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イヤですよ

 ゲオルクは自宅の窓から表の広場を見ると、数人の兵士とクラーマーと思われる松明の灯りが目に入った。


「んん~……どうするかなあ」


 ゲオルクが困っていると、早々にこのアパートめがけてその中の数人がアパートに入ってきたのを確認した。


「やばい! 来る! みんな静かに!」


 アンナとラーダ、ゾラの三人はその言葉に驚き固まり、それを見たベルキとオジさんも固まった。

 ゲオルクは窓の外を確認した。

 アパートの外には見張り役の兵士が二人、松明を持って待機している。ひょっとすると、兵士はもっと増えるかもしれない。


 ドカドカドカ。


 階段を上がってくる足音は着実に近づいている。


 どうする?


 ゲオルクは最悪、戦闘になるかもと思い、腰の剣に左手をおいた。

 そんな時、おもむろにオロロックが窓から煙のように外に出て行った。


「っっ!」


 これには全員驚きすぎて、声にならない声が出てしまった。

 その時、アパートの玄関ドアをノックされた。

 またこれにも全員驚いて、慌てて口を塞いだ。


「グルーバーさん。ここ、ゲオルク・グルーバーさんの部屋ですよねえ? 奥様? 奥様、出てもらえませんか?」


 この声は紛れもなくクラーマー!


 この呼びかけに、アンナは(どうする?)と口だけ動かしてゲオルクに尋ねてきた。


(出て。出て。でもドアは開けないで)


 ゲオルクも口の動きだけでそれに答えた。ラーダとゾラは固唾を飲み、ベルキとオジさんはそれを察知して息を潜めた。

 そんなみんなが見守る中、アンナはドアは開けず、声だけで答えた。


「は、はーい。どちらさんですかあ~?」

「あ! ワタクシ、申し遅れました。ドミニコ会異端審問官のハインリヒ・クラーマーという者です。はい、実はですねえ、お宅のご主人、ゲオルクさんが、昼間に反逆罪の容疑者で捕まったんですが、少し前に、仲間のジプシー二人を連れて牢獄から脱走してしまいまして! 誰かがこの脱走に加担している可能性が高いものですからね。あの~奥様? 一度この部屋の中に入らせて見せていただく事はできませんかねえ?」


 ずいぶん丁寧にお願いするんだなあ。しかし反逆罪って……


 少しだけゲオルクは驚きと共に感心し、それと同時に少し気持ち悪さも感じた。


「え? イヤですよ。こんな夜更けに! 主人はまだ家には帰っていません! 今、自己紹介してくれましたけど、それ本当ですか? 証拠か何かあるんですか? 完全に分かったら開けてもいいですけど、今はお断りします!」


 アンナが見事な正論をぶつけた事に、ゲオルクは「やっぱり自分の奥さんは無敵だな!」と感心した。


「いや、待ってください! 証拠も何も、ここを開けてもらえないと、奥様にお見せする事もできないじゃないですかあ? ワタクシにどうしろと?」


「そんなの分かりませんよお! でも証拠を何かおっしゃってください!」


 こんなやり取りをアンナとクラーマーがしていたその時、部屋の窓がひとりでにキィ~……と、少しだけ音を鳴らしながら開き始めた。

 窓の外にはオロロックが空中に浮いている。ゲオルクは音を立てないように窓の外を覗くと、誰一人アパートの外には兵士はいない。

 オロロックは微笑んだ。


(カエッタネ~)


 オロロックはまた催眠術で、兵士達をここから遠ざけたのだ!


(ラーダ。ゾラ。こっちに来て)


 ゲオルクは二人を小声で呼び、事情を察してもらうと、窓の外からオロロックに掴まって二人は一階のパン屋の前に降りた。

 続いてベルキとオジさんも下に降り、ゲオルクも一階に降ろしてもらった。


 問題は、パン屋の主人がここを開けてくれるかどうかっっ。しかもここを叩いて、四階のクラーマーが気づかないといいけど……


 ゲオルクがそんな心配をしていると、オジさんが、おもむろにパン屋のドアをコンコンコンコンとノックを連打し始め、それを見習ってラーダとゾラ、ベルキもコンコンコンコンとドアを連打した。

 この騒がしさにすぐにパン屋の主人がドアを開けた。

 この時、オロロックは空中に浮かんでパン屋の死角に入った。


「なんだお前たちは? ジプシー……あれ? ゲオルクさん?」

「スマン! この人達を今晩かくまって! 事情は後で話すから!」

「ええ?」


 困惑するパン屋さんの意に介さず、ジプシーたち四人はサッサとパン屋の中に入った。


「おいおいゲオルクさん。勘弁してよ~」

「ああ~……今日だけ! 礼は後日、たっぷりする!」


 ゲオルクがそうパン屋を説得した直後、四階から大きな泣き声が聞こえてきた。


「アンナ?」

「あれ? あの声はそうだね、奥さんだねえ? どうした?」

「あ、ありがと! 後よろしく!」


 そう言うと、ゲオルクは半ば強引にパン屋さんのドアを閉めて、オロロックを呼び、四階の窓から部屋にまで戻った。

 すると玄関ドアの前でアンナは一人、泣き崩れていた。


「ああ~~~~っっ! ハンスが~~~~っっ! ハンスの奥さんも死んじゃった~~~~っっ! カスパールくんも~~~~っっ! ウソ~~! ウソよ~~っっ!」


「ほ、本当です奥様っ。こんなに泣かれるとは思いもしませんでしたっっ。でも、ハンスもその奥様も、弟のカスパールも亡くなってしまったんですっっ。現在、それも大司教たちで調べている最中でしてっっ」


 ああ~……話の流れで今日の事件の事も聞いちゃったかあ~……仕方ないかあ~……


 ゲオルクは苦い顔をしながら、窓から部屋に戻ると、アンナの側に寄り添った。アンナは大号泣。


「ああ~~~~っっ! あんた、知ってたの~~? ウソ~~っっ! ウソって言って~~っっ! だって! だって昨日だって旦那さんのお客が泊まりに来るから準備で大変とか、楽しそうに話してたのに~~!」

「ええ? お客?」


 ゲオルクは驚いた。と同時にドアの外のクラーマーも驚いた。


「や、やっぱりそこにゲオルクさんいる~っっ?」


 ああ、バレた。

ここまで読んで頂き、ありがとうございます!!

まだ続きますので、宜しければ次回も引き続き読んでいただけると幸いですっっ。

では今回も本当にありがとうございました!!

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