずーーーっとオットーから指をさされながら「ソイツ」と呼ばれ続けた。
当然、その場にいる全員がゲオルクに注目しながら、オットーの供述を聞いていた。
大司教は困惑した表情となり、補佐司教は目をつむって眉をひそめ、横にいるアンナは疑心暗鬼の顔をしている。
そして近くにいたクラーマーは、目をキラッキラさせて、これでもかとイキイキした顔をしている。
大広間全体が騒ついてきたので、大司教がすぐさま静かにさせて、質疑を続けた。
「お前、さっきからハゲのモンスターとか何とか言ってるけど、何でそんなデタラメ言うんだ?」
その時クラーマーの目がキラン! と輝いた!
「いえ! 大司教! 私には分かります! そのハゲのモンスターはワタクシも遭遇しましたっっ! そこのゲオルク・グルーバーのすぐ後ろに、何回も!」
「ああ?」
大司教はクラーマーを睨みつけたが、今のクラーマーの発言は大いに大広間の貴族たち全員の関心を集めた。
大司教は慌てて「あ~~! 一回閉廷! 閉廷!」と無理矢理裁判を止めた。
すると当然、その場にいた貴族たちから不満の声が上がり大広間は大混乱!
大司教は頭を抱え、補佐司教は両腰に手を当てて苦い顔。
横のアンナはもう震えて涙も流している。
ゲオルクは思った。
まさかここでこんな窮地に立たされるとは思わなかったなあ。
ここまで読んで頂いて、本当にありがとうございます!
こんな感じでまだ続きますので、宜しかったら引き続きお付き合い頂けると嬉しいですっっ。
では今回も本当にありがとうございました!!




