後ろっっ! 後ろっっ!
「ゲオルクさん! 開けて投降してください!」
玄関ドアの向こうでは、クラーマーが大声を出して騒いでいる。しかしそんな事は今はどうでもいい。
「奥さん? 昨日、ハンスの家にお客が来るって言ってたの、本当?」
「うん。本当。なんかハンスの昔からの知り合いで、仕事のためにザルツブルクに来たとかなんとか……」
半べそをかきながらアンナは答えた。
ゲオルクはオロロックと目を合わせた。
「ソイツを探しに行かないと」
オロロックは事情を察したのか「うん」と頷いた。
「ちょっとゲオルクさん!」
まだドアの外のクラーマーは騒いでいた。ゲオルクはアンナをドアから下げると、一気にドアを開け、そこにいたクラーマーの胸ぐらを掴むと、部屋の中に引っ張り込んで、またドアを閉めた。
「クラーマーさん。あんなに騒いだら、ご近所迷惑でしょうが」
「あ、ああ! やっぱりいた~~! な、犯罪者が何を言ってっっ! この胸ぐらの手を離しなさい!」
「あのね? 今、それどころじゃないの。大司教を狙ってる犯人のヒントを奥さんが教えてくれたのよ。クラーマーさんは早く大司教のトコに戻って、警備を万全にして」
「は、はあ~? 大司教が狙われてるって何? だいたいあなたは……」
事情の分からないクラーマーはその意見を反対しようとしたが、ゲオルクの目線の先に、先程のバケモンが窓際に立っている事に気がついた。
「な、なははあああああ!! ゲ、ゲオルクさん! う、後ろっっ! 後ろっっ!」
「ええ? 後ろ?」
「え? なになに?」
ゲオルクは、また見えないフリをした。奥さんのアンナもゲオルクに乗っかって見えないフリをした。
「う、うそだ! み、見えないの? ほ、ホントに? な、なはあああああああああああ!」
クラーマーは大慌てでドアから逃げて行った。
ようやく静かになったアパート。ゲオルクはまだ涙目のアンナを抱きしめた。
「ハンスの事は言わなくてスマンかった。でもまだ犯人が城内をうろついている可能性が高いと思う。だから今晩はオロロックとまた出かけるけど、ここで留守番頼んだよ」
「ええ? また危険な仕事?」
「まあ……仕方ない。これが僕の仕事だから」
「分かった」
アンナは涙を拭いてテーブル席に座って落ち着きを取り戻した。
それを見届けたゲオルクは、オロロックにハンガリー語で話し始めた。
「オロロック。今からハンスの家に行って、何か手がかりがないか探すんだけど、君に手伝ってほしい」
「ア~、ハンスノイエ、イクネ~」
「よし! じゃあ奥さん! 留守番たのんだよ~! こっちだ!」
こうしてゲオルクとオロロックはアパートの窓から姿を消した。
ここまで読んで頂き、本当にありがとうございます!!
だいぶお話が動いてきましたので、次回もお付き合い頂けると嬉しいですっっ。
では今回も本当にありがとうございました!!




