表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/34

そうですそうです

 ゲオルクとアンナ、ジプシーのラーダとゾラ、ベルキとオジさんは、それぞれ二人ずつ、客間を与えられ、それぞれ今日の疲れを癒しに入った。


「危なかった~……」


 ゲオルクは自宅とは打って変わって質の良いベッドと布団に横になり、しっかり客間を満喫し始めた。


「あんた、よくそんな伸び伸びできるねえ」

「まあ、こうなったら、なるようになるって思うしかないでしょ♪ ねえ奥さん」

「まあねえ。でも、あんたみたいにそこまで開き直れないわよ」


 アンナは落ち着かない様子で、ベッドに座って客間をキョロキョロ見渡している。

 全体が石壁のこの部屋は、二人用なのか中はあまり広くなく、ベッドが二台ある以外には部屋の入口の横の食器棚と荷物を置く為のタンスがあるくらい。ただそんな中、四人掛けのテーブルがあり、そこにはありがたい事に食事も用意されていた。

 しかし二人とも、その食事には手をつけず、ベッドからも離れない。

 もう今日はクタクタなのである。


「……ねえあんた~。あのゾラって子。あの子、ずいぶん前にお父さんが処刑された子?」


「ああ……よく分かったねえ」


「うん。なんとなくね~。あんたを見る目とか、私を見る目とか。警戒心バリバリでさあ。でもさっきはどうしていいのか、困惑した顔をずっとしてたもんねえ」


 その時、客間のドアがコンコンと叩かれて「入ってもいいか?」と大司教の声がきこえた。


「ええ、どうぞ」

「いい事してなかったか?」


 しっかり下品なあいさつで大司教が入ってくると、その後ろから「私もお邪魔します」と、補佐司教も入って来た。

 そして大司教は両手にしっかり木のコップとワインを持っていた。

 そしてテーブル席に座ると「なんだ。食ってねえのか」と、なぜか自分で用意してくれたであろう食事を食べ始めた。

 その横に座った補佐司教は、目の前の食事には全く興味を示さなかった。


「大司教、補佐司教。どういったご用件で?」

「どうもこうもねえよ。お前、いろんな事をやたら知ってたろ? それにさっき上空に上がってった何かを見たぞ。とりあえず裁判が始まる前に全部吐け!」


 それを聞いた補佐司教は横で笑っている。こんな言い方をしているがどうやら尋問ではなさそうだ。


「ああ~……、今回、あの暗殺者を捕まえるにあたりましてねえ……あの……協力者。協力者がいましてっっ」

「それがあの飛んでったなんかか?」

「あ! あれ吸血鬼!」

「ちょ~っっ! 奥さん?」

「吸血鬼?」


 アンナの一言に大司教と補佐司教は顔を合わせたが、目の前で飛んでいったのを目撃してるので、真っ向から笑えない。


「それ、本当か? どういう事だ?」


 大司教と補佐司教は前のめりになった。


「まあ……簡単に話しますとですなあ。大司教と僕で娼館に行った夜、あの夜にハンスとあの暗殺者が僕たちを殺す相談をしていたのを、あの吸血鬼が阻止してハンスの血を飲んで助けてもらったと」

「ええ?」


 大司教は目がまん丸になった。ゲオルクは続けた。


「それで、次の日……というか昨日の夜、大司教と別れた後、彼が僕に接近してきて、でも彼はハンガリー語をちょっとしか話せないワラキアの人間だという話で、それで通訳をしてもらいにラーダのトコに行ってですなあ……」


 もう大司教の頭の中は理解が追いついていない。補佐司教も無表情のまま、ぜんぜん口を開かなくなった。


「それで、今日も彼がクラーマーから助けてくれて、今度は強力して暗殺者を捕まえたっていう……そう言うお話です。どうでしょ? 分かって頂けましたかねえ?」


 大司教と補佐司教はお互いに顔を見合わせて、おのおの腕組みをしたりして、何とか理解しようと努力した。


「え? じゃあ何か? その吸血鬼にオレたちは助けられたって事か?」

「そうですそうです」

「はあ~……そんな事もあるんですねえ大司教……。私も一杯頂けますか?」


 補佐司教は客間の食器棚から木のコップを持ち出して来ると、大司教のワインを一人でついでグイっと飲んだ。そして大司教もコップのワインをグイッと飲んだ。


「こんな話。まともに聞けやしねえ。おいノッポ! お前も飲め! アンナもだ!」

「はいはい」

「はーい♪」


 こうして四人ともテーブル席に着くと、しっかり飲み会に突入した。


「でもなんですねえ。ゲオルクちゃんはよく、その吸血鬼と仲良くできましたねえ」


「いや、何かあいつ、オロロックって言うんですけど、あいつ、吸血鬼って言いながらすごい僕に協力的だし、ジプシーたちとも仲がいいし……何か憎めないんですよ」


「んん? その吸血鬼、オロロックって言うのか? オロロック? んん~……?」


「え? 大司教、その名前に聞き覚えが?」


「ん~……いや、ないな。まあそんな名前はいい。それよりもだ」


 ゲオルクとアンナは、大司教の顔がかなり渋くなったのが気になった。


「いや、今の話。吸血鬼の話。もし、もし本当だとしたら、お前たち本気で火破りになるかもしれんぞ」


「ええ!」


「あのねゲオルクちゃんアンナさん。吸血鬼ってのは、悪魔の使いであって、神の間反対にいる存在だからね。その吸血鬼と協力ってなると……ねえ、大司教」


「ちょっと難しいトコなんだけどなあ。ソイツのおかげでオレとノッポが助かったって話になると」


 大司教は本当に困った顔をして悩んでいる。横の補佐司教もかなり渋い表情をしている。


「ゲオルクちゃん。私たちはいいのよ。でも裁判をするのがあのクラーマーだからねえ……」


「ああ~……」

「クラーマーってさっきのキモい人? ヤだあ~っっ」

「まあ~それはお前たち、裁判の時に上手くごまかせ! それよりさっき捕まえた暗殺者、あいつは何か口を滑らせてなかったか?」


 話題はオットーに移った。


「ああ~……そうですなあ。名前はオットー・フォン・ニーマンで、彼もたぶん元傭兵。昔の私を知っていました。でも殺しを請け負ったとは言ってましたけど、誰かまでは言ってなかったですなあ」


「う~ん。そうか。でもラーダが昨日教えてくれた情報で、神聖ローマ皇帝の手のものが入ったようだと言ってたから~……たぶんリヒテンシュタイン辺りか……」

「まあそうでしょうな。しかしあそこは手が出せません」

「そうだよなあ。まあ今回もあの男を公開処刑して終わりだな」


 大司教と補佐司教は頷きながら納得しあった。


「あ、僕も聞きたいんですけど、ハンスは何であの殺し屋と暗躍したかは分かりましたか?」

「ああ、それね。ゲオルクちゃん。あの男、だいぶ借金してたみたいでね。催促の紙がいくつも部屋の中から見つかったのよ」

「え? 借金?」

「あいつ、だいぶサイコロにハマってたからなあ」

「ああ」


 言われてみれば、ハンスはかなりサイコロ賭けに夢中になっていた。そのせいで、一回親父さんと大げんかして、カスパールがぼやいてたっけ。


 ゲオルクは理由が金と分かると、何だか寂しい気持ちになった。


「あの男、弟のカスパールの出世が辛かったのかもなあ」


 大司教も遠い目をした。補佐司教もうんうんと頷いていた。そしてアンナはまたハンスの奥さんが死んだ事を思い出して一人大泣きしていた。


「アンナ、大丈夫か? こんな話題して悪かった」

「ゔゔ~……もう会えないかと思うとゔゔ~……」

「大司教、そろそろここはおいとましますか」

「そうだな。アンナに悪い事しちゃったしな」


 大司教と補佐司教は席を立った。


「あ、大司教、明日はいつぐらいから」

「まあ、明日の昼前までシュテルン卿宅の調べをやってるだろうから、アイツの裁判は昼過ぎにはなるな。お前たちはその後だ」

「分かりました」


 こうして二人が部屋を後にしようとした時、アンナが大司教を呼び止めた。


「あの、ゾラちゃん? 今日来たあのジプシーの。あの子に本当の事を話さないんですか?」


「あ? ああ~。それなあ、オレもちょっと迷ってるんだけどよう。やっぱり本当の事、話した方がいいかなあ?」


「だって、ウチの旦那をすごい顔で見てたから」


「ん~……そうだよな。分かった。近いウチに話すわ。まあ今日はおやすみ」

「お二人ともおやすみ。よく休んでおくんだね」


「はいはい」

「はーい♪」


 こうして大司教と補佐司教は部屋を後にした。二人が去った後、ゲオルクとアンナは少し元気が戻り、残っている食事をしっかり平らげて、その後すぐ寝た。

 そして長い一日が終わった。

ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます!

まだまだ続きますので、宜しければ次回も引き続きお付き合い頂けると嬉しいですっっ。

では今回も本当にありがとうございました!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ