ツルッパゲの出っ歯の顔色の悪すぎる男
ゲオルクは尋問部屋でクラーマーに両手を差し出して、縄で縛られている最中。
「ああ……それでクラーマーさん。昨日夜遅くまで調べた魔物的なヤツとか、何か分かったの?」
クラーマーは不器用らしく、顔を両手に向けて一生懸命に縄を縛ろうとはしているが上手に縛れず、少しイライラしている。
「あ~、魔術ね。いろいろ調べましたよ~。例えばね、人間の身体を干からびさせるような魔術で調べたんですけど、それだとなかなか出てこない。なので、血を必要とする魔術的なものを調べたところ、悪魔召喚の時に、処女の生き血が必要だとか、吸血鬼が夜になると生き血を求めて墓から出てくるとか……」
「へえ……吸血鬼ですか? それはどんな?」
「ええ。その吸血鬼ってのは、悪魔の使いらしく、神に仕えるものとか、鏡とか、太陽の光とかが苦手なんだそうで、夜になると現れるとか。今回の変死体の犯人は吸血鬼と思ってもいいかも知れませんね」
「そりゃすごい。よくそこまで調べましたねえ」
「そりゃあの日、半日以上、本と睨めっこしてましたからね」
つい昨晩の成果を褒められてすっかり上機嫌になったクラーマーは、笑みをこぼしながら顔をあげてゲオルクを見た。
するとノッポのゲオルクの横に、同じくらいノッポの見た事もないツルッパゲの出っ歯の顔色の悪すぎる男がいる!
「なはははははああああああああああああああ~~~~っっ!」
あまりの驚きに、クラーマーは自分で後ろの壁まで吹っ飛んだ。
「あれ? どうしたんです? クラーマーさん?」
「な、だ、ゲ、ゲオルクさんみ、見えないの? よ、横っっ! 横っっ!」
「ええ?」
ゲオルクは横を向いた。
「ええ? どこですかあ?」
するとそのツルッパゲは、クラーマーに向かって、大き過ぎる、そして長く鋭い爪のついた両手をシャキーーーン! と見せつけた。
「なははははあああああああああああああっっ!」
クラーマーは、その場で右往左往して、腰を抜かしたまま慌てて部屋の外に逃げ出した。
こうして尋問部屋は、すっかり静かになった。
「はあ~……行ったみたいですなあ」
ゲオルクは、全然結べていない両手の縄を外すと、横にいるツルッパゲにハンガリー語で語りかけた。
「僕のとなりで痛いんじゃないの?」
「チョット~、チョットダケネー」
そう言いながら、オロロックは半歩下がった。
それを見ていたラーダは、ホッとしたのと緊張が途切れた事でその場で腰から崩れた。
「デモ~……」
「んん? でも?」
「イマのヒト~……イタクナカッタネ~……」
「え?」
ゲオルクはオロロックのその発言に驚いたが、部屋の外からゾラと少年ベルキが走って入ってきたので、それどころではなくなった。
「ラーダ! 大丈夫?」
ゾラはラーダに抱きつき、ベルキもオジさんに駆け寄った。
この狭い尋問部屋に、ゲオルクとオロロック、ラーダ、ゾラ、ベルキ、オジさんと六人もいる。
「ああ~~……こんな大所帯でどうすんの?」
ゲオルクは思わずみなに聞いた。
「あ~、ゲオルクはここに一人いて。私たちはオロロックに城の外に出してもらって、そのままザルツブルクから逃げる」
下を向いたまま、目も合わさずゾラが言った。
「何言ってんのゾラ! 私を助けてくれた人に」
「だ! だって! だってお父さんを捕まえて、殺しちゃった人だもん! こんな人、どうでもいい!」
「ゾラ!」
思わずラーダはゾラをビンタした。
これにはオジさんもベルキも驚いて口をあんぐりしたまま、二人に見入ってしまった。
ゲオルクも頭を抱えた。
「ああ~……ごめんな、二人とも。今はそんな事言ってる時間ないんだよ。というかどうやってここまで来たの?」
ゾラは下を向いてシクシク泣いてしまい、話ができない。ラーダがベルキにジプシー語で聞いてみた。
すると、オロロックがゾラとベルキを両手で担いで、空中から城に侵入。暗い事もあり、ほぼここまで誰にも見つからず。尋問部屋の外で待機していた兵士達は、オロロックの催眠術によって別の所まで歩いていったとの事だった。
「はあ~っっ。アンタすごいねっっ。そんな事も出来るんだ」
ゲオルクはつい感心してしまったが、そんな事を言ってる暇はない。
慌てて逃げていったクラーマーはすぐに戻ってくるはずだ。
「オ、オロロック。みんなを掴んで外まで飛んでいく事は~~……」
ラーダの通訳で、さすがに人が多すぎて無理との事。これは困った。
「ああ~……じゃあ、こうしよう。一旦僕の家に!」
こうして全員で、ゲオルクのアパートに行く事になった。
今回もここまで読んで頂き、本当にありがとうございます!
まだまだ続きますので、宜しかったら次回も引き続きよろしくお願いいたしますっっ。
今回も本当に、ありがとうございました!!




